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第45話 フィリアノス要塞攻略戦 3

「ブリュンヒルデ01よりランドグリーズ隊。航空基地の攻撃はどうなっている?」


『奴ら基地上空で待ち構えてます! 援護を求めます!』


 援護? 第三中隊——ランドグリーズ隊には第二中隊——フリスト隊の援護が付いているはずだ。それ以上の迎撃機の数だというのだろうか?


「フリスト隊の援護はどうなっている?」


『こちらフリスト01! 敵が多すぎます! 増援を求めます!』


 残念なことにサルヴィアの予感は的中してしまったらしい。事前の作戦説明には先の攻撃により、敵迎撃機の数は少なくなっていると言われていた。どうやら諜報部の情報には大穴が開いていたようだ。


「……了解した。本部に援軍の催促をする。ヴァルキリー大隊各員、持ちこたえろ!」


『『了解!』』


「ヴァルキリー大隊大隊指揮官よりCP(コマンドポスト)。敵が多い、援軍はまだか?」


『こちらCP。援軍到着まであと三〇〇』


 三〇〇……、サンビャク? 三百秒⁉ つまり五分だ。カップ麺を作ったら麺が伸びきるほどの時間じゃないか!


 サルヴィアは友軍到着までの時間を知りCPに怒鳴る。


「三〇〇⁉ 五分もかかるのか⁉ 何故そんなにかかる⁉」


『貴隊が出撃した後、我が空軍基地に敵機が来襲。援軍となるはずだった第135航空大隊はその迎撃に出ていた』


「……ッ! なるほど……、了解した。可能な限り第135大隊を急がしてくれ」


『了解した。ヴァルキリー大隊の幸運を祈る。貴隊に戦乙女の加護があらんことを』


「あぁ……、せいぜい祈ってくれ」


 自分の初めての実戦の時もこんな感じだったなとサルヴィアは苦笑いをしながら各中隊長に秘匿回線で無線をかける。


「こちらブリュンヒルデ01、秘匿回線により各中隊長に告げる。いいか、中隊員には言うなよ」


『こちらスルーズ01。いったい何が……?』


「残念ながら友軍到着まで三〇〇かかるとのことだ。それまで何とか持ち堪えてほしい」


『こちらランドグリーズ隊。この敵の数の中での飛行場攻撃はできなくもないですが、かなりの犠牲が出ます。それでも爆撃を敢行した方がよろしいでしょうか?』


 正直無理やりにでも飛行場を叩きたいところだが、地上攻撃を担うランドグリーズ隊は第201特別大隊の要だ失うわけにはいかない。


「いや、まだいい。可能な限り敵機を減らす。ブリュンヒルデ隊及びスルーズ隊で飛行場上空の敵機を叩く。その隙に奴らにお土産を渡してやれ」


『了解しました!』


 脳内で過剰なまでのアドレナリンが分泌されているという感覚の中、サルヴィアは飛行場上空の敵機群に向かう。

 敵の数は目算で大隊規模。——つまり五十機ほどはいる。


 それに加えて飛行場には未だ多くの戦闘機が待機しており、今もこうしている間に一機が飛び立った。つまり時間が経てば経つほど不利になっていくのだ。

 サルヴィアは部下たちと、何より自分を鼓舞すべく声を張り上げる。


「ブリュンヒルデ隊、スルーズ隊! これより飛行場上空の敵機を叩く。敵は多いぞ、食い放題だ! 貴様ら、食い残すなよ! ……各員、私に続けぇ!」


『『了解!』』



『ブリュンヒルデ隊、スルーズ隊! これより飛行場上空の敵機を叩く。敵は多いぞ、食い放題だ! 貴様ら、食い残すなよ! ……各員、私に続けぇ!』


「了解!」


 やはり少佐殿はすごい。援軍はなぜか来ない、敵の数はこちらの倍ほど、そんな絶望的な状況の中、味方を鼓舞し、自ら先頭で敵陣へと突撃する。まさに少佐殿こそが本物の戦乙女だと、私——ストレリチアは感心する。


 まさに多勢に無勢、そんな状況で震えていた操縦桿を握る手はサルヴィア少佐の言葉を聞いて落ち着いた。それどころか、武者震いを始めてしまうほどに私は高揚していた。


「ブリュンヒルデ02よりブリュンヒルデ04。今のところ何機墜とした? ちなみに私は今のところ四機墜としたよ」


 高まった気分のまま、最初の雪中行軍の時に話しかけて以来友人であるフィリアに声を掛ける。


『何? 自慢? 私はまだ二機しか墜とせてないんだけど』


「じゃあ、少佐殿のコーヒーは私がもらえるかもね」


『いや、まだこれからだから。ここから私が巻き返すかもよ?』


 どうやらフィリアもサルヴィア少佐の鼓舞に気分が高まっているらしい。この様子では大隊全員の士気はかなり高いことだろう。流石は少佐殿と言ったところだ。


『ブリュンヒルデ01よりブリュンヒルデ02、04。無線はおしゃべり広場じゃないんだぞ、そろそろ接敵する。少し気を引き締めろ』


「「了解!」」


 少し怒られてしまったが、おかげで気は引き締まった。敵の数はこちらの倍。そんな中でも私はうっすらと笑みを浮かべて機銃の発射トリガーを引く。

読んでいただきありがとうございました。

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