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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
一話:aile de couleur
15/56

015

男のハルピュイアは、手に指の開いた橙色のグローブをしていた。

上半身裸だけど、筋肉質の肉体が見えた。

鍛え上げられた筋肉は、どこか美しい。

彼の名は、ガルア。あたしと同じ風狩人。

紫色のショートカットの若い男の青年は、腕を組んで上空から現れた。


「遅い」ガルアに対し、冷たく言い放つあたし。

ガルアは、あたしと同じ高さに降りてきた。

翼は白いガルアは、ツインヘッドを見ていた。


「大丈夫か?嫁」

「平気」

「そんな嘘を言うなよ、ボロボロだぞ。そのドレス」

あたしの着ている白いドレスは、ガルアの指摘通りに汚れていた。

あたし自身も、呼吸が乱れて肩で息をしていた。

翼の動きも、冷気の影響でかなり重く鈍っていた。

どこからどう見ても、満身創痍だ。


「アイは?」

「ツインヘッドの、電撃のブレスを喰らってダウンした」

「そうか、それは大変だったな」

言葉を短く交わして、ガルアが前を向いた。


「じゃあ、とっととコイツを倒してアイを助けないとな」

「それは同感」

ガルアが右腕を回して、すぐさま飛びかかった。

向かってくるガルアに、ツインヘッドはブレスを準備。


ガルアの動きに反応し、赤い頭が炎のブレスを放ってきた。

拡散された炎に対し、あたしはガルアの後ろから弓を構えて矢を放つ。

放った矢は、氷の矢。氷が炎のブレスに命中し……炎のブレスを相殺した。


「よし、流石は嫁」

だけど、すぐさま左の頭が反応。

青い頭が、ガルアに冷気のブレスを吐いてきた。


それを見たガルアが、ツインヘッドから少し離れたところで右拳を突き出す。

突き出された瞬間、ガルアの右腕から小さな竜巻が現れた。


さっきツインヘッドを吹き飛ばした竜巻が、再びツインヘッドに向かって飛んでいく。

素早い竜巻が、すぐさま青い頭に命中した。

竜巻に顔を防がれたツインヘッドは、風を振り払おうと必死に動く。


だけど、攻撃を繰り出したガルアはすぐさまツインヘッドの真正面に距離を詰めた。

そのまま、左フックでツインヘッドを攻撃。

間髪入れずに、右足で蹴り上げて右ストレートでガルアの赤い頭を殴りつけた。

ツインヘッドはバランスを崩して、ノックバックで後ろに下がった。


「まだ、削るか?」

「そうね、これぐらいなら」

あたしは、迷うこと無く次の矢を選んだ。

選んだ普通の矢を、腰につけていた闇のランタンの炎に近づけた。

黒く変化した矢を、あたしは装填した。


あたしの視線には、ガルアの背中と奥にはツインヘッド。

真っ直ぐにツインヘッドの赤い頭を視界に捕らえて、あたしは矢を放った。

放たれた黒い矢が、ガルアの肩越しを素早く飛んでいく。


そして、矢が赤い頭に命中した。

命中した瞬間に、ツインヘッドの赤い頭から黒い輪が見えていた。


一つの黒い輪が幾重にも分裂し、やがて無数の黒い輪が発生。

ツインヘッドの全身を、多数の黒い輪が包み込んでいく。

苦しむツインヘッドを、目の前にいたガルアも構えを解いてじっと見ていた。


「相変わらず強いな、封魔の矢(ペボンフレッシュ)は」

「あなたが、ちゃんと体力を削ったからだよ」

「おお、それじゃあ。これは、夫婦の共同生活と言うことで……」

「却下」あたしは、調子に乗るガルアの言葉を否定した。


それでも、封魔の矢が起こす黒い渦は災いの風獣(ツインヘッド)を封じていく。

数秒後には、ヒポクリフ同様にツインヘッドも消えて消滅した。


「とりあえず、これで終わったし……おっ、いたいた」

ガルアはすぐさま、雲の上に倒れていたアイを見つけた。

あたしも一緒に、ガルアとアイに近づく。

黒焦げのボディだけど、あたしが近づくと上半身を起こしていた。


「大丈夫ですか、レステさん」

アイはなぜかあたしを心配する機械声で、あたしを出迎えてきた。

それを聞いた瞬間、あたしは今にも泣き出しそうな顔になっていた。


「おいおい、泣くのはまだ早いぞ。見ろ!」

ガルアが言うと、周りにはハルピュイアの兵士が囲んでいた。全員翼が白い。

それはあたし達に対して恐怖と、感謝と、警戒の視線を投げかけていた。


「レステ、ここは一旦離れるぞ。

積もる話は、この空を出てからだ」

ガルアは、ただならぬ兵士の動きを感じてアイに肩を貸して飛び上がった。

あたしもアイの体を支えるように、上空へと上がっていった。


そう、ここはオウラリの治める都市『エルコンドニア』。

あたしは、黄翼のハルピュイアなのだから。



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