嗚呼、念願の異世界転生?
なろうラジオ大賞用小説第十三弾。
「ようこそ転生の間へ!」
目が覚めるとハイテンションな声が耳に届いた。
声のした方に目を向けると、そこにいたのはボブカットにした水色の髪が特徴的なロリっ娘ツルペタバニーガールだった。
なおバニーガールといっても、あの露出度が高い扇情的な服装をした女性ではなく頭にウサ耳が生えた紳士服の少女だが。
「下界での行いが天界で評価され、貴方は異世界へと転生する権利を得ました! ドンドコパフパフ~♪」
「……え、という事は!?」
最初の台詞でまさかと思ったが、やっぱり!?
「貴方にはこれから、持ちたい特殊能力を選んでもらった後、異世界に行って頂きます!」
「ぃよっっっっしゃあぁあああああ!!!!!!」
まさかトラックにひかれるんじゃなくて、逆に車に乗って電柱にぶつかる事故を起こして転生ができるとは!!
「さて、それでは特殊能力の方ですが――」
※
「ミス・センゴク、なんとか貴女のお父上の脳波は安定しています。成功です」
「よろしい。そのまま監視を続けなさい」
米国脳科学者が、とある日本人女性センゴクに話しかけた。
目の前にあるのは、水で満ちた家庭用サイズの水槽。
そしてその水の中にある、電極をあちこちにつけた――脳みそ。
「まったく。小さい頃の私や弟妹がアニメや漫画を見る度に『何だこの駄作は』や『昔のアニメは良作揃いだった』と、大声で散々罵倒して、私達からアニメや漫画を見る喜びを奪って……最終的に私達は、オタク文化に触れようとする度に吐き気を催すようになったというのに。最後は呆気なかったわねぇ、お父サマ?」
かつて父親の一部だった脳みそが入った水槽に触れ、センゴクは語りかけた。
「でも安心して。貴方はもう再起不能なくらい肉体がボロボロになっちゃったけど幸運にも脳だけは無事だったって。だからこれからは――」
センゴクは後ろを向いた。
そこには脳みそにつけた電極の終点であるスーパーコンピューターがあった。
「私達の生活の為に。そして私達への罪滅ぼしとして。かろうじて生きて、年金という収入を私達に与え続けなさい。代わりに貴方には……貴方の生きてた時代から始まり、最近ようやく完結した異世界転生ものの、疑似体験を永遠にさせてあげるから」
時は二〇XX年。
人類は脳みそだけに成り果てながらも夢を見続けられる科学の力を手に入れた。
果たしてそれが、人類が本当の意味で待ち望んでいた科学の力なのかどうか……それはもはや彼ら自身にも分からなかった。
もしかしたら、似たようなパターンの話があるかもしれません。
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