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史上最強の魔法少女

 慢心。そう、俺達は慢心していた……


「もう私達の事は気にしなくて良いから封印して!」


 氷の魔女により柚が殺され、清美は咎落ちし紅炎の魔女となった。これにより一葉、いのりが次々殺され、俺も器にしていた猫の体を大破された。


「駄目だ! 清美は仕方ないにしても、一葉やいのり達は連れて帰る!」


 柚、一葉、いのり。この三人はもうすでに死んでしまっているが、せめて“ラフ”へと引き込んだ俺の責任として、家族の元へだけは返してあげたかった。


「そんな事出来るわけないでしょ! 次に攻撃されたらそれこそ私達終わりなんだよ!」


 清美が紅炎の魔女と化した事により、氷の魔女は標的を俺達から清美に移した。それでも今俺達が下手に動けば、二体の魔女は俺達を排除しようとするだろう。


「そんな事は分かってる! だけどっ!」

「だけどじゃない! 私達は最初からこうなる事くらい覚悟してたんだから!」


 柚が加わり五人になってからは、このチームは正に破竹の勢いで連勝を飾っていた。そんな慢心が格上の相手、氷の魔女へと挑む愚行を働いた。それは本来なら俺の監督責任だ。だが舞子はそんな俺を咎める事無く覚悟を口にした。


「……なら! お前だけでも連れて行く!」


 舞子だけでも連れ帰り、新たなラフを加え再戦。とは今の俺には無かった。ただせめて、せめてもの償いとして舞子だけでも連れ帰りたいという弱さだった。


「それはダメ! 私達はそんな覚悟でここにいない! 分かるでしょう!」


 分かっていた。彼女たちは今まで育てて来たどのラフよりも逞しく、強かった。

 魔女の正体を知ったときも誰一人辞めるとは言わず、その罪を背負い使命を果たすと言った。いのりが大怪我を負った時も全員で支えると言った。そんな彼女たちが仲間を見捨てるなど言うはずがないのは分かっていた。それは分かっていたのに、俺だけが何も知らなかった。


 天使であり、彼女たちの導き手のはずだったのに、いつの間にか導かれていた事を知り、涙が溢れた。


「さぁ早くこの空間を閉じて!」


 ラフを導く俺のような天使は、魔女と戦えるだけの力は無い。しかし唯一の対抗手段として、愛の女神から魔女が破る事の出来ない空間封鎖の力を与えられる。それは本来ならラフである彼女たちには教えないのだが、俺達の関係はそこまで深いものになっていた。


「…………」


 その絆が決断を許さなかった。


「何してんの! 早く! もしこのまま私達までやられたら、誰が清美を止めてくれるの!」


 舞子はただ絆という想いから四人を置いては逃げられないと言っているのだと思っていた。だが清美を止めるという言葉に、まだ五人は戦っているのだと知ると、最もしっかりしなければならない俺が脆弱でどうするという思いに駆られた。


「……分かった。必ず、必ず助けを呼んでくる!」


 必死になって絞り出した言葉には、希望は無かった。俺がこの空間を閉じて、再び新たなラフを連れ戻っても、その頃には舞子は生きてはいないだろう。それでもそう答えなければ、俺はもう存在する意味は無い。


「ありがとう」


 悔しさで歯を食いしばる俺に送られた舞子の声は、涙腺の堰を簡単に壊した。


「さぁ行って。今度はもっと良い子に出会えるはずだから」


 もう舞子達以上のラフには出会う事は無いだろう。やっと出会う事が出来た最高の彼女たちとの別れを、こんな形にしてしまった自分の愚かさを恨んだ。


「すまん舞子……すまん……」

「泣いてる暇なんてないよ! 助けを呼びに行くなら早くして!」

「あぁ……すぐ行く」


 もっと舞子達の傍に居たかった。それでもここが限界だと分かると、空間を閉じるための魔法陣を展開した。するとこれに反応した二体の魔女が交戦中にも関わらず、こちらを標的にして襲い掛かって来た。


「早く行って!」


 本来ならもう少しだけ彼女達との最後の時間を惜しみたかったが、その時間さえ与えて貰えなかった俺は、即座に空間を閉じた。

 徐々に狭まる黒い空間、消える視界、遠ざかる音。その真ん中には舞子の後姿だけが残り、愛おしい。彼女たちは俺がラフに誘わなければ、こんな哀れな最後を迎えることは無かった。

 後悔しかなかった。だが最後まで見ていた舞子が、空間が閉じる瞬間俺の方を振り向き、歯を見せニヤッと笑った。

 その瞬間、必ず舞子達以上のラフを連れ、ここに舞い戻る事を誓った。


 ――


「リーパー、この程度では相手になりません! 私達に遠慮は要らないのでもっと強くしてもらっても構いませんよ! ねぇヒー?」

「そうですね。いくら私達が初めてだからと言っても、手加減し過ぎです」

「そうですよ! こう見えて私達は数多くの魔法少女アニメを見て来たんですよ! もはや私達はベテラン魔法少女と言っても過言ではありません!」

「え? ……あ、あぁ……そうなの……」


 跡形もなく消し飛んだ疑似魔女。大きく抉り取られた大地。辺りには熱を帯びるほどの衝撃波が焦土を形成し、突き抜けた衝撃は雲にまで丸い風穴を開けていた。

 新たに見つけた双子姉妹のラフは、尋常じゃなかった。


 適当に投稿します。

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