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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
三話:bancs de vase
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ルビニオン城の壁は、ほとんどがレンガだ。

鉄や雲壁の建物が多いルビニオンの都市、そこの中で一際目立つ赤いレンガの建物。

中央にあったその場所は、会議室だ。


大きな机で、上座にはレッカとパノムが座っていた。

二人はこの騎士団の騎士団長で、一番地位が高い。

見た目は若いけど、かなり偉いようだ。


この部屋には、レッカが招いたあたしとガルア。

それから、綺麗になったエッグゴーレムのアイ。

帝国側としてパノムと、数人の白い翼の兵士の重鎮が既に座っていた。


「さて、このたびは風泣きの塔におけるスライム討伐に、彼らも協力することになったのだけど」

「スライムは……風壺から未だに湧き続けている。

風壺自体を、壊すことは出来ないのか?」

若手の兵士が手を上げて、レッカに進言。


「無理だよ。

『風泣きの塔』は、神聖な四大巨塔の一つ。

異界のテクノロジーの前に、我らハルピュイアは無力だ。

空を飛ぶ翼さえ使えない。不思議な力が働く場所だ」

言い返したのは、パノムだ。

あたしの隣でガルアが、小声であたしに言ってきた。


「異界のテクノロジーとは、また厄介な。

レステ……本当に、四大巨塔内部は空が飛べないのか」

「翼は動かない、だから飛べない。

少なくとも『風歓喜の塔』と同じだろう」

あたしは北雲の風歓喜の塔に、行った事があった。

普通のハルピュイアでは、立ち入ることも出来ない。


だけどチュラッタ達が管理していたこともあり、あたしは入ることが出来た。

なによりも、テュポーンは『風歓喜の塔』にある風壺から出てきたのだから。


「だから最上階から突入し、一階まで階段を下ることになる。

また、一部魔法を使うことも出来なくなる。

その当たりの注意事項は、レッカはしっかり周知させたのだが」

「申し訳ありません、レッカ様」

「いいよ、『風泣きの塔』はまだ不思議も多い。

四台巨塔も、異界のテクノロジーも、解明されていないことがたくさんあるのだから」

レッカの叱咤と、パノムのフォローが、絶妙に若い兵士に声をかけられた。


「現在、風泣きの塔の中にも常駐で兵士を送っている。

風壺から出て行くスライムと、先発隊が分断された報告がある。

敵のスライムの増殖スピードが早く、苦戦していると報告を受けている」

「ならば、すぐに軍を……」

「慌てるな。スライムは、並の武器は通用しない。

今レッカ達が成すべき事は、風泣きの塔からスライムを外に出さないこと」

「スライムは僕たちの軍の頑張りもあって、最上階にまだスライムが溢れ出てこない。

スライムを風泣きの塔から出さないことこそ、この作戦で一番重要なことだよ」

「それでも、倒さないと終わらないでしょ」

レッカが息巻いていても、パノムは落ち着いていた。


「まあ、それで俺とレステも参加……ああ、アイもいたけどな」

「あなた、なれなれしいけど」

隣のあたしに、勝手に肩を組んできたガルア。

そんな会議の中でも、白い翼の兵士達はあたしを差別的な目で見てきた。


「まあ、今回は騎士団との共同戦線になるけど……あんた」

レッカが、あたしの事を指さした。


「何?」

「その首輪、何なの?」

「これは、あたしにかけられた呪いの証」

「呪いって……」

「あたしはテュポーンを倒すために、呪いがかけられているの」

あたしの言葉に、明らかに不満そうな顔を見せたレッカ。

顔を真っ赤にして、両手を突いていた。


「ふざけるんじゃ無いわよ!」そして、怒鳴っていた。



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