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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
二話:vrai petit tersor secrete
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027

翌日、ゾンタの町の大きな工房。

約束の二日目、エインガナを倒した次の日にこの場所に来ていた。

『ノトス』というゴーレム工房、それはガルアの父が運営する工房。

あたしは、魔力調律室に来ていた。


「やっときたか」声をかけたのは、台の近くにいた男。

上半身裸のまま、相変わらずこの場所で立っていた。

台の上で寝かされたアイが、上半身を起こしていた。


「親父……いや師匠。アイの調律は?」

「ああ、大体終わったぞ」

息子ガルアに、ジャックが進捗状況を話す。

魔法の流れや、金属の話を父親と話し合うガルア。


あたしは、全然親子の話についていけない。

ゴーレムの専門用語が飛び交う、二人の会話。

本当に、ガルアは機工師なのだと思えてしまう。


「つまりは、ここの動力源から核にジョイントするのか。

ここで、第三動力が動いて……」

「そこは足を動かす回路じゃないか?ショートで回路の二重分岐で……」

「えー、あの……」あたしが申し訳なさそうに、話に割り込んだ。


「ああ、ごめんごめん。話し込んだ。

それで君のゴーレムだけど、無事に魔力の調律は完成した。

以前よりも、動きは良くなったし、耐久度も向上した」

「ありがとうございます」

「それにしても、チュラッタの魔術は凄いな。

彼女はいくつもの恐ろしいモノを、このゴーレムにいくつも残してある」

「残す?」

「まあ、彼女はそれだけ凄い魔術師だということ。

いずれアイと旅をしていれば、君は分かるだろう。

君の役目が、テュポーンを倒すと言うことなら役に立つかもしれないし」

「そうですか……」

「まあ、正確にはちゃんと確認できない複雑なモノだったけど。C回路の……」

ジャックの言葉に、あたしはやはり理解が出来ない。


エッグゴーレムのアイをバラそうも考えたことないし、内部の事も詳しくない。

それでも、あたしの相棒であるアイが無事ならそれでいい。

台の上のアイは、ゆっくりと動き出した。


「つまりは、アイが硬くなったということです。

パワーアップしたのですよ、レステさん」

アイが、あたしにはっきりと言い放った。

上半身を起こしたアイが、綺麗な姿勢で台から立ち上がった。


「お帰り、アイ」

「ただいま……レステさん」

アイのことを、あたしは素直に抱きしめた。

金属の体のアイの体は、とても冷たい。

でも、どこか温かくて心地が良かった。


「再会をしている二人に、悪いのだけど……」声をかけたのはジャック。

「ありがとうございます。これはせめて……」

あたしは早速、持っていた路銀袋を渡した。

入っているのは全財産。


それでもこれだけの設備に、アイという特別なゴーレムの魔力調律。

ゴーレムの修繕と調律の相場は分からないけど、あたしの全財産では足りないことぐらい理解していた。

それでも、ジャックはあたしの路銀袋を右手で返した。


「いいや、ガルアの仲間だ。

お代は、ガルアからもらっておくから心配いらぬぞ」

「そんな、親父っ!」

「ここでは師匠だ。それに……お金の代わりに頼まれて欲しいことがある」

ガルアの父、ジャックはそういいながら代わりにあたしに手紙を渡してきた。

ジャックは、悪戯っぽく笑っていた。


「これは?」

「君らは、テュポーンを追いかけている。

つまりはいずれ南雲……ルビニオンに行くはずだ」

「確かにそうです」

テュポーンの最初と最後を、あたしは知っていた。

風歓喜の塔から、風泣きの塔。これがテュポーンの行動ルートだ。

風泣きの塔は、ルビニオンの近く……最南端に立つ四大巨塔の一つ。


「ルビニオンにも、優秀な風狩人がいるのは知っているか?」

それは、意外なジャックの一言だった。



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