第十六話 力
龍也は佐奈を抱えて大きく跳ぶと悟たちの側に降りた。
「すまん、遅くなった。」
「大丈夫ですか?」
「「た、助かった。」」
2人はほっと胸をなでおろした。しかし助けにきた2人は驚いてだろうか、目を丸くして驚いていた。
「龍也くん、あれって……」
「ああ。三船だ。」
その男はぼろぼろで分かりにくくはなっていたが昨日、龍也たちを襲ってきた三船並木だった。
「あの様子だと発狂でもしたんだな。」
「私も……」
「だめだ。」
「でもっ!」
「だめだ。」
そのときの龍也の横顔を葵は見た、そしてぞっとした。氷のように冷たい、まるで感情のない表情だった。
「大滝龍也……」
「俺ならここにいる!相手ぐらいしてやる!」
男―並木の目の焦点は龍也の一点に集まっていった。
「大滝龍也!!!」
今までとは比べ物にもならないほどの大量の土の槍が襲いかかってきた。しかし、龍也は刀を両手に出すと襲いかかってきた槍をあっさりと切り飛ばした。
「俺は二刀使うことは相手に敬意を示しているつもりだ。敬意を示すのは2種類だけ。それは本気にならないといけない相手と殺す相手だ。」
「大滝龍也!!!!」
さっきよりもさらに多くの槍が襲いかかってきたが、肝心の龍也が消えた。
「さらばだ。一輪!」
シュパッ!
「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」
後ろの3人は三船の断末魔に耳をふさぎ、目をつぶることさえ忘れて見ていた。草木は血に濡れながら静かに揺れていた。そして、龍也は血の降る中でただただ倒れていく三船を見ていた。
倒れた三船の腹にはアスタリスクのような傷が付いていた。
「さて、帰るか。」
龍也は何事もなかったかのように3人を見たが、3人はさっきのショックが大きすぎて固まっていた。誰も来ないことを分かってかそんな3人の横に龍也は座って復活を待った。
「りゅ、龍也くん……」
一番初めに意識的なものを取り戻したのは葵だった。しかしまだどこかうつろな目をしている。
「落ち着いたか?」
「ううん。でも無意識なままだといけないような気がしたから。」
「そうか。」
今度は2人で残りの2人が復活するのを待つことになった。沈黙なのにそれほど重いような気がしなかった。
「あれ?俺たちはどうなったっけ……」
ゆっくりと悟が起き上がった。まだうつろな目をしており、焦点もどこか会っていないようで、どこかあさっての方向を見ていた。
「やっと起きたか。」
「……あっ!!」
思い出したようで龍也を見て気まずそうにした。今度は正真正銘の重い沈黙というものが流れた。
「あの、どういうことですか?」
沈黙に耐えられなくなった葵が龍也にきいた。龍也は2人を見た。
「そのことについては家に帰ってからゆっくりと話したほうがいいだろ。だからさっさと復活して俺の家に行くぞ。」
「で、でも血が……」
龍也の体は全身血まみれ、2人の傷もすでに治してはいたが少し血が付いていた。このままだと警察に通報されかねない。
「まあ、誰かに言われても赤いペンキを被ったぐらい言っておけば問題ないだろ。」
「問題大ありな気がするよ。」
「数回これで乗り越えた。」
「ありえないだろっ!」
つっこみができるくらいまで悟は復活したようだ。
佐奈は龍也が背負って行き、びくびくしたりしながら4人はとりあえず龍也宅に向かっていった。
どうも、最近寝汗がひどい、作者のヒッキーです。
こっちの更新のほうは遅れていますが、できれば末長く見守ってください。次回はこれまでの真実。




