手の平をナイフでスライスしたときの話。
今回は血液とか桜色のあれだとか、人によってはグロテスクに感じるかも知れない描写が少し多めに入っておりますのでご注意ください。
そう、あれはある暑い夏の日の事。
経緯に興味がある方はあまり多くないと思うので省きますが、結果的に私は手の平をスライスしたことがあるんです。
具体的には、表面積で言えば 1.5から2平方センチメートルほど。
まず最初に思ったことといえば、
『へー、皮膚の下ってこうなってるんだ』ってことでした。
まあそれくらい綺麗な桜色で、時分の肉だと強く意識しなければ嫌悪感が沸かない程。
特段血が大量に溢れてくるでもなく表面は綺麗なままで、スライスした箇所からじんわりと血が滲み とろとろとも、さらさらともつかない。
そんな不思議な感触、油に近いとろみの体温からすると温かくも冷たくもないようなしっかりと目で見て指で掬うように触れなければその感触すら感じることがない不思議な一体感のある鮮やかな液体。
けれどもこのじんわり趣味というのがなかなか厄介で、全面からまんべんなく血が滲む擦り傷の様な怪我であるからか絆創膏や包帯は貼りつかない様なぬるぬるとした感触があり血で滑って手当てを施す事すら難しい。
撥水性のある湿布のようなものでなくては、
傷を塞ぐことすらできない。
まあしかしそこまで重い怪我ではなく、
あくまでも水に触れられず、物を掴めず手当が遅れれば貧血気味の人には辛いかもしれないぐらいの出血がある位の軽度なもの。
個人的な感想としては血が苦手な人なら精神的に不安定になるだろうというそういう類の焦りを生む怪我であるというのが感想であり、医療器具を携行していない外出時や、土や砂・泥などで汚れている場合に破傷風などに気をつけるべきではあるが。
とりあえず水で洗い湿布と包帯で止血さえ行えば 後は病院へと駆け込み適切な処置を施してもらうだけで2週間もすれば直る程度のもの。
最初は切れているということすら認識できない、 それほどまでに綺麗な断面ならば痛みはないものの これがマッシー切れ味の悪い母のによるものであったのならば痛みは強いものとなり、肉は抉れ、骨や神経に達すれば虫歯を五十倍痛くしたような激痛が走ることだろう。
私の周りのごとく神経を空気にさらしたことがあるが、液体に包まれていなければ私はもしかすれば痛みで気絶していた事だろう。
多くの場合血が出るということはよくないことであり血を抜く事が適切な処置だとされるが、
実際患者の立場からすれば血があることによって神経が外気に触れることなく痛みが抑えられる。
こういった事情から適切な医療行為であるとはいえ血を拭うということは結構な覚悟を必要とする。
神経というものは空気に触れることはできない。
その例えとして先日の通り虫歯を例に出したが、
これを補足するならば次の通りになる。
末期にまで進行した歯を溶かしつくしし歯神経を 虫歯菌が直接に酸で溶かそうとする、この痛みがほぼ神経が外気に触れるものと同等の痛みである。
どうだろう、途端に想像しやすくなったのではないだろうか。
はっきりと申し上げるに地獄である。
一度体験した人間ならば二度と体験したくないと強制的に思わされる。
其こそが、神経を外気に露出するという行為なのである。
まあつまりは、結論としては綺麗な断面で指の表面だけを削ぎ落としたのならばまだしも、指に対して垂直に刃を振り落とす場合は死ぬような痛みが、 局所的に数週間以上続くということを覚悟するべきであるということであり、つまりは麻酔なしでこういった神経や骨に達する怪我を治そうとする行為はもはや狂気の類であると私は考えるのである。
どこかの白衣の天使を崇める患者らの心理を私は全く理解できない。
いや、理解はする。が、共感はしないと言い換えるべきだろうか。
あれよりもつらい痛みに耐えてもなお怪我を治そうとする人間に対し、最終的に好意を寄せるというそれそのものに共感できないのである。
もしやそういった類いの治療行為によって人格を破壊されているのではないかとすら疑ってしまう。
それほどまでに神経を直接侵されるということは耐え難い苦痛なのである。
くれぐれも料理をする皆さんは指先を切り落としたりしないよう気を付けて頂きたい。
また余談ではあるが、実際に指に対して平行な 裂傷と垂直な裂傷とを比べてみると、明らかに垂直な裂傷の方がいい苦痛を伴う場合が多い。
例えば今回私が話した怪我の場合、痛みと呼べるものは殆ど感じられなかった。
ならこれに対して垂直な熱唱というものはほんの 長さ1センチメートルにも満たないような傷を指先に浅くつけるだけでも少し痛みを伴う。
また、鋭い刃物で切りつけた裂傷よりも、あまり切れ味の良くない刃物やノコギリ状の刃で傷つけたものの方が痛みは少ない。
そして皆さんここまで読んでいただけたが、
実は今まで話していたこと全て私自身が体験したことのある話である。
例えるならば、100均で買えるステーキナイフのようなおおよそ刃物と呼べるかどうかすら怪しいようなものでも手を傷つける程度ならば造作もなく、
またヘアカットに用いるハサミならばほんの少し肌に当てて引いただけであっても鋭い痛みが走り、
治りは早いが強い痛みがあり、百均のナイフのような形状の刃ならば痛みはないが治りは遅いもので、 よく漫画や小説アニメなどで描かれているような 鋭い刃物による裂傷と鈍い刃物による裂傷の比較 の描写については、自然な状態の形を維持したまま切れている場合と組織を押し潰されてしまっている場合磯重を押し潰されている方が痛みが少なく、
自然な形を維持したままの状態の裂傷の方が痛みは強い。
おそらくは殺傷能力と苦痛というものは比例すると考えられているために、解釈を混同してしまっているのだと私は考えます。
そして裂傷よりも骨折の方が遥かに痛い、
これについては別に短編として私の体験をまとめてあげているので興味があればどうぞ。
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