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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
二話:vrai petit tersor secrete
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025

エインガナの死のガスは、強力な威力。

少し吸っただけで、苦しみが全身に溢れていた。

呼吸が出来ない、苦しい。肺呼吸のハルピュイアも、呼吸が出来なくなれば死ぬ。


急いで灰色の煙から、離脱を試みた。

翼が鈍いけど、それでも賢明に黄翼を動かした。


(あたしは、こんなところで絶対に死ねない!死なない!)

強い意志が、あたしの翼を無理矢理動かしていた。

煙から何とか脱出したあたしは、青白い顔に変わっていた。


明らかに、さっきまでの元気はない。

苦しいし、息も出来ない。それでも、煙を抜けて前だけ見ていた。


(やはり一筋縄ではいかない、エインガナは。

コイツとは、長時間は戦っていけない)

ダメージを負ったあたしの手が、痙攣の影響で震えていた。

弓の狙いが定まらないけど、それでもあたしは手が震える中でも矢を選ぶ。

エインガナはそんなあたしを見て、再び突進してきた。


(とにかく早く、絶対に倒す!)

強く睨んだ目で、意識だけを強く持っていた。

恐怖も、いつの間にか克服してあたしは弓を構えた。


(この矢を、ブチ当てて……沈める)

突進するエインガナに、あたしは翼で体を旋回させた。

そのまま、エインガナの横に飛びこんで同時に矢を放った。

放たれた矢は黒い胴体……ではなく上に生えたコウモリのような翼に命中した。


命中した赤い矢が、エインガナの翼を燃やしていた。

鱗の硬さを感じて、攻撃対象を変更した。

赤い炎が、翼を焼いていく。


右翼を焼かれたエインガナは、そのままバランスを崩して斜めに下がっていく。

呼吸を乱しながらも、あたしはすぐに闇のランタンを取り出した。


(一気に仕留める、ここでは……失敗は出来ない)

腕はまだ震えていた。

呼吸はしづらく、苦しい。

心臓の鼓動も、だんだんと激しくなった。


それでも、あたしはこの世界で生き残ると誓った。

全てを捨てた、あの日から。


「封じよ、黒い矢よ!」

黒い矢を闇のランタンであぶり、黒くなった矢を装填した。


そして、弓を大きく引いてエインガナに狙いを定めた。

動き回るエインガナは、あたしの方に再び向かっていく。

黒い矢を放つ先は、エインガナの頭だ。


頭に黒い矢が命中して、同時にエインガナの突進に対して翼を引っ張るように回避。

しかし、敵をギリギリまで引きつけたので回避は失敗。

巨大な体に思い切り弾かれて、あたしの体がグルグルと回って落ちていく。


それでも回りながらあたしは、エインガナを見て確信した。

エインガナの体を黒い渦が包み込んで、エインガナの動きを封じていたことを。



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