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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
三話:bancs de vase
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ルビニオンは、南雲の中でも一番の都市だ。

あたしが旅だった北雲……イルファーから最南端雲の南雲に、しはとうとう辿り着いた。

旅立ってから、丁度一年が過ぎただろうか。

天空界を飛び回り、世界の各地の厄災を倒していく。


ようやくあたしは、ルビニオンの都市に辿り着いた。

雲壁と鉄の建造物が、いくつも見えたルビニオンの都市。

かなり発展したこの都市の中に、一際高い赤いレンガの建物が見えた。


そこが、赤翼族の建物。

ルビニオンの城、通称『赤城』と呼ばれていた。


赤城の中を、あたしは飛んでいた。

先頭を進むのは、空域で出てきた二人の男女ハルピュイア。


いずれも白い翼で、女は紫髪のショートボブ。

幼さも見えるが、キリッとした目が特徴。

水色のコートを着ていて、帝国軍の紋章も見えた。


「なるほどね、『ジャック・ノトス』様からの紹介ね」

「そそ」ガルアが、明るく返事をしていた。

上半身裸で、下にはズボンをはいた白い翼のガルア。


ガルアが、女にデレデレと話をしているのを見ると少しムッとしてしまうなぜかあたし。

遠目であたしが見ている中、すぐそばに一人のハルピュイアが飛んでいた。


「ああ、ごめん」

男の方も、髪は紫色のショートヘア。

カールがかかった髪で、おっとりした目の男性。

雰囲気的には、少し気弱にも見えた。

赤いコートを着ていて、やはり胸には帝国軍の紋章が見えた。


「二人は、帝国騎士団なのだろう」

「それは社会的地位で、あなたたちと同じ……風狩人であるのは変わりないわ。

レッカとパノムは、どちらかというと風狩人の仕事もこなすわよ」

「そうか、じゃあ俺たちとは……」

「まあ、あいつ次第よね」

レッカがチラリと見てきたのは、あたしだ。

四人とあたしの後ろを飛ぶアイが、廊下を一緒に飛んでいた。

あたしだけが黄色い翼で、他の三人は白翼。


ここは帝国軍の支城ということもあり、周りにいる兵士もみんなが白翼だ。

このルビニオンには、主に赤翼が多い。


遺伝だろうか、赤翼は珍しくない。

少数派でもないので、差別の対象ではない。

帝都のあたりに行くと、田舎者扱いはされるのだが。


だけど、あたしのような黄色い翼のハルピュイアは誰もいない。

赤翼でも当然のように、軽蔑の目であたしは見られていた。

それでも、あたしは慣れた様子で前を進んでいく。


「それに帝国軍としても、ルビニオンに起こっていた災いがあるから」

「災い?テュポーンが、既にここに迫っているのか?」

「まだ来ていない」

あたしは、首輪の呪いでテュポーンの距離が分かった。

ガルアも、持っていた宝具の懐中羅針盤(ラプソル)で確認した。

羅針盤を見ていたガルアは、すぐに羅針盤をしまう。


「その災いって、一体何だ?」

「『風泣きの塔』で、大量にスライムが溢れたの」

「スライム?」

「とても、気味の悪い液体の風獣よ。

触れただけで相手を解かすことができるし、液体を飛ばしてと……とにかく気味悪いヤツ」

レッカが、思い出しただけで青ざめた顔を見せていた。


「ねえ、あなたたちは協力してくれないの?」

「俺は……」

「協力するわ。風泣きの塔に、テュポーンは最後に現れる」

そう、そこが文字通りの最終決戦の場所だ。

災いをまき散らして、世界を混乱させたテュポーンは必ず風泣きの塔の風壺に必ず辿り着く。

そこに行くためには、スライムだろうが何だろうが倒す必要があった。


「アンタには、聞いていない」レッカが、あたしを睨む。

「聞いていなくても、あたしは戦う」

「あっそ!ガルアは、どうするの?」

「無論戦う」ガルアは、あたしと同じ意見だ。

だが、レッカはあたしを睨んで舌打ちをしていた。


そんな険悪な雰囲気の中、廊下を進んでいく。

間もなくしてあたし達は、レッカ達に先導されて一つの部屋に辿り着いていた。



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