第41話 航空攻撃 1
『第三中隊揃いました』
「よし、ではこれからやつらに空からの攻撃の恐ろしさを刻み込みに行くぞ!」
『『おぉー!』』
「ちなみにだが、今回の攻撃をあのヘッドクォーターが楽しみにしていた」
『あの常に冷静で血が流れているかわからないような本部の人間がですか?』
「どうやら、そんな人間すら楽しみにさせてしまうほど我々は期待されているらしい。期待に恥じぬよう素晴らしいスコアをぶら下げて帰るぞ!」
『『了解!』』
どうやら皆、士気はかなり高いらしく、返事が良い。サルヴィアも一応冷静に振舞おうとはしているが、やはり興奮を抑えきれない。
上空で編隊を組みなおし、敵陣地まで向かっていると、長大な塹壕陣地とともに巨大で頑強そうな要塞が見えてくる。
「ほぉ。これがフィリアノス要塞か……。デカいな」
『ですね……。これは攻略に手を焼くわけです』
思わず漏らした声が無線に入ってしまったらしい。ストレリチア少尉も驚いた様子で返してくる。
『ねぇ、サルヴィア。これを今からやるの?』
『流石にアタシ達だけじゃ無理じゃない?』
『多少の損害は与えられても陥落までは流石に無理かと』
フィサリス、シティス、グロリオサ中尉がそれぞれ意見を述べる。最初の二人に至っては驚きのあまり、任務中だというのに敬語を忘れている。
「グロリオサ中尉の言う通り我々の攻撃だけでは陥落は流石に不可能だ。しかし、要塞上部を見たまえ、砲兵陣地があるだろう? それに要塞の後ろには滑走路まである。あれを使用不可能にすることはおそらく可能だ。本格的な攻撃は正規の攻撃機が来て、地上軍との連携作戦の時にするぞ」
『正規の攻撃機とは……、ついに完成したのですか?』
グロリオサ中尉が興味津々と言った様子で聞いてくる。
「試作機ではあるがな。我々の隊に先行配備とのことだ。ほんとエメリアノヴァ閣下には頭が上がらんな」
『攻撃機ですか……。楽しみですね』
「まぁ、無駄話もさておきそろそろ攻撃を仕掛けるぞ。一応対空機銃なんかもあるかもしれない。第三中隊はくれぐれも注意するように」
『『了解!』』
斯くしてサルヴィア達はフィリアノス要塞へと向かう。
「第三中隊は砲兵陣地と、滑走路を狙え。それ以外は塹壕陣地やレーダーなどのソフトターゲットを穴だらけにしてやれ!」
大隊が散開したところでサルヴィアは自分は何を狙おうかと考える。
滑走路、砲兵陣地は論外として、ソフトターゲットであれば、飛行場に止めてある戦闘機、レーダー、給油車、そして管制塔なんかがある。さらには大量の歩兵が待機している塹壕陣地なんかもあるがそれは部下に任せようと考え止める。
「よし、では我々も飛行場方面に向かうぞ。レーダーやら、戦闘機やらソフトターゲットはある。小隊、私に続け!」
『『了解!』』
サルヴィア達は斜めに降下していき、止めてある戦闘機に機銃掃射を浴びせかける。
おそらくスクランブルで上がろうとしていたのだろう、戦闘機に乗り込もうとしていた敵のパイロットは二〇ミリ機銃をくらい血煙となってはじけ飛ぶ。
そのまま小隊で四機を破壊し、上昇する。さらにサルヴィアは上昇する前に敵の管制塔の最上階に機関銃を放つ。
弾丸は管制室のガラスを容易に貫通し、中にいたであろう管制官をミンチにしたのか、ガラスにはべったりと血が付くのが見える。
このままでは管制塔に正面衝突するのでサルヴィアは機体を捻り回避し、再度止めてある戦闘機や給油車を狙う。
「小隊、私は離陸しようとしている機を狙う。貴官らは止まっているターゲットを狙え。スコアを譲ってやる。ビュッフェ方式だ。残さず食えよ」
『『了解!』』
サルヴィアのジョークに少し小隊の緊張がほどける。そしてサルヴィアは地面に対しかなり浅い角度で侵入、機銃の発射トリガーを引く。
もう少しで離陸できたであろう機に容赦なく鉛弾を叩き込む。
撃たれた敵機はそのままスリップして滑走路のど真ん中で炎上している。これでしばらくは離陸できないだろう。
そのままさらに整備士など地上を駆けまわっている人間を手あたり次第に撃っていく。幸いなことにこれは急遽決まった空襲。テレビの連中も来ていない。少しくらいグレーなことをしても許されるのだ。
こうしてこの世界初の大隊規模による組織的空襲は幕を開けた。
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以上、稲荷狐満でした!