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日本軍最後の抵抗  作者: 宵月 星華
第一章  に号作戦

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22/22

第二十話 テニアン島を爆撃せよ

遅れてすいませんでしたっ!(お約束)

 原子力爆弾を輸送した重巡インディアナポリスは伊58の攻撃によって沈んだ。

しかし、テニアン島にすでにリトルボーイもファットマンも到着しており、

原子力爆弾を日本に投下する準備は着々と進んでいった。

日本軍はなんとしてでもこれを防がなくてはならない。

しかしもうテニアン島を爆撃できる航続距離は一式陸攻も銀河もないし、

護衛できる戦闘機もいなかった。しかし、届かない距離ではなかったのである。


8月2日

木更津飛行場


滑走路に悠然と現れたのは大型陸上攻撃機。

しかし、日本軍のこれまでのどの陸攻とも異なる特徴があった。

それは、発動機が4発、すなわち四発重爆であった。

アメリカのB-29には流石に性能は劣るが、従来の陸攻よりも大幅に向上した高高度性能、

グラマンを置いていけるほどの速度。そう、十八試陸上攻撃機、

通称連山が、テニアン島へ向け、発進しようとしていた。

キ83や震電を含む試作戦闘機達がに号作戦のために急遽

少数ながら量産された一方で、連山はその使い勝手の悪さから量産はされず、

増加試作機が何機か出来たばかりである。しかし役目を果たすためなら機数は関係ない。

連山はその大きな翼を激しく振るわせて、空へと舞っていった。


連山の航続距離ならテニアン島への攻撃は可能である。しかし、

戦闘機の護衛は片道、それも途中までしか出来ない。

キ83の増槽を含む航続距離であっても3200km程しかないのである。

つまり敵機が最も少ない早朝での奇襲を敢行しなければならない。

しかもマリアナ諸島に爆撃をしに行くのであれば明らかに障害となる存在がある。

そう、硫黄島である。硫黄島はマスタングの発進基地となり、

B-29を護衛して日本軍を苦しめていた。テニアン島への攻撃をするなら

避けては通れない。米軍からしたら格好の餌である。

通過のためには連山が通り抜けるための食い止めが必要である。

そのために全国の基地から一斉に硫黄島を爆撃する陸攻達と戦闘機達が、

連山が飛び立った後離陸し始めた。


7月31日18時34分 硫黄島 米陸軍航空基地

P51マスタングが整然と並び、沖合いではPBYカタリナ飛行艇が

海中に潜む見えない敵を見つけようと夕日に翼を輝かせながら悠々と飛んでいた。

そして、哨戒任務に着いていた駆逐艦の対空レ-ダ-がクルクルと回りながら敵機を映し出した。

マスタングが滑走路を次々と走り出し、対空砲に兵士達が飛びついて

高い空へと砲口を向けた。戦いの準備は揃ったようである。


高空を飛ぶ連山達の窓からそれは眺められた。零戦や隼、飛燕がマスタングと降下や上昇、

旋回を繰り返しながら互いの後ろを狙っているかと思えば、

彗星や天山、流星がマスタングを懸命に避けながら爆弾を投下しようとして

対空砲の前に四散し、また別の空域では銀河がエンジンから

黒煙を拭きながら爆弾をパラパラと投下していた。マスタングや対空砲は

陸攻達の必死の攻撃だけで手一杯であった。まれにP-39やマスタングが無理して

連山のいる高空まで上がってきたが、エスコートしているキ83と

防御弾幕によって返り討ちにされていた。次々と黒煙が噴き上がる硫黄島を後にして、

連山はキ83を連れてさらに南へと飛んで行った。


硫黄島を離れてほどなくした頃。

キ83が航続距離の限界につき、翼を振って反転していく。それはつまり、

連山達を守るものはすでにその防御火力と防弾装備、そしてそのスピードしか

無くなるということを示していた。護衛なき陸上攻撃機の脆さは戦前、

中国大陸上空ですでに証明されている。かつて戦闘機不要論を唱えた源田実も

今は日本最後のエリートパイロット集団を率いて懸命に抵抗し続けている。

しかし制空権なき今、そんな事は言っていられないのである。

護衛戦闘機という強い盾を失いながら彼らは爆音で白い筋を引きながら飛んでいった。


テニアン島を攻撃する絶好のタイミングとは、最も敵の反撃を受けにくい、

すなわち朝暮である。日が東、すなわち連山から見て左の方向から空が白み始めた頃、

1番機に搭乗している航法士の瞳に敵地が映った。


テニアン島

夜間哨戒戦闘機が次々と着陸し、パイロット達がずらりと並ぶ銀のB29に目を向けながら

コーヒーをすすり、息を漏らした時のことだった。

突然サイレンが鳴り響き、高空に黒い点が次々と現れた。

慌てて兵士達が高角砲へとすっ飛んでいく。パイロット達は夜に慣れた

目のために日光が眩しくてしょうがないし、迎撃に間に合う戦闘機は

着陸の順番待ちをしていた夜間戦闘機しかいない。それでも急ぐんだ、

急げ急げと掩蔽壕に守られていない機体の整備士とパイロットは走っていった。


地上から高角砲の灰色の弾幕で歓迎されるたび、連山は揺れた。

VT信管の存在は日本軍は終戦時まで知らなかったようだが、

直撃さえしなければ大きな損傷はない。爆弾倉がゆっくりと開き、

標準が滑走路やその周りの掩蔽壕や弾薬庫に向けられた。

歴史を変えようとする装填手が、短く発した。

「投下まで、3…2…1…ッテェ」


連山の爆弾倉から高い音を立て、次々と爆弾が落ちていく。

に号作戦で活かせなかった分を目に物見せんと、長い信管をつけた爆弾が投下されていった。


爆弾は甲高い音を立てて落ち、地面に落ちる前に多数の小爆弾となって

落ちていった。そう、三式爆弾、つまり「クラスター爆弾」だったのである。

滑走路や駐機していたB29が次々と吹き飛んでいく。掩蔽壕にも容赦なく

貫徹力に高い爆弾が放り込まれ中の機体ごと爆散していた。

連山パイロット達は口々に「ザマァ見上がれ」と叫んだ。

残った対空砲の追撃や戦闘機の攻撃を避けながら彼らは悠々と飛んでいった。


テニアン島の飛行場は見事に粉砕し、彼らの目的は達成されたように思えた。

しかし、現実はそうは甘くなかった。残った掩蔽壕に「エノラ・ゲイ」

およびリトルボーイとファットマンは無事に生き残っていたのである。

米軍十八番のブルドーザーがあっという間に滑走路を平らにしていく。

彼らの攻撃は無駄だったのか。いや、エノラ・ゲイの発進に少し時間を

遅らせることが出来た。このことが、後にどんな結果をもたらすかは、

この時ハルゼイもミッチャーもトルーマンも、そして宇垣纏や鈴木貫太郎もまた、

誰も予想することはできなかったのである。


終戦日80周年に完結させようと思ったのに…間に合いませんでした‥なんてこった…

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