第九話 お話し
着替えた後、昇降口にいた二人を電話で呼びつけ話が始まった。
「とにかくなぜここなのかと、これは何だ?」
悟は近くに転がっていた拳銃を持ち上げて言った。
「ベレッタM92。アメリカ軍でも正式採用されている、オートマチック式の拳銃だ。」
さも当たり前のように龍也は言った。
「こんな拳銃がこんなところにあるなんて……すごい。」
悟は目を輝かせだした。
「これが本物の拳銃か!すごい!こんな風にできてるんだな!!」
どんどん違うような方向に流れていく。
「あの、なんでこんなものがあるのかはきかないんですか?」
「別に。あの理事長が何をもっていようと不思議じゃないし。」
悟は当たり前のように言った。
「オレが何だって。」
すごい言われようの柳理事長が戻ってきた。
「佐奈はどこだ?」
悟と一緒に来たはずなのだが姿が見えない。
「ここだー!!」
柳の机の陰から飛び出してきた。
「これで全員そろったな。」
すべてを受け流し、龍也が話を始めようとした。
「あの、佐奈ちゃんはほっといていいんですか。」
「そうだ!突っ込みなしではボケも映えないぞ!」
行き場をなくしたボケは何となく空中を待っているようだった。
「なんでやねん。では、話を始める。」
「俺から見ればお前の発言が、なんでやねん!!」
「最初に俺の力について話をする。」
完璧なスルーで話は本当に始まった。
「この世には二種類の人間がいる。普通の人間と宣託者と呼ばれる人間だ。」
「洗濯者?服をきれいにする人か?」
「違うよ悟くん、選択者だよ。四択の回答をする人たちだよ。」
完全に二人とも的外れな会話をしている。
「……お前ら、この世の人間を洗濯する人間や、四択の回答をする人間に分けるつもりなのか?」
「「面白いから大丈夫」」
悟と佐奈は同時に言った。龍也はため息しか出なかった。
「あの、神の宣託とかの宣託じゃないですか?」
「それが正しい。」
龍也は何とか話を続けた。
「そして、俺はその中でもこう言われている……」
ゴロゴロ……ドガーン!!
「……ちょっとストップだ。」
龍也は話を止めた。そして後ろで機械をいじくっている柳を見た。
「暇なのはわかるが邪魔をするな。」
「てめぇらの話なんてものはオレにはわかりきってることなんだよ。はっきり言うが暇だ。」
「だからと言って、なぜ効果音をつける?」
「かなり深刻な感じになったろ。」
バギッ!!
龍也は近づいていくと、柳の隣の機会を踏みつぶしバラバラにした。そしてまた葵、悟、佐奈たちと向かい合った。
「……で、どこまで話したか?」
「こう言われている、のところまでです。」
葵に言われてそうだったなと、話を再開した。
「俺はその中でもこう言われている……契約者と。」
「その……。」
「ここまでだ。」
柳が間に割って入ってき、悟の言葉を遮った。
「どうしてなの?」
「もうこんな時間だ。」
時計の針は7時半を指していた。
「生徒に自分の仕事をさせて、こんな時間まで残すやつが言うセリフとはとうてい思えないが、まあ確かにこれくらいで切り上げたほうがいいだろ。続きは明日ということでいいな。」
悟は不満そうだったがうなずき、ほかの二人もうなずいた。
「明日こそは話してもらうからな!」
悟は去り際にこう残していった。龍也たちも葵を家に送り届けると自分の家に帰って行った。
ブーッ ブーッ
マナーモードに設定していた携帯が鳴りだした。
「はい。」
「すみません、こんな夜分遅くに、神岡です。」
電話の主は葵だった。
「珍しいな、こんな時間に電話するのは。」
時刻は午前1時を回ったぐらいで、普通の高校生なら電話やメールぐらいするだろうが、葵は極力相手の迷惑になりそうなことはしないので、こんな時間に電話などかけてくることは珍しかった。
「どうしたんだ、いったい?」
「あの、1つだけ確認しといてもよろしいですか。」
葵の声には少し力がこもっているようだった。
「ああ。何だ?」
「私も契約者になったんですか?」
「……」
龍也は黙ってしまった。気まずい沈黙は1分ほど続いたが、その間も葵は何も言うことなく、龍也の答えを待っていた。
「……そうだ。」
受話器の向こうから安堵の息かため息なのか、よくわからないが大きく息を吐いたような音がした。
「ありがとうございます。おやすみなさい。」
葵から電話は切られた。
「……寝るか。」
龍也も布団へと潜り込んだ。
「大滝龍也に接触があったようです。」
「そうか。」
「こちらはどうしますか?」
「大丈夫だ。」
「しかし……」
「大丈夫だ、心配するな。」
「……行き過ぎた発言お許しください。では、失礼します。」
「……おまえはいずれわがものとなる。それまで楽しませてくれよ、大滝龍也よ。」
どうも、テスト期間に死にかける、作者のヒッキーです。
難しいですね。でもこれでさわりです。次話は少し展開します。でもまだ一章。
では、また次で。




