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あたしに呪いをかけたのは、『北雲の大魔術師』チュラッタだ。
この呪いは、テュポーンを倒さないと絶対に解除できない。
『北雲の大魔術師』チュラッタが、あたしにかけた呪いはただ一つ。
テュポーンから一定距離離れると、首輪が締まって死ぬ呪い。
一定距離離れると、首輪があたしの首を締め上げて殺すカラクリだ
この首輪は、どんなことがあっても壊すことが出来ない。
いろいろ試したけど、破壊出来ない魔法のかかった金属の首輪。
だからこそ、あたしはテュポーンの距離感が分かっていた。
「呪いがかかっているって、あんたの呪いで?」
「死ぬのは、あたしだけ。あなたに、一切被害は出ないから安心して」
「そういう問題ではない。あなたには、大義はないの?」
「大義があるなら、それは生き残ること」
あたしの言葉を聞いて、レッカがそのまま離れているあたしに迫ってきた。
凄い剣幕で、あたしに怒鳴りつけたレッカ。
熱くなるレッカでも、あたしは冷静だ。
飛んできたレッカが、あたしの着ている白いドレスの襟元を掴む。
「ふざけないでよ!
そんなヤツが、なんで災いの風獣と戦うのよ?」
「あなたの大義は何?」
「無論、世界を救うため。帝国ウィンダリアの平和を、守る為」
正義感の熱いレッカは、あたしに迫っていく。
でも、熱ならばあたしも負けない。
「死なないで、生き残ることの何が悪い?
あたしは、必死に生き残るために努力してきた。
勝手に野垂れ死ぬことを、あたしは許されない。
だから、あたしの大義は『生きる事』よ」
「バカじゃないの、そんなの誰だって当たり前でしょ!
あなたには、戦士としての資格はないわ!」
「まあまあ、落ち着いて」
パノムが、暴言を吐くレッカをたしなめた。
不服そうなレッカが、肩を怒らせて席に戻っていく。
「レステ……大丈夫か?」
隣にいたガルアが、心配そうな顔であたしに聞いてきた。
あたしもドレスの襟を直して、不満そうな顔でそのまま背中を向けた。
「あたしは、戦士じゃない!」
最後は吐き捨てるように言い放って、そのまま部屋を出て行った。




