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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
二話:vrai petit tersor secrete
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024

あたしが一人で戦うのは、実に久しぶりだ。

約一年前のあの戦いだ。

あの戦い以来、アイもいない。ガルアも、エインガナの針を受けてリタイアした。

助けてあげたいが、ここはエインガナを追いかける選択をした。


(所詮あたしは、一人だ。

黄翼のあたしは、一人で戦っているのが似合っている)

心の中で割り切った、あたしの真実。

それでも、心のどこかで寂しさを感じた。

アイもいないし、あたしにとって気になるガルアもいない。

今まで一緒に戦った仲間がいないことが、これほど心細いとは忘れていたことだ。


(ちょっと怖がっている?そんなはずはない)

あたしは、前で動きの止まったエインガナから目を離さない。

エインガナは、それでもずっと背中を向けて逃げていく。


(今は、ヤツを倒すことだけを考える)

弓を持ちながらも、次の選ぶ矢を頭の中で考えていた。

『ヴァンフレッシュ』では、エインガナの鱗を傷つけただけ。

致命的なダメージはそれほどないと、あたしは感じていた。


追いかけるあたし、逃げるエインガナの構図が五分ほど続いた。

雨はしとしとと降ったままで、エインガナを追いかけた。


逃げた黒い蛇は、突然反転していた。

同時に、あたしにめがけてブレスを吐いてきた。


「動いた!」

エインガナのブレスは突然だ。

灰色のブレスに、あたしは急降下で回避に専念した。


だが、あたしの反応は明らかに遅れていた。

煙のようなブレスが、一気に拡散して……あたしの体を包み込む。


包まれたあたしの体は、灰色の煙の中。

煙っぽいブレスを、少し吸い込んだだけであたしは咳き込んだ。


「ゴホッゴホッ。これは……『死のガス』」

ガルアに受けた説明を、あたしはここで思い出した。

エインガナが、『死の竜』である所以を。


だが、それは手遅れだった。

既に『死のガス』を吸い込んだあたしの体が痙攣(けいれん)を起こしていた。

翼の動きが鈍くなって、あたしは意識が遠のいていった。



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