表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

1.拾われる迷宮の子

遥かな遙です。気ままに書いていきたいと思います。

一団の前に大きな扉がたたずんでいる。


「この先が最深部か」

「おそらく…」

「団員は?」

「負傷している者もいますが、重傷者はいません」

「よし、入るぞ」


扉に手を触れると、ガシャンという音と共に扉が開いていく。中から漏れてくる光が眩しく、皆一様に目を閉じた。


光が収まっていき目を開くと────


「…子供?」


中の部屋には神々しい台座と、その上で綺麗な布に包まれ、すやすやと眠る赤子がいた。


「まだ赤子ではないか…しかし…いったいなぜ…」



「団長、外に繋がる転移魔方陣が見つかりました。この迷宮の最深部はここで間違いありません」


理由をあれこれ考えているうちに部屋の確認を任せていた団員が戻ってくる。


「そうか、よくやった。……なあ、俺はこの子をどうするべきだと思う」

「放置が得策でしょう。先に言っておきますが、連れて帰るなどもってのほかですからね」

「そうしようと思ってるんだが…」

「いけません、迷宮最深部に何の試練もないのは異例の事態です。その赤子に何か呪いがかかっていてもおかしくありません」

「それは承知の上だ。それに…子は宝だっていうし、案外この迷宮の宝かもしれない」

「その子が外で暴れだす可能性だって──」

「その時は、俺が何とかするさ」

「もう少し真剣に考えてください」

「悪いがもう決めた、何かあったらよろしく頼む」


そういって団長───リオン・エウリュアールは転移魔方陣を踏んだ。


「まっ──てくださ…い」


そんな彼女、副団長───アトラ・カディアの言葉はあと一歩届かなかった。


「また団長が何かやらかしたのか」

「まあ、いつものことだろ」

「アトラもあきらめろ~」

「ですが…」

「とりあえずみんな無事なんだ、いいじゃねか、今夜は飲むぞ!」

「「「おー」」」

「なんでみんなこうなのよ…」


団員が次々と帰還していき、その喧噪で彼女の呟きはかき消された。周りの言う通り、団長の暴走はいつものことなのである。そのたびにアトラは気が気でなくなるのであった。



外に出ると日は落ちていた。迷宮内の時間の流れは外の世界より早く、迷宮によって誤差もある。そのため外に出たときに真っ先に時間を確認する。先に出ていた団長が確認を済ませたようだ。どうやら今回の探索期間は一週間と、迷宮内での時間とさほど変わらないタイプのようだ。



団員全員が迷宮を出ると、大きな音を立てて迷宮が崩壊した。これで三つ目、王国最強と呼び声高い『オリュンポス探索団』の迷宮攻略数がまた一つ増えた瞬間であった。


「一番近い町はどこだ!」

「酒場を探せ!」

「団長のおごりだー!」


迷宮攻略を達成した後はたいてい宴会が開かれる。近くの町の酒場で一晩中飲み明かすのだ。翌日のことなど考えず、迷宮での苦労や発見、宝の話を肴に酒を飲むことは彼らにとって一番の幸福といっても過言ではないだろう。そんな中、悩みふけっている男がいた、リオンである。


「どうしたんですか。今更後悔しても遅いですよ────団長?」


そうアトラが声をかけても全く気付かない団長。団員達もそれを見て驚いている。まさか本当に呪いをかけられてしまったのだろうか。その状況が伝わっていき、あたりが静まった。


「よし」


団長がそういった。何があったのかと団員達は団長の次の言葉を待つ。



「アレスだ、アレスにしよう。お前は今日からアレスだ!」



そういって子どもを抱え上げた。どうやら拾った子供の名前を考えていたらしい。一瞬の静寂の後、またさっきのように騒ぎ出す団員達。皆、子供のことで頭がいっぱいの団長に野次を飛ばしている。


「心配した私がばかみたい…」

「どうしたんだ?」

「何でもないです!!」


急に不機嫌になったアトラ、そんな彼女に首をかしげるリオン、それを見て団員達は皆大笑いしたのであった。






次回からアレス主体の物語が始まります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ