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かなり久しぶりの投稿になります。
継続して投稿していくつもりですが、仕事との兼ね合いもあり遅れる可能性もありますのでご容赦ください。
感想や意見等もらえますと幸いです。
ラグナロク―――それは今、俺が絶賛ハマリ中のVRMMO‐RPGの名前だ。
このゲームは5年ほど前にサービス開始となり、キャラクターメイキングや武器防具などの装備品、ギルドの拠点やNPCキャラクターの作成、ダンジョンなどのマップに非常に力を入れており、日本中で人気のゲームだった。
キャラクターメイキングは髪、目、鼻、口などの項目は初期で50種類。現在では200種類が選択でき、更に種族も豊富となっている。
種族は、ヒューマン、エルフ、ドワーフ、魔族、妖精族、獣人などが大きく分けてあり、魔族や獣人などはさらに細かく設定ができるようになっている。
武器や防具などのアイテム類は、運営側で設定してあるものだけでも軽く1000種類の外見があり、プレイヤー側で素材を使用して新たな装備を一から作ることもできるようになっている。
プレイヤーが作成をする場合、外見などは既存のデータを使用することが出来ず、プレイヤー自らが考えて作成をしなくてはいけない。
このシステムがこのゲームの中で一番の人気と言っても過言ではない。
プレイヤーの装備している物があまりにも不格好だと周りのプレイヤーたちから笑われてしまう。
装備に拘っているプレイヤーは数日掛けて作成をする者もおり、そのプレイヤーごとに装備品の風格が変わってくる。
そして、既存の装備品よりもプレイヤーたちが新規で作成をした方が圧倒的に性能が良いというのが、このゲームの厭らしい所としても装備品についてだ。
ギルドの拠点もこのゲームの見どころだ。
各ギルドによって、拠点の中身は全く違ってくる。
それは、毎月行われているギルド戦によるものだ。
このギルド戦は各ギルドの拠点同士を繋げて、全てのプレイヤーを倒した方が勝利という内容のものだ。
要塞化するギルドもあれば、ダンジョンのようにするギルドもある。
そして、拠点の作り方にもある制約が設定されており、孤立している空間は作ることはできるが、ギルド戦中は敵味方関係なくその空間に入ることはできなくなる。
また、ギルドのレベルというものがあり、そのレベルが上がるにつれて区画を増やしていけるようになる。
区画の方も100種類以上ある中から選べるようになっており、その中にはアンデット系統に作用するフィールドや、職業によって影響を及ぼすフィールドなどもある。
NPCの作成についてはキャラクターメイキングと同じ要領だが、種族の種類が圧倒的に多くなる。
キャラクターメイキングは基本的に人型の種族しか選べないが、NPCの作成にはダンジョンなどで出てくるモンスターの殆どが追加で選べるようになっている。
例外としては、イベント限定のモンスターやダンジョンの固有名の付くようなボスキャラの容姿は選べないようになっている。
また、NPCを作成するには、期間限定のダンジョンなどで1%以下のドロップ率のメダルを100枚集めそのメダルと交換をすることで1枠増やすことができ、メダルが無いときはゲームらしく課金という手段でも増やせる。
俺はこのNPCの作成に一番拘っていた。
毎月イベントダンジョンが解放されるが、期間が1週間しかなく、その内の3日間を俺は毎月有給休暇を取って、不眠不休でメダルのドロップを求めて探索していた。
俺がこのゲームを始めてからギルドを立ち上げるまでには2年を費やし、それまでは他のギルドなどにも出入りしてギルドの運営方法や戦闘の技術などを学んでいた。
ギルドを立ち上げた時に最初のポイントを振り分けて5体を作成し、それ以降は毎月2体を少なくても作成していた。
作成したキャラはLv.1でギルド拠点の一番奥に自動的に配置される。
このNPCは当然自動的にレベルが上がる訳では無い。
プレイヤーがダンジョンなどに連れて行き、そこでレベル上げをするか、ギルド戦で相手プレイヤーを倒さなくてはいけない。
しかも、一度に連れて行けるのは3体までだ。
同じパーティーに入れてでないとプレイヤーが倒したモンスターの経験値が共有できないためであり、そもそもパーティーに入れていないと拠点の外に連れていけないという事もある。
そのため、他のギルドではレベルを上限まで極めることは非常に珍しい。
ギルドメンバーで手分けをしてレベル上げをするくらいなら、プレイヤー自身の装備を整えるためにボスモンスターの討伐を優先させる者が多いからだ。
ギルドメンバーの装備だけではなく、NPCの装備まで揃えるのはなかなかに時間がかかり、いくらガチ勢と言われていても社会人であればインする時間にも限りがああるからだ。
だが、当時の俺のギルドは少数精鋭と言っていいのか分からないが、ギルドメンバーの上限が100人に対して50人という少なさだった。
ギルドメンバーの人数はギルド戦では大きく影響してくる。
ギルド戦は週間、月間、年間でランキング化されており、そのランキングの上位に入ればかなりいいボーナスももらえるため、ギルド戦はガチ勢が多い。
そのガチ勢がメンバー上限まで多いギルドも少なくは無い。
そんなギルドに勝つために俺たちのギルドはNPCに頼っている。
NPCの戦闘はプレイヤーが指示を出すか、予め決められた行動範囲に即して行われる。
自動的なコマンドを設定しておけばプレイヤーは戦闘に集中でき、プレイヤー1人に対してNPCを2体送れば、相性が悪くなければ時間稼ぎだけでなく運が良ければプレイヤーを倒すこともできる。
俺はそのためにNPCにも力を注いできたという事だ。
周りの奴らはNPCを連れていても細かな操作はせずに最低限の壁として連れている者が多かった。
一緒にやっていたギルメンからは俺が異常だと言われていたが、俺自身はそんなことは無いと思っている。
自分が戦闘を行っていても常に戦っている訳では無く、少しでも間合いが離れるタイミングがありその時に指示を出せるはずなんだが、他の奴らはそれができないらしい。
そういった事もあって俺はNPC自身の戦闘能力を上げたり、ギルドの生産職が少なく手が回らないと理由もあり生産職を取らせたNPCの育成をしていた。
最後にダンジョンなどのマップには運営会社の力の入れ様が良く伝わってくる。
よくあるオンラインゲームだと、マップの切り替わりが非常に多い。
しかし、このゲームはマップの切り替わりというものがほとんど存在しない。
切り替わりがあるのは転移魔方陣を使った際や、イベントダンジョンなどへ入る際くらいで、街や拠点などとモンスターがPOPされるフィールドが広大なマップで繋がっており、現実かと間違えるようなクオリティになっている。
街や拠点などのオブジェクトが破壊された時にも破片の飛び方もリアルで、時間が経つと自然に戻る。
モンスターなどの攻撃のエフェクトも多様になっており、使い回しのエフェクトが幾度も行われたアップデートで少なくなっていき、それもこのゲームが人気になった理由もあると思う。
その他にもプレイヤーが夢中になるような要素が運営によって提供されていた。
俺はこのゲームがサービス開始した時から5年間、毎日休み無く日課となっているボス狩りを行っていた時の事だ。
「よっしゃー!ようやく落としたー!!」
俺は今、魔獣の洞窟というダンジョンの最下層に来ていた。
そこで今日何度目になるのか分からないボスの討伐を終えたところだ。
今日でイベントが最終日という事で、作りたかったイベント限定の武器用素材を集めていた。
今まで何度もドロップ目的で来ていたが、一度も目的の素材を入手したことは無かった。
俺はようやく悲願の達成ができると思い、拠点への転移魔法を使う。
一瞬で周囲の景色が変わり、そこは見慣れた拠点の鍛冶スペースに到着した。
鍛冶スペースには様々な器具や設備が揃っており、プレイヤー自身で一から武器や防具を作ることができるようになっている。というよりも、できるように俺が揃えた。
ギルドの拠点なのに、何故俺が揃えたのかというと、鍛冶をしてみたかったからだ。
この鍛冶スペースを使うのはギルドの中でも俺だけだ。
他のメンバーはどうしているのかというと、鍛冶スペースの他に錬金スペースも作っており、そちらの方を使っている。
正直に言うと、鍛冶スペースを使うよりも錬金スペースを使った方が何かと効率がいい。
錬金スペースの方がギルドの倉庫に近いため、何を作るにしても楽で、鍛冶を行うよりも錬金を行った方が早く、イメージ通りの物も作りやすいという利点がある。
では、何故鍛冶スペースを使うのかというと、それは単純に俺の意地だ。
鍛冶スペースは錬金スペースよりも後に作られ、作るときにはギルドの仲間から猛烈に反対をされた。
しかし、そこは俺の持っているギルドマスターの権限で無理矢理押し通した。
周りのメンバーからは呆れられたが⋯⋯。
だが、俺も馬鹿ではない。
鍛冶には時間がかかるが、それは鍛冶のスキルを取っていないからだ。
つまり鍛冶のスキルを取っている者が行えば、それほど時間はかからないだろうと考え、NPCを数体鍛冶スキル持ちにしており、この鍛冶スペースに常駐させている。
そのNPCに作成を手伝わせれば作業の効率が一気によくなる。
ただし、NPCは鍛冶スキルを持たせたことで、若干戦闘職よりも劣るステータスになってしまったが、そこは気にしてはいけない。
―――早速、武器を作ってみた。
見た目はただの金属の刀だが、性能は驚く程高い。
まず、全ステータスの50%上昇。
これが一番デカイ!
更に、魔術耐性も闇以外の全てに対して有効で、魔獣系統や獣人への攻撃時に追加ダメージなどのプラスもある。
まあ、使った素材がかなり希少なものになっているので、そこは当たり前だと思う。
刀の外観は、刀身が1m程で少し赤みがかった銀色をしており、光の反射具合が非常にカッコイイ。
「渾身の出来ですが、ご満足頂けましたか?」
「ああ、凄くカッコイイな。」
「それは良かったです。」
俺は渾身の出来の刀を見せようと、ギルドメンバーが集まっているはずのギルド拠点の一番奥、集会所のあるエリアに移動した。
ギルド拠点の一番奥のエリアを目指して移動していると、普段ではありえないようなことに気が付く。
NPCが動き回っているのは何も問題は無いのだが、俺が近くを通ると全員が跪き、俺が通り過ぎると暫くしてから再度動き出す。
そんなことがずっと続いた。
恐らく、ギルドメンバーの悪戯か何かだろうと考えていた俺はとうとう目的の場所に辿り着いた。
「おい!誰だ、NPCの設定を勝手に弄ったのは!」
そう言って、集会所の扉を開けて中で待っている仲間に声を掛ける⋯⋯。―――筈だったのだが、扉を開けた先には誰もおらず、無人の机や椅子があるだけだった。
(ん?まだ誰も来てないのか?)
部屋の中は、会議室のような机を四角く並べ、ゆったりと座れるドラゴンの革製の椅子が並んでいる。
床には赤い絨毯を敷き、壁には何の絵なのか分からないようなものが飾ってある。
俺は不思議に思いながらも、定位置の一番奥の席に座る。
―――どれくらい待っただろうか?
あれから一向に集会所の扉が開く気配がない。
俺は不意に時間を確認するためにメニュー画面を開く。
(明日は仕事だから日付変わるくらいにはログアウトして早く寝ないとなあ⋯⋯。)
俺はメニュー画面の時刻の表記されている箇所を見て思考が止まる。
何故なら、時間はすでに1時を過ぎていたからだ。
「うわ!もうこんな時間かよ…….。」
俺は結局誰も来なかったかと思いながら、明日に備えて寝るためにログアウトをしようとして「ログアウト。」と言った。
しかし、一向に景色は変わらない。
(おかしいな、ログアウトするときは徐々に視界が暗くなっていくはずなんだが⋯⋯。いや、それ以前にログアウトにならない?)
俺はなぜログアウトしないのか考えた。
(システムのエラーか?)
などとこの時の俺は思ったのだが、数分後にその考えを改めなくてはいけないとは思いもしなかった。