第39話 初陣 3
けたたましいサイレンでサルヴィアはたたき起こされる。
「あぁ、クソ。スクランブルか」
サルヴィアは急いでパイロットスーツに着替え自分の機体へと走る。
道中、走りながら副官のストレリチア少尉に今回の敵について確認する。
「少尉、今回の敵編成は?」
「敵一個中隊です。目的はおそらく強行偵察です」
「だろうな、空襲なんてこの世界でやっているのは私達だけだからな」
「そうですね。にしても強行偵察でたたき起こされる側と言うのはこんなものなんですね」
「あぁ、C-03地区での強行偵察を思い出すな」
あの時は最悪だった。無意味な偵察の上に敵のエースパイロット——通称、雷神が出てきたのだから。普通はありえないがサルヴィアはあの強行偵察の一回目で死んでいる。二回目で初めて雷神を撃退し、命からがら帰って来たのだ。
自分の機体にたどり着き、すでにエンジンをかけてくれている整備士に「ご苦労」と声を掛け、急いで機体に乗り込む。
そのまま準備が出来た者から順次機体を空へとあげる。
第一、第二中隊が全機上がったのを確認してサルヴィアは無線機越しに大隊員に声を掛ける。
「とりあえず第一、第二中隊から初陣だ。だが今地上にいる第三中隊の面々も機体には乗り込んでおけこちらから反撃を仕掛けることも考えている」
『『了解!』』
「よし、では第一、第二中隊は私に続け! 私たちを覗きに来た奴らの目つぶしに行くぞ!」
『『了解!』』
皆、初陣と言えど士気はかなり高いようだ。それに初めての戦闘が敵偵察中隊の迎撃でよかった。
いきなり要塞攻略戦なんかさせられるんじゃないかとひやひやしていた。
サルヴィアはそう安堵のため息を漏らす。しかし雷神のようなエースが来る可能性もあるのだ、気は抜けないなとサルヴィアは気を引き締める。
「奴らのエンジン性能は我々のそれに劣る。がしかし機動性は桁違いだ、よって私が諸君らより少し低空で奴らを惹きつける。諸君らはは高度優位を活かした一撃離脱戦法に徹しろ。いいな?」
『『了解!』』
皆が了解の意を示す中ストレリチア少尉が話始める。
『大尉、小官は大尉と一緒にいた方がいいのではないですか?』
「確かにそうだが、貴官にまで無理をさせるわけにはいかない」
『いえ、私は大尉のバディです。それゆえ私には大尉を援護することに徹した方がよいかと愚考します』
「……随分とたくましくなったな。よし、ではお前は私についてこい。くれぐれも墜とされるなよ」
『了解! お任せください!』
どうやら副官はいつの間にかここまでたくましくなっていたらしい。
思わぬ部下の成長ぶりと、背を預けられる存在に思わずサルヴィアは「ふっ」と軽く笑う。
『正面、敵を目視! 距離、約五千!』
フィサリスが敵を確認したとの報告を送ってくる。
「よろしい。総員気を引き締めろ、奴らは少数と言えこれは初陣だ。ここで墜とされるノロマはいないと思うが、奴らの中にエースが紛れているかもしれん。気を付けろ」
『『了解!』』
サルヴィアとストレリチア少尉以外の面々は散開しながら高度を上げていく。そして敵と同じ高度にいるのはサルヴィアとストレリチア少尉の二人だけとなる。
「少尉。二人きりだな」
『ご安心を、私が大尉の背は護ります!』
「随分頼もしいじゃないか。ではそろそろ奴らとのダンスのお時間だ。……Shall we dance? ってやつだ」
『しゃる、うぃー?』
「……気にするな、あぁ……、私の地方の……方言みたいなものだ。……では、行くぞ少尉!」
『はっ!』
斯くして第201特別大隊の初陣が幕を開ける。
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