運命と異なるEND
こんにちわ、リルンです。
今回は8作目となります。短編小説です。現実恋愛&ファンタジーな感じの物です。
恋愛を一応描いてますが、所々残酷な描写もありますので、
苦手な方は回れ右、お願いします。
タイトル通り、運命を変えるために主人公が立ち上がるという感じです。
そしてこれは、実際、高校にて原稿で提出した小説です。それを若干修正した形で、持ってきました。
高校の時に作った話ですが、自分的にはかなり気に入っている話です。
それではどうぞ。
あんなことをしなければ……あたしがもっとしっかりしていれば……こんなことにはならなかったのに……。あたしの目の前で眠る貴方。もう目を開けることはない。人形のように動かない貴方。氷のように冷たく硬くなった体……。
「……どうすれば良かったの……?」
貴方の冷たい頬に触れる。あまりにも冷たいその頬は、あたしの体温を奪っていく――……。
〈END0 孤独〉
『なら、やり直してみる?』
もう一度やり直してみることにした。これで運命が変えられるのならと……。ふと気付くとそこは公園。ベンチの上で横たわっているよう。
「大丈夫か? 礼美」
声の主を見ると、そこには死んだはずの貴方……。
「へ……!?」
「へ!? じゃないよ……ったく。 お前、此処で倒れてたんだぞ?」
そう、あたしに言う貴方。そうは言うが、全く覚えていない。そりゃあそうだ。謎の存在がそのように設定したのだから。あたしはとりあえず、返事した。
「……そう……だったの……」
「本当に大丈夫か?」
「うん……。ありがとうね」
そう言って、あたしは起き上がる。
「…………」
沈黙が続いた。じれったくて、その沈黙を破ろうとすると
「礼美……無事で良かった……!」
貴方は急に抱き着いた。
「はうぅ!?」
「本当に……良かった……」
「……陸……」
名前を呼ばれた貴方――陸はずっとあたしを抱き締めたままだった。
~ストーリー1~
もうあんなENDは嫌だと考えるあたしだが、ENDを変えるにはどうすればいいか、分からなかった。まずはとりあえず、今まで通り過ごしてみようと考えた。
「なぁ、礼美。俺の家に来ないか?」
「えぇぇ!? ……えっと……その……」
「無理ならいいよ。急だしな……」
「ううん、行く! 行くよ、陸!」
あたしが慌てて答えると、陸はくすりと笑った。幸せだった。ある出来事が起きるまでは――――……。
ある日、出掛けようと外に出ると、家の扉に貼ってある多数の貼り紙を見つけた。
『あの男に寄る女、消えろ』
『陸を奪うなんて、最低』
『この街から出て行け!』
『お前は邪魔者』
「……。あたしはそんなに邪魔者なんだ……」
その思いのまま、あたしは陸のマンションへと向かった。陸のドアにも貼り紙があった。
「……! 酷い……誰がこんなことを……」
あたしは合鍵でドアを開けた。
「……陸? いる? あたし、礼美だよ」
「…………礼美か」
声が聞こえ、あたしは部屋に入った。
「……陸……。大丈夫……?」
「……俺、この世には必要のない存在だってさ……。そんなに俺は……邪魔者か……?」
「ううん、陸は邪魔者なんかじゃないよ。……邪魔者はあたしだよ……」
「……何?」
「……あたしの家にもたくさん貼り紙があった。はっきりと邪魔者だって書いてあったよ……。消えろとか……最低とか……」
「……お前は邪魔者なんかじゃない……。けど、俺もお前も皆にとっては邪魔者。……だから――――」
陸はあたしを押し倒し、あたしの首に手を当てた。陸の目は悲し気で暗かった。その表情から、あたしは陸が何をするつもりなのか、理解した。だけどそれは、とても悲しくて残酷なことだった。それでもあたしは陸の気持ちを察し、陸の力強い首に手を当てた。私の様子に陸は泣きながら笑い
「……ありがとな……分かってくれて」
そう言うと、首に当てる手の力を強めた。息苦しくなっていく中、あたしも力を入れた。するとふと、目の前が真っ黒に――――……。崩れ落ちる陸の姿。それがあたしの目に映った最後の光景だった――――……。
〈END1 心中〉
『やり直す? どうするの?』
謎の存在があたしに尋ねる。
「……このENDは確かに二人で息絶えたから、さっきよりはマシだけど……でも、やっぱり生きたいかな……?」
『まぁそうだよね。あ、忠告なんだけど、こうしてやり直せるのも、今回合わせてあと3回だよ。だから慎重にENDを選ばないと……不幸なENDになるよ』
「……うん。ねぇ、もう一度やり直したいの。……やってくれる……?」
『OK! それが君の答えなんだね? 任せて! 頑張ってね』
謎の存在はにこっと笑い、天に向けて手をかざす。そこから光が差し込んできた。その光で視界が真っ白になっていく――……。
~ストーリー2~
目が覚めるとそこは、あたしの部屋だった。ピンク色まみれの甘々な部屋。鳴り響く携帯のアラーム。時計を見ると、時刻は7時半。あたしはアラームを止め、ゆっくりと体を起こす。
「お! おはよー」
声が聞こえ、振り向くと陸だった。
「ふぇ!? 何で陸……え? え?」
急な陸の登場に戸惑うあたしに陸は
「いやーすまん、すまん。お前を驚かそうと思って、俺が勝手に入り込んじゃったんだよ」
そう言って、陸は笑った。
「そ、そうだったの……」
あたしは何だか恥ずかしくなった。陸にあたしの寝顔を見られていたのかと思うと、顔が熱くなった。
「なぁ、礼美」
「何?」
「……貼り紙があったんだ。俺の家にもお前の家にも」
「!!」
あたしはまずいと思った。この流れはまさしく、END1の時と同じ流れ……。このままだとまた、END1の方向に行ってしまう……。それを必死に止めようと、あたしは
「ね……ねぇ、陸!」
「!? ど、どうした、礼美」
あたしの呼び掛けに、陸は慌てて反応する。
「……こんなことしてくる人、誰か心当たりある?」
END1にしないために、少しだけ話の方向を変えた。
「……さぁ……どうだろう? 特に心当たりは――……ん?」
「え? 何、何?」
「少しだけ……いや、信じたくはないのだが……心当たりが……」
「うん。あたしも、一人だけ心当たりがあるの」
「それはきっと、同じ人だな」
「うん、多分そうだと思う」
「……よし、まずはそいつを探して聞いてみるか!」
とりあえず、END1にはならなかった……。少しほっとし、そして陸に向かって頷く。
「うん!」
あたし達は犯人とやらを探した。いや、まだ決まった訳ではないが、唯一心当たりのある人物なのだ。
「……っ! なかなか見つからないな……」
陸は息を切らせながら、声をかけてきた。
「う……うん……!」
あたしは必死に陸の背中を追いかけながら、慌てて返事を返す。しかし、それにしても息切れが凄い。
「……礼美? 大丈夫か? 少し休憩しようか?」
さすがに息切れに気付いた陸があたしに言う。
「ううん……! 大丈夫だから……!」
でも、あたしは陸に迷惑をかけたくなかった。あたしの休憩のためだけに、捜索を中断させたくなかったからだ。でも陸は
「いや、さっきからお前の息切れが尋常じゃない。休もう」
そう言って、あたしに気を遣ってくれた。
「……あ……ありがとう……はぁ……はぁ……はぁ……」
あぁ……駄目みたい。視界がぼやけ、激しく揺れている……。
「礼美!?」
ついに耐えきれず、あたしはその場に崩れ落ちた――……。
「………美………礼美………礼美……!」
陸があたしを呼んでいる。目を開ける。
「礼美……! 良かった……」
陸はほっとした表情を浮かべる。
「陸……あたし、どうして……」
「……無理したんだな、お前……。ったく、あれほど無理するなと言ったのに……」
「ごめんなさい……。でも、あたしは陸に迷惑かけないようにと……」
「! ……すまん、つい……」
「ううん、いいの。あたしが悪いんだし……」
「……礼美……。やっぱりそうだった……」
「え……?」
「俺とお前が推測していた人物……やっぱりあいつの仕業らしい……」
「!?」
「……俺……この手でそいつを……」
陸の手を見ると、赤く染まったナイフが握られていた。地面には犯人と思われる者がいた。
「まさか……。陸……本当に……」
陸の手は震えていた。ナイフを落とし、あたしの手を掴み、
「……逃げよう……!」
そう、陸は告げた。けれど、あたしの心に迷いや恐怖はなかった。
「貴方と一緒なら、たとえどんな運命になっても耐えれる。……あたし、今幸せ……」
「……!! ……そうだな。俺もお前と共に……こうして手を繋げて……幸せだ」
あたしと陸は、逃亡生活に幕を開けた。ずっとずっと逃げ続ける日々。周りを恐れる日々。だけどあたし達はずっと一緒だった。あまり喋れない日が多かった。それでもあたしはこの人と共に逃げたいと思った――……。
〈END2 逃亡〉
「生きていて、しかも一緒にいる……。ここまではいいの。でもずっと逃げ続けるのはちょっと……」
そう。傍にはいるが、あまり会話が出来ないのだ。それは一緒にいても、意味無いと思ったのだ。
『このENDでは、彼が罪を犯してしまったものね……。君も放置したから、罪なのだけれど』
「……そうだね。このENDは幸せだけど……でも……あたしは本当の幸せが欲しい……。ねぇ、もう一度やり直させて?」
『分かった。でも今回合わせて、あと2回。今回と次で、幸せENDにしないと……。最悪なことになるよ。……頑張って』
再び視界は真っ白に――……。
~ストーリー3~
もうあと1回しかない。そう思ったあたしは懸命に違うENDにしようとした。そのためにどうすればいいかと部屋で考えていた。
「うーん……。どうすればいいかな……。今の所、幸せなENDが無いからな……。……ん? 幸せなEND? そうだ! あの貼り紙と関わらなければいいんだ!」
そう思ったあたしは、すぐさま携帯を開いて、少し緊張しながらも、陸にデートを誘った。すると返事は〝OK〟だった。
「よし! これできっと貼り紙との関わりは無くした……はず! あとはデートの行き場所……。まぁ、それは二人で考えればいっか」
そしてあたしは、オシャレな服を着て、家を出た。
待ち合わせ場所に着いた。陸はまだ来ていない様子。どうやらハリきり過ぎて、早く到着してしまったようだ。あたしはしばらく待つことにした。
「…………」
考え事をしていると、
「何しているの? 礼美ちゃん!」
振り向くと、同級生だった男子。
「何も。ただ考え事してただけだよ」
「へぇー! 礼美ちゃんって、そういう所あるんだなー!」
「あたしだって、考え事するよ!」
「ごめん、ごめん……クスクス……なぁ、良かったらこの後――」
「……何している?」
男子の後ろに、陸が立っていた。
「あ、陸じゃん。俺、これから礼美ちゃんと何処か行こうかと思ってさー。 陸も来る?」
「…………」
陸の目が冷たい。一瞬、何かが起こった。目の前の男子が崩れる。
「……!?」
陸が目の前の男子を……! 陸は崩れる男性を冷め切った目で見下ろす。男子は目を見開かせたままピクリとも動かない。体からダラダラと紅い液体が流れ出る。そして彼の目に光は宿してなかった。
「……陸……?」
「…………」
陸は顔を上げ、その冷め切った目で、あたしを見る。怖い。顔から流れる冷汗。
「……礼美。なぜそいつを見た?」
「え……」
「お前は……俺が好きじゃなかったのか……?」
怖い。今の陸が怖い。
「……なら、他の奴らと会えないようにすればいいか?」
陸は冷め切った目を細める。
「……なら、殺して?」
「……え?」
目を見開く陸。
「あたしは陸しか見ない。だから、陸がやりたいようにすればいい。陸になら殺されてもいい」
「……なら、他の奴らを――」
「……分かった。愛しい貴方がそう言うなら」
「やっと二人になったね」
「そうだな」
「これで……何処行っても陸と離れることはない」
「世界が真っ赤なのも悪くない」
「あたしは、貴方と一緒ならどんな世界でもいい」
「俺もだ、礼美」
赤黒く染まった世界で、あたし達は笑い合った――――……。
〈END3 欲望の闇〉
幸せそうなENDにはなった。でも、狂った愛であることにあたしは気付いた。
『ラスト1回、残ってるよ。どうするの?』
謎の存在に尋ねられる。
「……あたしが望むEND……それは、真の愛。狂った愛は幸せだけど、どこか悲しい……」
『……そっか。じゃあ、ラストやり直し、させてあげる。……でも、これで君ともお別れか……。ちょっと寂しいな……』
「あたしも。……ねぇ、ずっと思ってたんだけど、貴方は何者だっだの?」
『! ……神……とでも言っておこうかな。いや、正確に言うと、私は〝変える者〟。 世界の運命を変える者』
「……変える者……」
『そう。崩れかけの世界を……運命を変えるのが、私の役目。まぁ、そうは言うけど変えていいのは、個人の運命だけなのよね……』
「どうして?」
『……世界を見る者としてね、私達、〝変える者〟と〝見守る者〟の二種の役職が当たっているの。その
〝見守る者〟は、その名の通り、世界を見守るのが役目。だから下手に世界を変えちゃ駄目なの……』
「……そうなの……」
『そして、個人の運命もあまり、変えちゃ駄目みたいで……最高でも4回が限度にされているわ』
「だからやり直しは4回までだったのね……」
『……お別れだね。これが最後のやり直し。もうこっから先は変えられないよ。……頑張ってね……』
そう言うと、ふと存在が消えた。それと同時に、白くなっていく視界。全てが白くなる前、何かの存在が笑っているように見えた――――……。
~ストーリー4~
もう間違いは出来ない。此処から先は一瞬の油断も許されない。あたしはあのEND3によって、貼り紙の件についてちゃんと向き合わなければいけないことが分かった。なら、あたし達に出来ることはただ一つ……。あぁ、どうして今までこんな簡単な方法を思いつかなかったんだろう。無理に自分達で解決しようとする、あたしの悪い癖が出てしまったからだろう。でも、もうこの癖には従わない。だってこの癖のせいで、ろくなENDにならなかったから……。そう考えていると
「……礼美? どうした?」
陸の声にはっと我に返る。
「何でもないよ。ちょっと考え事してただけ」
そう言い、誤魔化した。
「そうか……。……あのさ、家に貼り紙があったんだ……。消えろとか、最低とか。礼美……俺はどうすればいいんだ……」
陸は涙ながらに呟いた。
「そんなの簡単だよ、陸。相談すればいいんだよ。頼れる存在に」
「え……?」
「例えば、それぞれの両親。例えば、警察。……もちろんあたしでも……。あまり役に立てないかもしれないけど、話を聞くことは出来るからさ……」
「礼美……。……そうだな。ありがとう、礼美」
陸は涙いっぱいになった目をこすり、笑った。
あの後、あたし達は色々な所に相談しに行った。そして、家に貼られた紙は全て、取り除かれ、いつもの日常が戻ってきた。
「終わったね、陸」
「……あぁ、そうだな」
「色々あったけど……やっと平和になったね……」
「本当、色々あったよな」
二人で笑った。これが本当の幸せ。これが真の愛。そう、噛み締めた。そんなあたし達の様子を、何かが少しだけ悲しげに微笑んでいた――――……。
〈END4 共に歩こう〉
~アフターストーリー~
あれから5年。あたし達は一つになった。今では二人の子宝に恵まれている。幸せで充実した生活を送っていた。
「唯ー、力ー! 御飯出来たよー!」
「んー……ちょっと待ってー……」
「今行くよ、母さん」
どうやら、唯が都合悪いらしい。
「唯ー? どうしたの?」
「探し物してて……見つからないのー」
「探し物は後にしなさい。御飯、冷めるわよ?」
「んー……分かったー。今降りるね」
ようやく唯は出て来た。
「何探してたの?」
「うん、ちょっと大切な物で……。あれが無いと、私……」
泣きそうな顔をする唯。
「大丈夫、きっと見つかるよ。さ、御飯食べよ? 陸ー! 御飯だよー!」
「ああ、今行く」
しばらくして陸も食卓に着き、家族全員揃う。
「「いただきまーす!」」
元気よくいい、もぐもぐと美味しそうに子供達は朝御飯を食べる。今日も平和な一日だ。あたしはそう思いながら、御飯を食べる。
「唯。見つかった?」
「んー……まだぁー……」
「どんな物なの? その大切な物って」
「……とにかく大事。きっとお母さんも気に入ると思う!」
「……そうなの」
あたしは唯の探し物を手伝うことにした。唯の大切な物…かぁ。一体、何なのかな……。そう思いながら探すこと20分。
「んー……。ん……? あったぁー!!」
「見つかった?」
「うん! これだよ!」
そう言って、渡してきた物……。それは、あたしと陸が5年前に付けていた物だった。あの件から、姿を消していた物。あたし達は懸命に探したが、結局見つからず、〝また二人でお揃いの物を買おう!〟と言って、諦めていたのだ。正直あたしは、諦められずにいた。だってあれは、陸に初めてあたしにと、プレゼントしてくれた物だったから……。
「へへへ……お母さんにあげる!」
その思いが通じたのか、急に唯があたしに言ってきた。あたしは慌てて否定した。
「え!? いや、これは唯のじゃ……」
「ううん、私の分はあるの。これで離れていても私はお母さんと一緒にいる気がするんだー」
唯はそう言って、にこっと笑った。あたしと陸の思い出の品を受け取ったあたしは、一筋の涙を零した。 やっと……やっと見つけた……。あたしの宝物。陸にもこれを見せたらどう思うだろうか。5年前の思い出。あたしはそれをぎゅっと握り締めた。
「え……? どうしたの? お母さん」
「ううん……何でもないよ。ありがとね……唯」
あたしは涙を流しながら、唯を抱き締めた――……。
―終―
いかがだったでしょうか? 高校の物に少し手を加えただけなので、
読みにくかったかもしれませんが……。
そこは…すみません…。
さてさて色んなENDがありましたが、皆様はどんなENDが印象的だったでしょうか。
ちなみにあたしは、END3が一番のお気に入りです。
狂った愛って…何かよくないですか?w え、変な人? はい、自覚してますよ~w
自分がなるのは嫌だけど、見るのはいいってあるじゃないですか~それですよ、それw
……気を取り直して……
気に入ったENDがあれば、幸いです。
最後になりますが、この小説に関わった全ての方に感謝しつつ、後書きとさせて頂きます。
皆様、ここまで読んで下さり、ありがとうございました!!
また別の作品でも御会い出来たら嬉しいです!!