第八話 契約
「えっ!?ここは?」
葵は真っ暗な空間の中にぽつんと立っていた。周りには何があるなど全く見えていない。
「ここは契約の間だ。」
声のほうを向くと、青色の淡い光で照らされたユニコーンの姿があった。ユニコーンの周りには4本の柱、足元には何かよくわからない文字が浮かんでいた。
「わが名はユニコーン。汝の強き思いにこたえてここにきた。」
「私の……思い?」
「汝が心の中の強い感情を感じた。汝は力を求めるか?」
葵は少し遠くを見て考えた。
「……その力があれば、大滝くんを助けることは出来ますか?」
「それは我にもわからない。」
淡い青色の光が少し揺らいだ。
「しかし、何もしなければ何も変わらない。それだけは我にもわかる。」
それを聞いて葵は決心を固めた。
「私はあなたの力を求めます。」
「ならば、汝の手を前に。」
言われたとおりに葵は手を前に出した。
「われの力を汝に分け与え、これを契約の証しとする。」
ユニコーンの目の青色が強くなり、契約の間は青色の光に包まれていった。
「おい、神岡!!」
「えっ?……戻ってきたんですか?」
「ああ、ここは現実世界だ。」
龍也は少しため息交じりで言った。
「さらばだ、我が契約主よ。」
ユニコーンはちりのようになってしまった。
「はぁ。」
「ごめんなさい。やっぱり力を受け取ってはだめでしたか?」
「いや、自分のふがいなさを嘆いているだけだ。」
「お前ら、私のこと忘れてないか?」
完全にかやの外となっていた三船が言った。
「……そういえばいたな。」
完全に忘れ去られていたようだ。
「お前ら、契約者が1人増えただけで、こっちの有利は変わらないんだぞ。」
確かに相変わらずの不利な状況は変わってないと言っていいだろう。
「しかも防御しかできないようだな。連続攻撃でつぶしてやるよ。」
三船は右手を上げようとした。
パンッ!パンッ!
どこからか爆竹を鳴らしたような音がし、三船の両腕は力なく垂れた。
「ぐっ!いったい誰だ!?」
「オレだよ。」
三船の後ろで柳が拳銃片手に立っていた。
「えっ!理事長!?なんで拳銃なんか持ってるんですか!?」
「おい、お前!何のつもりだ!」
三船はかなりキレ気味に言った。
「あ?てめえこそ人さまの土地で暴れるとはどういうつもりだ?」
柳はかなり余裕なようで、笑みすら浮かべている。
「お前、殺されたいのか!!」
「無理だな。どうせ手を上げないと力を使えないんだろ。」
三船は肩辺りを打たれており、とても手など上げれる状況ではなかった。
「……くそっ!」
柳の指摘を正しかったようで、何もしてこない。
「今なら見逃してやる、帰りな。」
三船は逃げて行ってしまった。
「理事長っていったい……」
「その前にこれを外したらどうだ。」
柳はバリアをたたきながら言った。
「え、ええと……どうすればいいんですか?」
「バリアを消すイメージを持つんだ。」
龍也に言われたとおりにすると、バリアが消えたような気がした。
「で、てめえらはいつまでラブラブでいるつもりだ?」
「え?あ……」
葵は龍也に囲むように抱かれたままであることに気付き、顔を真っ赤にした。
「あ、ああああああの、龍也くん、も、もう離れても……」
「すまない、神岡、下から、抜け出して、くれないか。」
龍也ははあはあ言いながら、何とか言った。
「え?はい。」
言われたとおりに神岡は下から抜け出した。すると昨日と同じように刀は消え、そのまま龍也は前に倒れた。
「!龍也くん!?」
「あーあ、こいつこんなにやられてたのか。」
柳は龍也の隣にきて、けがの様子を見た。
「……かなりひどいな。こんな状態で立っているのでも奇跡なのに、よく話までしやがる。」
冷静に考えてみれば、今まで普通に話していたから考えていなかったが龍也は右手と両足を貫かれていたのだ。当たり前といえば当たり前だろう。
柳は龍也の腕と足をしばった。
「だ、大丈夫なんですか?」
「とりあえずの止血はしたが、やばいことには変わりないだろ。」
「そんな。大滝くん!」
葵が龍也の体に触れた。すると淡い青色の光が出てきて、ゆっくりとだが龍也の傷がふさがった。
「……てめえ、こいつの傷を手でおおえ。」
「えっ!?」
「早くしろ!」
「はい!」
あわてて葵は龍也の傷をおおった。すると、少しずつだが確実に傷がふさがっていった。
「次はこっちだ!」
こうして龍也の右手と両足の傷はふさがった。
「ん……」
「大滝くん!!」
龍也はゆっくりと起き上がり傷を確認した。
「どうやって治したんだ?」
「こいつがやったんだ。」
柳は葵を指した。
「そうか。ありがとう、神岡。」
「え!ううん、どういたしまして。」
「立てるな?」
「ああ。」
龍也はゆっくりと立ち上がった。
「とにかくてめえら、理事長室に来な。」
「!!」
「大丈夫だ、神岡。もともと理事長室で話すつもりだったんだ。」
こわばった表情の神岡を見て、龍也はこういった。
「それに、てめえら着替えないとやばいだろ。」
龍也は当たり前として、葵も龍也の血が服についていた。
「あいつらは電話で呼ぶことにして、理事長室に向かおう。」
龍也にそう言われ、葵も理事長室に向かった。
どうも、テスト期間にゲームを借りる、作者のヒッキーです。
カッコ良くない龍也はきらいです。でもカッコ悪い。次話はずっと説明。
では次話で。




