チンピラの仕事 ②
「はっ……はあ!?何なんだよお前!」
「俺たちは冒険者登録しに来ただけだぞ!?」
少し冷静さを取り戻したのか男2人も言い返してきた、しかし冷や汗が流れているのが見える。
表情にも少し恐怖の色が見えているから俺の事を怖がっているのは間違いないだろう。
「俺が誰だってどうでもいいだろうが!!ここはテメェらが来るような場所じゃねえって言ってんだろうが!!分かったら有り金置いて出てけゴラァ!!」
「な……ふざけんなよ!?俺たちは村で1番強かった!しかもギルドは誰だって登録できるんじゃないのか!?」
「なあ!あんたも何か言ってくれよ!あいつなんかギルドにいる資格ないだろ!?」
背が少し高く…175cmくらいだろうか?くらいの奴が俺に言い返してくる。全くもって正論だ。
もう1人の平均的な背丈…165くらいか?の男は1番近くの受付の女に助けを求めて叫んだ。
が、このギルドにおいてそれは間違いだ。何故なら……
「いえ、当ギルドにおいては登録前の人に関しては一切の関与をしません。」
といって一呼吸置くと、男2人を更に絶望させる一言を放った。
「頑張ってください」
その一言はもはやこの場所に助けがない事を表していた。
助けを求めた男は唖然としている。軽くパニックになっているのは間違いない。
さて、この2人なら次にする行動はほぼ決まっている。
「何なんだよ……何なんだよぉぉおおおおお!!!!」
「あっおい!マルク!!馬鹿野郎!!」
ゴキャッ
(やっぱりなあ……もうこのパターンは見慣れたもんだ)
俺の拳は175くらいの…マルクって呼ばれてたか?そいつの頬に突き刺さった。
再度ギルドが静寂に包まれる。俺は改めて殴ってない方に言った。
「金を置いて出てけ。」
マルクじゃない方には俺の顔がまるで怒り狂ったドラゴンを目の前にしたように見えただろう(以前俺に殴られた奴が言っていた)
マルクじゃない方は頬を少し上げ「ヒヒッ」と謎の声を出したかと思うと「ひぎゃあああああああああああ」と言ってマルクを担いで逃げて行った。
「おいおいユドル!ありゃあ骨までいったんじゃあねえか?」
「またユドルにやられた奴が増えたな!これに懲りるかまた来るか楽しみだ!」
よく見る面子が俺に声をかけてくる。全然ギルドの人達が止めに入らなかった上、常連も軽く声をかけてくるのには理由がある。
新しく冒険者登録しようとする奴は基本全員この道を通るのだ。
「骨まではいってねーよ……あっクソッ、アイツら金置いて行かなかった。今日も何か受けなきゃいけねえ」
「ハッハッハ!また派手にやったな!で?あいつらの適正はなんだったんだ?」
「ああ…マルクって言われてた奴は『農家』じゃない方は『建築士』が高かった。誰か見つけたら紹介してやってくれねえか、マルクって奴は他にも道はありそうだがじゃない方はいい建築士になる。」
「おっ!なら俺が探しといてやろう!知り合いが大工だからツテがある。」
こんな会話をしてる間にももうギルドはいつもの賑やかさになっていた。
さて、俺の出番の意味が分かっただろうか。
冒険者になれるかどうか最初の壁として立ち塞がること。
これがある意味俺の仕事だ。
まあ金なんて置いていくやつはあんまりいないからいい仕事ではないな。
さて、この世界では『スキル』がある。
産まれた時から手に入れられるものは決まっているらしいが、産まれた時からもう持っているものと突然身につくもの、努力で手に入れられるものがある。
例えば『剣術』は頑張れば身につく。まあ才能にもよるが。
そしてスキルにはレベルがあり、1~5まである。
まあ5になるのは一般的には不可能だ。
で、その一般的には不可能であるレベル5のスキルを持っているのが俺。そのスキルは……
『適正検査Lv5』
まあ名前の通り、これでさっきの奴らがどんな職業になればいいかザックに言えたわけだ。
さて、自分語りはこの辺でそろそろ金を稼ぎに行こうか、いいクエストがあるといいがな。
『適正検査Lv5』
あらゆる生物において、どのような職業を目指しているのかが分かる。また、その人にどのような職業が合っているかも分かる。
ちなみに、いわゆる『天職』がある場合一生変わることは無いがそうでは無いものは生活や修行等によって変わることがある。