庭園と学食
「おっ、あれかな?」
そこには、見るからに庭園みたいな入り口があった。何かアーチ状の物につた植物を絡めたのだろう。綺麗な緑のアーチができている。進むにつれ、向こう側からも誰かが来ているのがわかった。肩にかかるぐらいの白い髪を揺らしながら、静かに歩いていた。ちょうど庭の入り口あたりで、彼女は立ち止まった。だから、
「おはようございます。」と挨拶すると
「……名前は?」と聞かれた。最初に名を名乗れってことか。
「夢野 天花です。」
「そう。……私は水 雪華。堅苦しい敬語はやめて、同学年なんだから。」
「了解。君も庭園に用があるの?」
「どんなものか気になって。」
「へぇ〜。水さんも植物に興味あるんだ。」
「うん。どのぐらい綺麗なのか楽しみ。」
その時、一瞬だけかもしれないけれど笑ったように見えた。やっぱり好きなものの話だからかな。
「あと水さんじゃなくて、あだ名つけていいから別の呼び方にして。」
「わかった。じゃあ、雪華の‘‘雪‘’からとってセツはどうかな。」
「別に、好きにすればいいと思う。」
「ありがとう。じゃあよろしくね、セツ」
そう言って、僕たちは庭園の中に入った。
「かなりたくさんの種類があるね。」
「・・・。」
彼女は、見惚れているのか黙ったままだ。それにしても、結構有名なものから、そこまで有名じゃないものまで本当に色々ある。この量の花を、一体どこの誰が育てているのだろうか。地図をもらった時からなんとなくわかっていたが、かなり広い。ここをじっくり見ているだけで、1日潰れるんじゃないかと思うほどだ。見物して時間は過ぎ、
「おーいセツ、もうそろそろ行かないと7時になりそうだ。」
「わかった。すぐ行く。」
そして学校に向かった。
この学校は、朝・昼・夜と食堂で食べることになっている。また、これもクラスによって豪華さが変わる。ここでは、良い生活をしたければ良い成績をとらなきゃいけないらしい。よくできているよ。まぁクラス発表されていないから、みんなEクラスの食事だけどな。
「あっ!テン!こっちだよ。」
「マイ、わかった。セツも一緒にどうだ。」
「いいの?」
「大丈夫だって。ほら行くぞ。」
学食はそれぞれの時間帯で違うが、日替わりAと日替わりBしかない。アレルギーを除いて好き嫌いはするなということだろう。冒険者になって携帯食が食べれないとか嫌だもんな。席に着くともう学食が用意されていた。そして、なぜかセツの分まであった。
「なんで、セツが来るってわかってたの?」
「さっき窓から、2人で来るのが見えたから。ところで、その人は誰?」
「ああ、この人はさっき散歩してる時に知り合った水 雪華さんだよ。」
「よろしく。セツって呼んでもいいよ。あと敬語は不要。」
「わかった。私は風宮 舞。マイって呼んでくれればいいよ。」
なんかセツの対応が僕の時と全然違う気がする。女子同士だから、話しやすいのかもしれない。それにしても、学食Eクラスでもここまでうまいのか。3人で一緒に学食を食べていると、ふと「なぜだ〜」や「あの雪華さんが!?」とか「美女2人に囲まれて・・・」という驚きや羨望の声が聞こえてくる。マイはともかく、セツは一体何をすれば言われるようになるんだ。聞いてみるか。
「セツ、何かやらかしたか。」
「う〜〜ん、特にないけどあるとするのなら、プロポーズされたから断った。」
普通それだけで、あんなことは言われないはず。断り方に問題があったのかもしれない。
「どんな風に?」
「ちょっと冷たい感じにズバッと。」
「だから、最初ちょっと壁みたいなのがあったのか。」
入学式で、関係はそんなないはずだよな。つまり、相手の人は一目惚れだったのだろうか。だったら、ものすごく見た目に自信があったんだろうな。かわいそうに。でも僕は、一目惚れがそんな好きではないかな。相手の見た目で判断してるみたいで。自分がされたら嫌だし。朝食を済ませた僕たちは、クラス確認のためにグラウンドへ向かった。
・不定期投稿 ・急な失踪
などあるかもしれませんが、頑張ります。