第四話 マニラ海戦
5月25日午後8時 輸送船団は静かに海を通っていく。
おそらく、あと5時間後にはマニラへと到着するだろう。
しかし、マニラはアメリカ軍にすでに占拠されている。
しかし、アメリカ軍は沖縄に主力を集結させており、
護衛艦隊であれば撃破可能と大本営はみていた。
25日午後11時29分頃 各艦艇の見張り台から、マニラの様子が見えていた。
港には、旧戦艦2隻、護衛空母7隻、軽巡2隻、駆逐艦8隻、潜水艦4隻が停泊していた。
こちらの戦力は軽空母3隻、重巡洋艦1隻、軽巡1隻、駆逐艦(対空駆逐艦)3隻が、
輸送船団攻撃部隊の戦力であった。
26日午前0時13分ごろ。港の一隻の戦艦の甲板に、すわって海を眺める水兵がいた。
「ん?」
男は、探照灯も照らさず、黒い影のように、船が向かってきていることに気付いた。
「ありゃなんだ?」
首をかしげて隣で眠っていた男を揺さぶって起こそうとしたとき、
空襲警報がなったことに気付いた。
男はばっと顔をあげた。
各艦艇から探照灯が上に向けられはじめ、男が何機かの機影をみたとき、
それらは一斉に急降下をしてきた。
そして男のいた戦艦や隣に停泊していた戦艦に爆弾を叩きつけていく。
一方、どこから忍び寄ったのか、海面付近でなにかを投下して、
緑の塗装をした、2つの大きなフロートを持った水上機が、
男のすぐ近くを走り去っていった。
投下されたものは、海面付近まで上昇して、
白い波をたてながらこちらにまっすぐ向かってくる。
「魚雷だ!!」
その魚雷はこの戦艦に体当たりして、大きな灰色の水柱を立てて、
戦艦の喫水線下に大穴を開け、男は水で濡れまくる。
戦艦の真上から、瑞雲が250kg爆弾を戦艦の甲板に叩きつけた。
男はなにが起きたのかほとんど理解できず、
近くに命中した爆弾の破片を全身にあびて倒れた。
男のいた戦艦がゆっくりと傾き、180度ひっくり返って沈んでいく。
護衛空母は次々と爆弾を喰らっていった。
利根は、近くに着水した魚雷を搭載可能なタイプの零式水上偵察機と
急降下爆撃のできる複座水上偵察爆撃機瑞雲を収容して、
弾薬や爆弾などを補給してはまた空に打ち上げていた。
零戦は30機でf4fたちとと戦っており、
アメリカ軍戦闘機を水上機たちに向かわせないようにしていた。
そして、5回ほどそれを繰り返したあと、
空母以下の輸送部隊を除く全軍に、突撃命令を大淀はだした。
あれ、空襲はしないはずだったのに。。。