第十八話 呉軍港大空襲①
もしに号作戦が実行されてたら80年前の今頃横須賀空襲の前あたりになるんだろうか。ありえないけど。
「主砲!交互一斉撃ち方用意!」
ブザー音が鳴り、主砲塔近くに配置された将校たちが慌てて退避したのを
確認して射撃長がトリガーを引く。
「ってぇ!!」
榛名の35.6cm砲4門が爆音を轟かせ、三式弾が敵編隊の上空で炸裂する。
パラパラと何機かが落ちたがまだまだ数が多い。その一方、
ほとんどの艦艇の高角砲、機銃は陸揚げされ、
対空火力はその主砲のみという絶望的な状態であった。
しかも燃料が極度に不足している。どんな高速を誇る戦艦であろうと、
動けなければ絶好の的でしかない。榛名から少し離れた場所では
日向が次々と直撃弾を食らっていた。レイテ沖海戦やに号作戦で
圧倒的な回避術を見せた伊勢と日向も、
動けなければその操艦術は活かされることはない。
宵月や梨が残った燃料を懸命に使って回避しながら対空弾幕を
撃ちあげていたが、2艦だけではどうにもならない。
2基の主砲塔に縞々のダズル迷彩を施した榛名も次々と水柱が覆った。
呉は日本海軍創立の初期からずっと多くの艦艇たちの母港として
ずっと支え続けてきた重要港である。大和、長門、扶桑、赤城、
蒼龍、葛城、千歳、千代田、那智、愛宕、最上、大淀、
そして多数の小型艦艇たちにとっては生まれ故郷でもある。
その故郷が今、敵機たちによって蹂躙されているのである。
天城が多数の命中弾を食らい、ゆっくりと傾いた。天城と、
そして少し離れたところに停泊していた葛城はミッドウェー海戦後、
空母不足を解消するために量産された雲龍型(改飛龍型)である。
しかも天城という名は、幻の巡洋戦艦天城の名を継いでいる。
天城(巡洋戦艦の方)は八八艦隊の一員として、
赤城と共に41㎝砲10門を装備、速力30ノット、
防御力は長門型を超えるという強力な高速戦艦になるはずだった。
しかし軍縮の流れはそれを許さず、長門と陸奥こそ保有を認められたものの、
天城と赤城は空母へと改装、それ以外の艦は解体あるいは標的艦となった。
しかし、天城には二度目の不幸が訪れる。
関東大震災によって船体が転落。歪みが発生し、
船として致命的な怪我を負ってしまったのである。
やむなく天城は解体、代わりに加賀が改装されたのは言うまでもない。
しかし天城のことをよほど気にかけていたのか、大戦後期、
日本海軍は艦の命名基準を変更する。従来の空に関する言葉だけでなく、
重巡洋艦と同様、山岳名を着けるようになったのである。
ちなみに巡洋戦艦の命名基準も日本海軍では重巡洋艦という扱いなので山岳名であった。
そしてその正規空母としては初の
(正規空母の基準とは本来最初から空母として設計された
空母のことを指す。この場合、赤城や加賀は正規空母ではなくなる)
山岳名を使った空母が天城なのである。つまり天城とは、
先代への未練が拭いきれなかった日本海軍上層部からの期待が
こもった空母だといえる。しかし彼女が完成した時にはすでに
パイロット達の錬度と数共に大きく低下しており、
載せるべき航空隊は消耗しつくしていた。に号作戦では奇襲をかけて
敵空母の飛行甲板を叩き、一時的な勝利に貢献したが、
その後はただ呉に停泊しているだけであった。
とはいえど一度は勝利を手にしたのである。マリアナ沖海戦以降、
ずっと勝てなかった、あのアメ公にである。建造されたのは、
無駄ではなかった。天城に次々と水柱と火柱が上がる中で、
艦橋にいた艦長はゆっくりと微笑んだ。直後、爆弾が命中し、
艦橋は火に包まれた。既に退艦していた将校たちは天城が
炎上する様を、機銃を撃つのをやめてまで静かに敬礼していた。
燃えているのは天城だけではない。呉に帰投していた元重雷装巡洋艦、
北上も火を発していた。転覆こそしなかったものの航行不能、
激しく炎上していた。まるでに号作戦で回天を放ったことが
間違いだったのかのように激しく火柱が吹き上がっている。
5500t軽巡最後の生き残りである彼女でさえも、
数の暴力の前にひれふすしかなかった。
日向が大破擱座し、天城と北上は激しく炎上している。
残りの各艦も次々と命中弾を食らっている。
アメ公のパイロット達はバールハーパーのお返しだとほくそ笑んだ。
その時の事だった。雲の上から紫電改が現れ、
急降下してヘルダイバー爆撃機達に機銃を撃ってきた。
もはやこの小説ではお馴染みの、343航空隊のエリートパイロット達である。
343航空隊の主任務は重要港の防空である。どんなに消耗していたって、
呉をわが物顔で悠々と飛ばれるのは大変屈辱的である。
偏隊長は無線で各員にそれまでの鬱憤を晴らすように叫んだ。
「奴らを全機撃ち落とすんだ!ピンピンしてる奴から撃ち落としてしまえ!」
紫電改とアメ公たちのF6Fヘルキャットたちが激しく混じり合い、
あちこちで落下傘が広がる。343航空隊は太平洋戦争最後のエース部隊であったが、
彼らにさえも呉を守りきることはできない。燃え上がる日向は
その飛行甲板に風穴を開けられようとも、その巨砲を撃ち続けた。
アメ公たちはその激しく煙を出す戦艦を集中して爆弾を放り投げた。
それは伊勢や榛名、利根や青葉達の盾となっているのかのようだった。
日向の浸水は深刻で、すでに着底していてもおかしくなかった。
しかし2番砲塔が諦めずに砲を帰投中の敵編隊に向け、最後の爆風を
轟かせた。わずかにずれたものの三式弾は炸裂し、一機を巻き込んで
花弁を散らした。日向はそれを見届けると、一切の活動を停止した。
結果から先に言えば、この7月24日の呉空襲においては、
日向が集中して攻撃を受けることによってほかの艦艇たちの
損傷をおさえることができた。しかしこれで終わったわけではない。
28日には第2派が来る。さらに陸上攻撃機隊も同時に攻撃をかけようと
しているのである。343航空隊も稼働機を一機でも増やすために整備員が
あちこち走り回っているが、紫電改の「誉」エンジンが不調をきたし、
稼働機は全部で30機程に落ち込んでいる。さらに、武藤金義といった
エリートパイロット達も少なからず戦死している。
圧倒的な壊滅以外神は許そうとしないのか。いや、
戦場はなにも本土だけではない。新しく戦闘が30日には
起ころうとしているのである。それを見るためには、
私たちははるか南方へと目を向けなければならない。
7月30日 サイパン諸島 テニアン基地付近海域
テニアン基地には、本土爆撃の為に集中しているB-29がずらりと並び、
毎日のように数百機が飛んで行っていた。一方、少し離れた海域では
哨戒艇や飛行艇からの哨戒をやりすごしながら偵察を続けていた潜水艦、
伊58が潜航しながら輸送船団を探していた。原子力関連の設備を輸送中の
艦を狙って攻撃すべきだが、下手に動けば護衛達によってあっというまに
二度と浮上できなくなってしまう。伊58は回天も載せていたが、
命中率はたかが知れているのである。なるべくなら魚雷を使って沈めたい。
敵に見つかる前に発射できれば、の話だが。艦長は大きくため息をついた。
そのときのことだった。潜望鏡を覗いていた見張りが慌てて金切り声をあげた。
「敵艦見ゆ!重巡1隻!単艦行動中と思われ!」
なんか久しぶりにしっかり調べまくった気がする 。ところで二次創作はだめってわかってても実はこの小説書くとき艦これだとどう動くんだろうな、って思いながら書いてます。例えば…うん?瑞雲?あっ瑞雲利根に無理やり乗っけたまま忘れ去ってた。どうしよう。や、やっぱり、輸送船団に伊勢&日向護衛させた方良かったかな...?小説何回改装すれば完璧になるんだ...?え?いっそのこと全部瑞雲に?う~ん。カオス。そういえば零式水偵は確かに雷撃機verはあったけどカタパルトからどうやって離艦させるんだろう...?え?伊勢&日向と速吸に流星搭載する計画があった?それ爆装じゃなくて?本当?ちょっと調べてみよっかな。って、全然直すとこたくさん過ぎて困るーーー!!(作ったのは確かに私だが)




