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日本軍最後の抵抗  作者: 宵月 星華
第一章  に号作戦

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第十六話 モグラ輸送

さて、歴史改変の度合い増してきたけど、どうしよっか。

 さて、北部で一時的に米戦車を蹴散らした日本陸軍戦車たちは、

南の飛行場を占拠すべく、轟音を立てて時速三十㎞程で走っていた。

先ほどは侮られていたのか、数が少なかったから蹴散らすことが

出来たが、次はどうなるかわからぬ。数の暴力に対抗できないことは

これまでの戦況が証明している。陸軍戦車兵達はキューポラから顔を出し、

敵を先に見つけるべ必死になっていた。


「敵機接近!陸攻多数接近中!」

 先方を走っていた一式中戦車チヘの将校が金切り声をあげた。

やはり来た。B25双発爆撃機である。今有効な対空火器を日本戦車たち

は持っていなかった。持っていたとしても25mm機銃では非力なのだろうが。

チヘや歩兵たちが持ってきた九九式軽機関銃は

対空射撃ができるが、7.62mmの弾丸で何が出来るというのか。

とにかく、今は回避しつずけるしかあるまい。彼らは懸命に牽制の為に

7.62mm弾を打ち上げながら、回避すべくひたすら散開していった。


出遅れたのは駆逐戦車であるために速度が遅かった、一式砲戦車である。

護衛していた歩兵が懸命に弾幕を張ろうとするが、

B25は容赦なく次々と爆弾を投下した。

一式砲戦車は直撃弾を食らったのもいれば、

至近弾で兵士が壊滅したものなど、次々と撃破されていった。


一方、回避行動を続けて散り散りになってしまった戦車たちにも

次々と不幸が訪れた。m4シャーマンとm3リー軽戦車が多数現れ、

次々と捕捉され、各個撃破されていったのである。

懸命に次々とシャーマンを撃破した四式中戦車チトも、包囲され、

履帯を切られ、エンジンを破損し、次々と撃破されていったのである。

護衛していた歩兵達も、アメ公のm1ガランドに撃ち負け、

ブローニングになぎ倒され、バタバタと倒れていった。


生き残った将校たちはただ草むらに伏せるしかなかった。

鉄の暴風によって辺りは焦土であり、戦車を隠せる掩蔽物などない。

ああ、こうして滑走路の占拠はおろか、南部で孤立している残存兵達に

物資を届けることすらも出来なかったのか。

電報でそれを知った司令官たちは落胆した。


沖縄本島南部 某洞窟内

「敵戦車多数及ビ爆撃ノ前二我壊滅ス。撤退ハ難シト思ワレ」

この洞窟には沖縄守備兵が集まっていた。

とはいえど、発見されたらたちまち壊滅する。

司令官たちはもしアメ公に侵入されたら、

手榴弾で自殺しようと考えていた。その時のことだった。

洞窟の入り口から何人かの兵士が顔を出した。

『ここまでか...!』

司令官たちは咄嗟にピンを抜こうとした。ところが、彼らは慌てて叫んだ

「待て!我々味方だ!補給物資を届けに来た!」

あやうく一人がピンを抜く寸前までいったが、

それを司令官は静止しながら彼らのマークを見た。

腕に巻いたバンダナには、しっかりと誇らしげに日の丸が輝いていた。

「どうして...戦車隊は壊滅したはずじゃ...」

「我々は、南部より丁型潜水艇による隠密上陸を行いましたから」


2時間ほど前

哨戒艇が離れて行ったのを確認して、丁型潜水艦が次々と乗り上げ、

兵士が降りていく。

この丁型潜水艦は他の潜水艦たちとかとは全く異なる運用思想によって

建造されたものである。艦隊決戦でもなく、通商破壊でもなく、

隠密上陸という、独特の目的である。それは敵に制空権が握られている中の

隠密輸送という、太平洋戦争における日本海軍の潜水艦の役割にマッチしていた。

中には回天を搭載して敵港の襲撃に用いられたものもあったが、

これが日本軍にとってどれだけ良かったか、言うまでもない。

彼らは爆撃機たちが攻撃しに行ったのを確認し、

こそこそと南部の司令達を救出に来たのである。

戦車隊は言わば囮だったのである。

犠牲は無駄ではなかった。彼らは守備兵達を回収して洞窟を出た。



「残った者はいるか!潜水艦は戻ってはこぬぞ!」

海岸に打ち上げた丁型潜水艦の上から、将校たちがメガホンを持って呼びかけた。

アメ公の兵士にバレたらどうするのか。それは当たり前だが、

陸軍将校達にとってどうでもよかった。沖縄戦は硫黄島よりも残酷に、

完璧に日本軍を粉砕した。硫黄島ですら二日目以降有効な攻撃を与えていない。

特攻が常態化する戦場で生き残った命を1つでも多くかき集める。

たとえ自分らがそのせいで死んだとしても。

彼らはアメ公の哨戒艇が来るギリギリまで待っていた。


その2時間後

F6Fグラマンやヘルダイバー爆撃機が相次いで姿を現した。

続いて丘の向こうから相次いでM4シャーマンやM3リー軽戦車が姿を見せた。

彼らは血眼になって日本軍将校を探した。

7.5cm砲がギラリと光ったが、その先には海があるだけだった。


「投錨」呉に錨が降ろされ、機動部隊の各艦の兵士達は満足感に包まれていた。

特に伊勢や日向、各秋月型駆逐艦の乗組員たちは敵機を次々と撃ち落したので

盛り上がっていた。遅れてやってきた主力艦隊の各艦も

そっと錨をおろし、艦長たちは艦橋から夕焼けで赤く染まった空を眺めていた。


こうして、「に号作戦」は終わった。海軍艦艇の大半は

軍港につながれて空襲を耐え抜くもの、潜水艦と空襲を避けながら

資源輸送を続けるもの、機雷を必死になって掃海するものばかり。

制空権は全力攻撃でやっととれるものばかり。掩蔽壕に機体を隠し、

地道な偵察を続けていた。もうあとはされるがまま。降伏への道をたどるのみ。

だがここで、大本営はある情報をとらえた。

「我々はマンハッタン計画を成功させた。

我々は彼らが降伏しない限り、二つの原子力爆弾を日本に落とすつもりである」

実は日本やドイツも核兵器開発を行っていたことは知る人ぞ知る情報だろうか。

結局開発には失敗し、不可能だと思われていた。

だがその最強兵器を、アメ公が開発成功し、日本に落とすというのである。

に号作戦以上の震撼が大本営に広がった。

なんとしても落とさせてはならぬ。

おそらくB29にのせてマニアナ諸島からやってくるのだろう。

事前に滑走路を叩きたいが、陸攻の航続距離あれど、

護衛できるほどの航続距離を持った戦闘機がいない。

つまり水際で防衛するしかあるまい。潜水艦の砲撃で滑走路、

できれば機体の破壊が望ましいが、そんなことしたら

直ちに哨戒艇や陸上機に襲われてしまう。大本営は哨戒の一層の強化と、

高高度に来るであろうB29の迎撃が出来る戦闘機の増産に取り掛かった。

潜水艦たちは、アメリカから来るであろう原子力爆弾関連の装備を

輸送中の艦艇を見つけるべく、静かに海の中で待っていた。

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