表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本軍最後の抵抗  作者: 宵月 星華
第二章 帝国の終焉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/23

第二十一話 最後の局地戦闘機

※過去最強クラスに重くなっております

あと4ヶ月更新忘れててすいませんでした…重くなりすぎて全然進まなかったんです…

8月3日 午後3時30分

テニアン島 米軍飛行場

リトルボーイがピットに運ばれ、そこに待機していたエノラ・ゲイの爆弾倉に大事そうに抱えられた。

エノラ・ゲイは垂直尾翼のマークを「R」に書き換え、給油と点検作業が行われている。

1日に突然敵陸攻が空襲を行ったのには肝を冷やしたが、ブルドーザーがあっという間に整地を行い、

帰ってくるB29を着陸させていたし、防空壕に逃れたお陰でパイロット達の大半も無事である。

ブリーフィングで目的地が伝えられた。「ヒロシマ」だ。

大日本帝国は今や急速に息を引き取ろうとしている。

ソ連も対日参戦の準備を完了させようとしている。

本土決戦を行えば連合軍の甚大な被害が出ることは推測されていたが、それを行わずとも、

「コレ」を投下すれば日本は速やかに降伏するだろう。加えてソ連の力も牽制することが出来る。

日本が降伏した後、誰が世界のリーダーとなる?それは他ならぬ自由の国アメリカでなくてはならない。

夕日に太陽が沈む中、離陸の時間は一刻、また一刻と迫っていた。


8月4日 午前2時45分

ライトが滑走路に沿って延々と続いていく中、エノラ・ゲイはエンジンを滑走路上でゆっくりと回し始めた。

排気タービンのついたその太いエンジンが黒煙を力強く吐き出し、

すさまじい熱気を伴って機体を動かし始める。

歴史に名を残すその機体は銀の翼をオレンジ色に輝かせながら、ゆっくりと日本へと飛んで行った。


呉 

多数の艦艇が傾き、甲板近くまで沈みながら砲をあちこちの方向に指向しながら停止させている中、

駆逐艦宵月は擬装を着け、単装機銃を丘に陸揚げして本土決戦に備えていた。

しかしその長10cm高角砲8門は健在である。春月も呉に回航して来ている。

多数の前に無勢であろうが一矢報いて見せよう。西の水平線上から太陽がゆっくりと顔を出し、

最上型軽巡から降ろされ、今は冠崎に高射砲として配備された15.5cm3連装砲の砲口が照らされた。


松山 海軍機飛行場

滑走路に2機の双発局地戦闘機がゆっくりと現れた。

片方は月光。斜銃を装備し、夜間にBー29に対進戦を仕掛けることで

一定の戦果を伸ばしたベテラン機であると同時に、その前身は格闘戦もある程度考慮された

長距離護衛戦闘機でもある。そして片方の機体は海軍の試作戦闘機である「電光」であった。

電光は銀河以上の大きさを誇る夜間戦闘機で、機首には普通の双発戦闘機よろしく

30mm機関砲や20mm機関砲を装備、そしてなんと胴体上部には遠隔操作式の20mm連装機関砲を

装備するという奇想天外な重武装、速度は590km以上というまさしく「最強の重戦闘機」

と呼んでも違和感のない機体であった。史実とは異なり、呉軍港空襲で破壊を免れたことが、

この機を使う機会を与えたのである。に号作戦の成果が微々たるものであったとしても、

米軍に一矢報いるだけの力は日本に残されていた。それが証明できただけでも、

この作戦には大きな意味があったのである。陸軍の二式戦闘機「屠龍」もすでに離陸している。

単機で飛んできているBー29が、「アレ」を積んでいることはすでに解読済である。

電光のプロペラが強く周りだし、先行した月光に追いつかんがごとく滑走路を走り出した。


6時23分

エノラ・ゲイは四国上空を悠々と飛びながら、搭乗員達が交代で休憩をとっていた。

日本のに号作戦の前後からBー29の被害は突然急増し、少なくないBー29の搭乗員が

口を揃えて見たことのない新型機にやられたと、翼や胴体にやられた大きな弾痕を見せながら言うのである。

曰く、プロペラが後ろについており、固くブローニングではいくら当ててもなかなか落ちなかった。

また別の者曰く、マスタングの急降下による離脱にも食いついていけるほどの速さを持ちながら、

30mmクラスの大口径機関砲を多数持つ双発戦闘機だと。

または、まるで独国のMe262のようなジェット機であったと。

誰の目から見ても日本が変わろうとしてきているのは明らかだった。

パイロット達は雲の上を飛びながら、辺りを賢明に見渡している。

どの報告でも、新型機はどれも雲の中から奇襲をかけてきているというのがあった。

機体温存のためでもあろうが、雲のはるか上を飛ぶ敵には奇襲をあまりかけていない。

雲の上は視界が開けるため、爆撃機からすれば奇襲の心配は少ない。

しかし投下する前は高度を下げなければならない。搭乗員達は緊張しながら、目を凝らしていた。



月光と電光は地上からの報告により、Bー29が雲のはるか上を飛んでいるのを知っていた。

おそらく新型機の多くが雲の中から奇襲をかけているのでその対策だと思われる。

屠龍が既に敵機を発見し、対進戦に移ったのがパイロットから見えた。

月光や電光はキ83と違い足が遅いためBー29相手に機動戦はできない。

そのためチャンスが一回の、すれ違いざまに斜銃を撃ちまくる対進戦が必須となる。

敵機に向かって屠龍の20mm機関砲が火を吹いた。

Bー29はブローニングm2の応射でこれに対抗。

屠龍は被弾しエンジンから黒煙を吐き出しながらよろよろと雲の下へと消えていった。

まだ月光と電光は気づかれていない。先行した月光が高度を上げていく。

電光もこれに続く。電光の方が足が速いが信頼性は試作2号機そのものであるために乏しいため、

信頼性の高い月光による迎撃が失敗した時に電光が迎撃するという

二段階構えで迎撃しようというのである。歴史を変えるのはエノラ・ゲイか、

に号作戦か。その時はキリキリと絞られる弓のように迫っていく。


エノラ・ゲイは既に月光を発見し、高度を少しずつ上げていた。

旋回機銃が前方の双発戦闘機へと狙いを定めた。

有効射程へとゆっくりとIrvingが迫っていく。射撃手の喉がゴクリとなった。

有効射程まであと3、2、1、…


「Open fire」

それはほとんど同時だった。月光が斜銃である20mm機銃の引き金を引くのと、

エノラ・ゲイが12.7mm機銃の火を吹くのは。瞬く間にIrvingのエンジンが燃え上がると同時に、

エノラ・ゲイのエンジン1機が黒煙を吹き始めた。両者はなおも撃ち続ける。

Irvingの高度が目に見えて下がり始める。こちらはエンジン一機が故障したが

航行にはあまり問題はない。射撃手がホッとした時、パイロットからの叫び声にハッとした。

「enemyを前方に発見!新型機!」

慌てて旋回機銃が回り始めた時には既にそれは射撃位置についていた。

斜銃が放たれ始め、エンジンが次々と燃え上がった。こちらも応射するも、

次々と命中弾があちこちを貫いていく。いくらBー29でも20mm弾に数十発も

耐えられるような構造ではないのだ。新型機は翼を真っ二つにへし折られながら墜落していった。

航法士が悲鳴をあげる。

「燃料タンクと2、3番エンジンが機能停止!ヒロシマまでは持つが硫黄島までは持たない!」



駆逐艦宵月

高空でBー29が味方機と交戦しているのが艦長の目に見えた。

偽装を施しているため発砲は基本的に控えることを命令されていたが、

あの機は偵察機ではなく「あの爆弾」を積んだ機であることは報告済みである。

司令部からもその場合は発砲を許可されている。花月と同時に10cm高角砲を高く振り上げ、

宵月は発砲を開始した。


エノラ・ゲイは次々と花開く対空砲火に囲まれていた。エンジンを被弾しているが

懸命に高度を上げていく。彼らは日本を確かに舐めていたかもしれない。

ゼロはもうコルセアやグラマン、マスタングに駆逐される存在であり、

ヤマトは既に多数の攻撃機による波状攻撃で撃沈されていた。

輸送船団は潜水艦部隊によって徹底的に駆逐され、逆に伊号潜水艦は

ヘッジホッグや優れたソナーによって捕捉され、次々と海底へ沈んでいった。

しかしに号作戦から日本はまるで最後の闘志を燃え上がらせるかのように牙を向いた。

それは完部隊によって味わされた屈辱とは違った。エノラ・ゲイは灰色の弾幕を懸命に避け続けながら、

呉を抜けてヒロシマへと向かっていった。


エンジンはほとんどが破損または低出力しか出せなくなり、燃料タンクにも被弾している。

しかしあの爆弾は無事であり、ヒロシマまではあと少しである。彼らは既に片道の旅となった。

着水してもそこは日本の沿岸であり、カタリナに救助してもらうのは困難であろう。

彼らは爆弾倉をゆっくりと開いた。試作機と想定外の対空砲火を受けながらも乗り越え、

爆撃手は爆撃位置、すなわち広島県物産陳列館へと標準を合わせた。


架空戦記とは、言い換えて仕舞えば作者の妄想の産物以外の何物でもなく、

それ故に現実とはかけ離れたことが描かれやすい。特に原爆に関して言えば迎撃するか、

事前阻止に成功するものがほとんどであろう。私だって立派な反戦論者であり、

原爆に関してはあってはならなかった、落としてはならなかったと理解している。

しかし、それでも尚、リアルを追求するために惨劇を描こうとしているのである。

これより先、私は何度この話を書いた事を後悔するだろう?

何度連山や電光、宵月まで投入しておいて撃ち落とせばよかったと後悔するだろう?

いや、私はこの悲壮感極まりない架空戦記を書くことを決めたのである。

原爆だって最初から想定して書いていた。

事実、このあと長崎でもファットマンを巡る話も書こうとしているのである。

この悲壮感しかない話を誰が好む?誰が好き好んで読もうか?

こんな物好きでしかない話も、終焉が迫っていたのである。


それは投下された。それは広島県物産陳列館の真上で炸裂した。

その光は呉にまで届き、榛名、伊勢、日向、宵月の艦上で将兵たちは驚嘆と絶望の眼差しで見ていた。

「Seventy-one years ago, on a bright cloudless morning, death fell from the sky and the world was changed. 」

アメリカの元大統領バラク・オバマが広島に来日した際のスピーチの序文である。

に号作戦でさえも止められなかった。どうしたらよかった?何をすべきだったのだろうか?

現代は当時に比べ多くの事が分かっている。しかし大事なことは、

当時の感覚と現代の感覚が異なるということである。

現代人の私達があーだこーだ言ったところで死んでいった多くの軍人や民間人の何の役に立つというのであろう?「対空砲や機銃をもっと強力な物を用意すべきだった?」各艦は最善を尽くした。

大和の最終時の対空砲や機銃の集中配備や秋月型防空艦、主砲や魚雷を撤去してまで機銃や対空砲を装備した。

しかし限界があった。結局のところ、防空には戦闘機が最も適任だったのである。

「歴史にもしはあり得ない」

架空戦記作家としては考えてはいけないワードである。しかしあえて私は使う。

「たらればが現実にあったところで、日本はおそらく連合国に負けるだろう」

悲壮感しかない架空戦記とはこのような作品を言うのかもしれないし、

違うのかもしれない。私は「不謹慎」の塊なのかもしれない。

それでも私は書き続けるつもりだ。きっとそれが、私の想いである、

「活躍できなかった艦艇、機体などを全部活躍させてあげる」につながると信じて。


エノラ・ゲイは徳島沖に着水した。広島では残酷な血の雨が降り、きのこ雲が昇って行った。

しかしまだ戦争は終わっていない。

翌日にはとうとう「あの国」が対日参戦しようとしている。

また「ファットマン」も準備が進んでいった。



日本海軍航空基地

掩蔽壕で一つの機体を整備兵が懸命に整備している。

その機体は、プロペラもついていなければ、ジェットエンジンも着いていなかった。

しかしその時になれば、コレはBー29を次々と撃ち落とせるだけの力がある。

整備兵は呟いた。


「コレが、に号作戦のために投入される最後の戦闘機、秋水か」



重すぎて死にそう…頑張れ私…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ