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BLIZZARD!  作者: 青色魚
第一章・急『初めての遠征』
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第一章22『仲間』

 扉が開くと、そこは猛吹雪だった。あいも変わらず寒そうなその光景に、翔は身震いした。寒さと、武者震いとで。


 またあの猛吹雪の世界に飛び込んでいくのだ。怖さもある。しかしそれはもう自分だけのものではないと学んだ。ここには怖さを共有できる仲間がいる。だからもう、怖くはない。


「……さて、今回も抗うぜ神様とやら」


 そうして翔が、久しぶりに雪の大地に足を踏み出そうとしたその時──


「はーい、ストップ」


 その足が呑気な声によって止められた。見るとそれは黒のウェア。元二だった。


「カケルくん、ここでは集団行動だ。悪いけど、オジサンが先頭な」


 そう言って元二は先を歩いていった。確かに隊長が戦闘を行くのが当然だ。一人で盛り上がっていた自分が少し恥ずかしくなり、手で顔を隠す。元々マスクであまり赤くなった顔も見られないだろうけど。


 そうしていると翔に一人ぶつかってきた者がいた。赤のウェア、ランバートだ。こんな時まで喧嘩を売ってくるとは、本当に見上げた精神だ。何か言い返そうと翔が口を開いたその時、翔は思わずその口を閉じた。


 その男の目が、かつてなく真剣に、前を向いていたから。


「……集中しろ」


 そのランバートの声は翔の緊張を張らせるのに十分であった。同時に確信した。今、目の前の男は、紛れもなく『戦士』の顔付きをしている、と。


「……うっす」


 翔は改めて気を引き締め直し、前を歩いていく列に加わった。死ぬことを怖がっている暇はないが、だからといって油断をしている暇もない。


 そう気を引き締めたその瞬間、マスクの中で元二の声がした。


「……それと、そのマスクの中無線機も付いてるから、さっきの神様とやら云々全部聞こえてたぞ」


「えぇ!?」


「うっせーよ!」


 あまりの事実に大声を出して驚いてしまったので、また怒られてしまった。なんとまあ締まらない様子で、一行は雪原を歩き始めたのだった。



 ********************



 サクリ、サクリ。


 雪を踏み分け遠征隊は進んで行く。視界はそこそこ良好だ。もっとも、あまり吹雪いていない日を遠征の日に選んだのだから当然は当然なのだが。


 どれだけ歩いても変化が訪れない白の世界。たとえ討伐隊の面々と一緒であっても、それは変わらなかった。しかし不思議なことに、「独りじゃない」と、たったそれだけで、不思議と不安や寒さは和らいだのだった。


「……仲間って、いいな……」


 翔は無意識に、そう呟いていた。そんなもの漫画やアニメの中の話だけだと思っていたけれど、存外馬鹿にできないものだと知った。共に泣き、笑い、共通の困難に立ち向かっていく。そんな関係この世に存在しないと、するとしても自分には縁のない話だと、翔はずっと思っていた。


 しかし今、翔には前を歩く仲間達がいる。後ろに付いてくる仲間(フィーリニ)もいる。こんな時代に来て始めて、そんな関係を持つことになるとは翔も思わなかった。


 何にせよ、この関係を大事にしなくてはいけないと思った。……一部の例外(ランバート)を除いて。


 すると、また思考が声によって遮られた。


「……カケル様、また皆に聞こえてます……」


 そう言う真の声はどこか恥ずかしげだ。先程口走った内容を鑑み、翔は赤面する。


「……真、これってどうやったらみんなに聞こえなくなるんだ?」


「……顎の辺りにダイヤルがあると思うので、それを回してください。一つ捻る事に話せる相手が選べます。僕と話したい場合は五回捻ってください」


 真に言われたとおりに五回捻ってからテストする。


「あ、あー。真、聞こえるか?」


「はい。聞こえますよー」


 なるほど。使いこなせれば便利な代物だ。何にしろ、これでプライバシー皆無の状況は脱せたようで、翔は安堵する。


「良かったー。ずっと会話が皆に筒抜けなら、『先輩』の悪口が言えないな、って困ってたんだ」


「……それは、出来れば僕との会話の時でも我慢してください」


 そう返されてしまったので、仕方なく翔はその話題を取りやめ、かねてから気になっていたことを聞いてみる。


「今回の遠征ってどれくらいの食料取って帰ればいいんだ?」


「今回はそれほど備蓄が底付いている訳でもないので、恐らくマンモス級のサイズを二、三体狩れれば終わりですね」


「……マンモス級って」


 翔とフィーリニが協力して、やっと倒せた奴らを二、三体など、気が遠くなる話だ。これで今回は狩る量が少ないのならば、多い時は一体どれだけになるのだろうか。それだけ遠征隊の面々は腕が立つ、ということだろうか。


 実を言うと、翔はまだきちんと、遠征隊の戦闘を見ていないのだ。なんでも凍気(フリーガス)の使用量には限りがあるそうで、あまり使いすぎるともしもの緊急時に困るから、だそうだ。だから結果的にこの遠征が、仲間の実力を見る初めての機会となる。それを楽しみにしつつ、また翔は足を踏み出す。


 どれほど歩いたであろうか。前方を歩く元二がふと足を止めた。


「……どうしたんだろ」


「分かりません。あ、隊長に話したいなら三つ戻してください」


 真に言われたとおりにして、話し相手を元二に設定し話し掛ける。


「隊長、どうしたんすか?」


「……カケルか。なに、やっと獲物が見つかっただけさ」


 元二のその言葉を聞いて、翔は周囲を見渡す。


 ──するとそこに、翔がかつて倒した隻眼のそれと同等のサイズの巨躯を持つマンモスがいた。


「……!」


 咄嗟の事態に翔は言葉を失う。そしてあろう事か、バランスを崩しそこに尻餅をついてしまった。


「……お前はとりあえず危ないから下がっとけ」


 その様子を見て、役に立たないと決めつけたのか、元二は翔にそう言った。そしてダイヤルを回し話し相手を全員に指定してからこう言った。


「凍結部隊は前へ!気付かれる前に勝負を決めるぞ!」


 その言葉に、真を含め数人が前に出る。その手から必殺の凍気(フリーガス)を出して。


 その様子を見て、翔は身動きを取ることが出来なかった。先程まで何ともなかったというのに、今はウザったいくらいに身体が震えている。それが寒さによるものではなく、恐怖によるものであることに、翔は気付けずにいた。


 ──あれ……?俺の身体、何で、動かないんだ……?


 動揺する翔のことなど気にせず、その時遠征隊は、戦闘を開始した。

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