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第5話 私とお兄ちゃんとお姉ちゃん

「というわけだけど、どう?和葉(かずは)ちゃん」


 その言葉に、私はビクっとなる。


「お兄ちゃん、鋭すぎだよ」


 見えづらいところに、隠れたつもりだったのに。


和美(かずみ)の後を尾行してたのが見えたからね」


 うーん、そこか。失敗、失敗。


「でも、お兄ちゃん。そこは知らない振りをして上げた方が良かったよ」


 その証拠に、お姉ちゃんがぷるぷると身体を震わせている。

 お兄ちゃんは鋭いんだけど、感性がずれてると思う。


「まあ、僕も、少しは恥ずかしかったんだけど。その方が丸く収まるかな、と」


 やっぱり、お兄ちゃんは頭のネジがどっか外れてる。


「お姉ちゃん、これから、苦労しそうだね。色々と」


 お似合いだと思うけど、肝心なところで女心を理解してくれなさそう。


「もういいです。泰介(たいすけ)さんはそういう人ですから」


 あらら。お姉ちゃんはもう諦めちゃった。


「うーん。僕が、そんな朴念仁みたいなこと言われるのは不本意なんだけど……」


「朴念仁なんじゃなくて、お兄ちゃんがずれてるの!色々と!」


 主に、告白の場面を妹に見られても気にしないところとか。


「そこは努力するよ。でも、改めてありがとう。和葉ちゃん」


 まっすぐに目を見て、お礼を言ってくれる。

 こういうところは、いいんだけど……。


「それより、お姉ちゃんの方見てあげてください。私は帰ります」


 いい加減、邪魔し過ぎた。これじゃ、お邪魔虫になっちゃう。


「そっか、じゃあまた後でね」


 手をひらひらと振ってくる。


「和葉も、今回はありがとう。チキンな私だけじゃ、無理だったよ」


 お姉ちゃんも自分がチキンだという自覚あったんだ。

 でも、ちゃんと二人の力になれたのなら良かった。


「どういたしまして、お姉ちゃん」


 元々、やんちゃな私の面倒を見てくれた二人への恩返しのつもりだった。

 じれったかったのも本当だけど、二人が好きだから、幸せで居てほしかった。

 本当に、ただそれだけの話。


「じゃあ、二人とも、お幸せにー。って言わなくても、勝手に幸せになるよね」


 そんな私の言葉に、兄と姉は目を見合わせて笑っている。ほんと、お似合いだ。

 そして、私は公園から立ち去った。


「私も、いい人、見つかるかな……」


 そんな事を一人、空に向けてつぶやいた。


◇◇◇◇


 そうして、私とお兄ちゃんとお姉ちゃんの関係は少し変わった。

 そう思ったのに……。


「泰介。この服、私に似合いません?」


 何やら、新しいお洋服を彼氏たるお兄ちゃんに見せている。

 こっちとしては、最初、邪魔してるんじゃないかと思っていた。

 だって、恋人同士だよ?なんで、私が居るの?


「似合う似合う。でも、もうちょっと明るい色の方がいいかな」


 仲睦まじい恋人同士な会話を交わす二人。

 あれから、二人でデートに出かけることが増えたんだけど。

 相変わらず、時々、私が誘われる。


「和葉はどう思う?この服」


 見せられたのは、春もののワンピース。

 でも……


「お兄ちゃんと同じく。ちょっと色が暗いよ」


 昔から、どうも、地味めな色の服を選んでしまうところが、この姉にはあった。

 うちの制服に慣れてしまったせいじゃないかと思いたくなる。


「うーん。じゃあ、色違いの、いくつか試着してみるねー」


 そう言って、軽やかな声で試着室に再び入ってしまう。


「お兄ちゃんはさ、どう思ってるの?デートに彼女の妹とか」


 お兄ちゃんの事だから、別にいいんじゃない?とか言いそう。


「うーん。もちろん、二人きりの時間はちゃんととってるよ。でも、和葉ちゃんも可愛い妹だから、除け者にはしたくないんだ」


 その言葉に、なんだか、私の中に暖かな気持ちが広がる。

 単にずれてるだけだと思ってたけど、私の事も大切に思ってくれてたんだ。

 とっても嬉しい。


「いつか、いい相手が見つかるのかなあ」


 未だに、そんな相手には巡り合えていないのだけど。


「和葉ちゃんなら、きっと見つかるよ。あ、でも。和葉ちゃんが変な男に引っかからないか、心配だな」


 ほんとに、お兄ちゃんのような台詞。


 ふと、お兄ちゃんが彼氏だったら……と想像してみる。

 でも、無理だ。このお兄ちゃんとキャッキャウフフしてる私が想像できない。

 きっと、私の中で本当に彼はお兄ちゃんなんだろう。


「この色はどうですか?」


 と、試着室から出てきたお姉ちゃん。今度は白ワンピだ。


「今度は、色もあってるよ。うん、可愛いし、清純な感じ」


 うんうんと自分の彼女を褒め称えるお兄ちゃん。


「も、もう。泰介ったら、ストレートに褒められると、照れます!」


 顔を真っ赤にしているお姉ちゃん。

 そして、その様を見てニヤけているお兄ちゃん。


「そういう風に照れてるのも可愛いよ、和美」


 また、褒め言葉を浴びせかけるお兄ちゃん。

 こういうところもストレートだ。


 でも、イチャイチャの現場を見せられる妹の身にもなって欲しい。

 少しだけ、げんなりしてしまう。

 きっと、これからもこんな風に見せつけられるんだろうし。

 もう、爆発しろ!


 でも-


 二人にはずっと幸せで居てほしいな、と、素直にそう思える。

 私に大事なことを教えてくれた兄。

 そして、なんだかんだと私に甘い姉。

 どちらも、とっても大切な人だ。


 だから、私は空に向けて祈る。


(ずっと、二人が幸せでありますように)

というわけで、これにてお話は終了です。

彼女の妹のお節介から始まって、結果的に、「お互いに答えがわかってる状況での告白」

という珍妙な状況でいたが、どうだったでしょうか。


面白かったら、ブクマや評価、感想をいただけると、嬉しいです。 m(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 恋人同士の可愛い会話がいいなと思いました。素敵なカップルの様子が読めて楽しかったです。
[一言] お疲れ様です。 妹は誰にとっても(自分自身にとっても)妹でしたね。まあ、平和だ。 だけど二人は今一つ恋人感がない。もう家族だねえ。幼馴染カップルの宿命? ところで、彼女はなんで日記を書いて…
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