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竜姫のお気に入り

竜の姫のお気に入り(え、私が竜姫のお気に入りですか?の竜騎士視点)

作者: さなりこ


ゼノスは困っていた。


いつも入口で出勤時に会う彼女をどう声をかけて誘うか。


いや、正確に言うとゼノスの仕事は交代制のため、三日に一度しか会えないのだが。 

会えない日は退勤前を狙って竜騎士の訓練最中に空から眺めたこともある。


彼女の成人の儀まで残り半年を切ったというに、半年間近くで見るばかり。


いや、正確に言うと近くではない。


挨拶もしたことがない。


一目惚れしてから目で追いかけ始めて、

仕事をしてる彼女の姿や、先輩騎士に怖気づくことなく楽しく話している様子にもう、目が離せなくなった。


一日中だって見ていたい。


そんな私を仲間たちはからかい半分、哀れみ半分で見ている。


現在、彼女ユーリアは見習い侍女で婚約者を探してると聞いている。


この国では婚約者とともに成人の儀に出席するのがステータスとなっている。


ということは成人の儀までにやるしかない!とは思っているんだが、踏み込めない。

すでに婚約者がいて、あとは任務期間を過ごしている人もいるみたいだが、彼女をずっと見続けた私は知っている。

成人の儀まで後半年。


だから、誘えばきっと大丈夫だと思う。

一時凌ぎの婚約者であっても。


ただ、挨拶すらできないこの状態をどう打破すればいいのか。


竜騎士になるまで、訓練訓練で、

今までプライベートで話した女性は

母、メイドのマーサだけだ。

女性に対してどう接すればよいのかわからない。


竜騎士も男所帯で自分と違う隊に唯一女性の先輩がいるらしいが、かっこよすぎるため、当てはまらないと思う。


よって眺めるだけで見つめるだけで日々を過ごしているのだ。



*****


竜の姫、アメリアは呆れたように呟いた。

『今日も眺めるだけだったのか?ふん。情けないのぅ。

私と契約した時の勢いはどうした?』


契約前から何となく言ってることがわかってたけれど、

契約後ははっきりと意志が伝わってくる。


「話しかけるったって、何の話すりゃいいんだよ。」

『私の時のようにストレートに言ってしまえば良いではないか、中々芯のしっかりした娘のようじゃし、何とかなるはずじゃがのぅ』


「出会ってから毎日、告白の練習はしてるんだ。」


ブホォッ


鼻息で笑われた。


いや、アメリア以外にも吹き出し音は聞こえてきた。



けど、いざ彼女を見ると足が竦んで怖くなるんだ。

自分が告白することで、振られたらもう見ることもできなくなってしまうかもしれない。しかも、いきなり告白とかありえないかもしれない。引かれたらもう近くで見ることもできないなんて。


「情けないけど動けないんだよな。せめて気持ちは伝えたいけど。初対面でいきなり告白なんかされたら困るよな。まずは婚約者からって、それでいいのかな。」



『私と契約した竜騎士がこんなにへなちょこのヘタレ男子とは思わなかったわ。さっさと告白して来ればよいのに』


竜姫アメリアは緑の尾をペシペシと俺の尻に当てて不満げにつぶやいた。


そんな様子のアメリアを見てると自分がもっと情けなくなってしまう。でも、だって。


『お、そうじゃ、お主と一緒によく見ていて、私も気に入っておるから、挨拶へ行ってみるかのぅ』



ふふふーん♪



飛び出した竜姫を誰がとめるか。


もちろん契約者である。


が、もちろん出遅れた。



*****



『ちょっと恋のキューピッドしてくるわぁ☆ひゃっほーい』

ギィギャァァァ!と甲高い咆哮で


ノリノリのアメリア。


出遅れたゼノスは追いかける。

ゼノスが一度も近づいたことがないくらい接近してる。


怯える彼女もかわいい。


アメリアは尻尾を振り続けて

『この娘かわいいー。』

と長首をユーリアの顔へ近づけた。


腰が抜けてしまったようだ。


慌てて近くへ向かう。

たとえ事故でも傷つけてしまうことがあってはならない。



「無事か!?」

近くで見る彼女が可愛すぎる。


『さあ!今よ!練習してきた成果をだすのよ!毎日告白の練習をしてきたのでしょ!ほら!』


「アメリア、やめてくれ」


わかってる。いや、でも。どうすれば。


「助けていただきありがとうございました」


やばい、可愛すぎる。


「いや、君のせいじゃないよ」


ゆっくりと立ちがった彼女はペコリとお辞儀をして去ろうとする。

待ってくれ!!


あぁ声にならない。



ズズズズズ


アメリアがユーリアに付いていってる。

ピッタリとよりそうようまるで従者のように。


いい!のか??


よし、ナイスアシスト!!

ありがとうアメリア! 



―「かわいい」


まさか、うちの竜姫アメリアと触れ合っているのか。

おお!天使がいる。


あの笑み!

俺にも向けてほしい。


一枚だけ色が変わっている鱗が不思議でそこも触れさせた。

瞳の色に近い碧色。

そこに触れることができるのは認められた者のみ。

その知識がある者達がざわめく。



「私、ユーリアというの。あなた様は?先程竜騎士が呼ばれてましたが、アメリア様とお呼びしてよろしいのかしら?」


『そうじゃ、好きなおなごに告白できないヘタレ騎士のキューピットのアメリアじゃ』


え!?

なんか伝わってる!

頷いたのは、名前の確認だけだよな?!


今のわかってて笑ってる!?かわいいけど。


「会えて嬉しかったわ。」


『いや、行かないでくれ。この情けない私の契約者と話してくれ。』

スリスリ媚びる姿に切なくなる。

ああ、俺も撫でられたい。



せっかくアメリアが引き止めてくれているんだ。

勇気をだせ。


「あのぅ。大変申し訳ないのですが、竜宿舎まで送っていただけませんか?あなたをとても気に入ってしまったようです。王妃宮には連絡いたしますので。」


『挨拶!自・己・紹・介!向こうは初対面じゃ!』


「ご挨拶遅れました。わたくし、第2部隊、竜姫アメリアの竜騎士、ゼノスと申します。」


「ん?いま、竜姫って言ったわよね?竜王の娘?」


「はい。竜王の3番目の娘でございます。」


やばい。

今俺ユーリアさんと話してる。

落ち着け。

「ちょっといまこいつ拗ねてるみたいで。すみません。」


ごめん。アメリア、拗ねてたの俺。


『ふーん。そういうこと。とりあえず乗ってあげるのじゃ』


鼻息勢いよく返事された。ちょっと不満そうだけど。


ありがとう!アメリア!目で感謝を伝える。



「ご挨拶申し遅れました。わたくし、王妃宮侍女見習い、イーリスフォン・トーマス侯爵が娘、ユーリアと申します。」



アメリアがグルルルと苦笑いしながら

『知ってるわよ★さあ、ゼノス!頑張るのよ!こ・く・は・く 

!』


「あ、あ、あの!、ここここコンヤクシャは?」


「…とにかく、竜宿舎はどちらでしょうか?参りましょう。」



スルーされたぁあああ!

『この娘、なかなか手強いかもしれないのぅ』


まだチャンスはある。

宿舎までの道のりは緊張でチラチラ見ることしかできない。

近い。

いい匂いする気がする。


『作成の練り直しね。宿舎でどうしようかしら』


「よぉ!ゼノス!となりのべっぴんさんは婚約者かな?やっと捕まえたのかぁ。よかったな!!」


「だっだん団長!」

ゼノスが彼女にゾッコンなのは竜騎士団では周知の事実。


ただ、アメリアの暴走?として始末書提出は逃げられないだろうと頭をかかえるゼノスだった。


ただ、団長のおかげで宿舎でもう一度チャレンジできる気がする。


たとえ一時凌ぎの婚約者でも、成人の儀までに本気にさせてみせる。

本気を伝えたい。


応援してくれる竜姫アメリアのためにも。


*****




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