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主人公、リローゼ侯爵家の養子になる!?

とある馬車の中で、とある男女が話し合っていた…のだが、男性の方は何が起きたのか分からない、というような顔をしていた。


魔白銀(ミスリル)を宿した髪に黄金の瞳を持つ青年―――デオルムは、目の前の少女の存在が出した提案があまりに自分の考えから逸脱していた。


それに対し、腰まで延ばした藍色の髪に、琥珀色と赤色というより紅色のオッドアイ(奇跡の眼)を持つリローゼ侯爵家令嬢―――シャルノワは平然としていた。


「だから、私の家の養子になってみない?」


シャルノワは笑顔で、それこそ何でもないように言った。


「い…いやいやいやいや、スミマセンがどうしてそんなことを…」


本来なら失礼に当たるが、無理もない。貧乏暮らしの平民がいきなりお金持ちの家の養子になる?と言われて、普通であれば裏があると考える。たまにそれすら考えない愚か者がいるがそれはさて置き。


が、デオルムはある程度この提案には一番有り得ないけど、有り得るだろうな、程度には考えていた。

根拠は、《天眼》の言っていた「不明な2つの繋がり」である。これが判明するまでは一緒に居たほうが良いだろうという考えだろう。確かに養子になればその点は追々やっていけるし、自分も宿を得られる。まさしくお互いが得をするという構図…に、見えるが、デオルムは絶対に何か裏があるなとは考えていた。


「ああ、何か裏を疑っているなら…まぁ、無きにあらずってところよ」


「………」


その時、デオルムの眼は不思議と細まっていった。もしもこれが何か理不尽な命令とかだったら自分は速攻で逃げる自信がある。《神拳》の恩恵である身体能力の大幅な強化はそれを可能にしてくれるだろう。そしてやって来た答えは―――


「貴方には、速い話が風よけになって欲しいの」


「……?」


「ああ、言い方が悪かったわね。つまり…私は結婚したくないのよ!」


そういってシャルノワは初めて嫌そうな顔をして声を出した。

デオルムは何故?と聞こうとした。が、それすら許されず、その理由がとんでもない早口で語られる。


「確かに貴族の仕来たりで政略結婚とかはあるわよ?分かるわよ?でも私の感情はどうなの?少なくともその婚約者は私の《天眼》を見る限り相性最悪どころか極悪なのよ!どうしてそんな相手と結婚しなくちゃいけない訳!?そんなんだったら今、目の前にいるデオルム君と結婚して貴族生活サヨナラしたいわ!っていうかどうしてお父様はあんな貴族と婚約したのか意味わかんない!しかも下級貴族じゃん!どうしていう事を逆らわないのかなぁ!?少なくとも私にその意思を聞く位は出来るでしょう!?どうしてそれすらしない訳ええええ!!!」


まるで捲くし立てあげるように物凄い早口で文句を言いまくったシャルノワ。…そして最後の奇声、顔を上に向けて、頭は綺麗な頭をガシガシ思いっきり両手で掻いていた。


「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」


「大丈夫ですかシャルノワお嬢様!?」


そう言って扉を開けたのはデオルムを案内したあのでかい騎士の人だった。


「貴様…シャルノワ様に何をした!!」


そして背中の斧デカいを抜こうとする騎士。誤解に加えて過剰反応もいいところ、とデオルムは一瞬思った。が、とりあえずこれは完全に誤解なので、はっきりと言い分を言う。


「い、いやいや、俺は何もしていない――ー」


「問答無用おおおおお!!」


そう言いながらいきなりデオルムを掴もうとする騎士。少なくともこの馬車で暴れるにはかなり狭い為、あえて掴まってそのまま外に出ようと考える。

が…。


ゴツンっ。


と、なにかに阻まれるようにデオルムは守られた。よく見るとその守った何かは光っていた。


「ザゴン…心配してくれたのは感謝するわ。でも、今の奇声は…まぁ、分かるわよね?」


そう言ってシャルノワは大柄騎士―――ザゴンに向かって疲れたような笑みをした。


「ああ…また愚痴ですか」


「ええ。だから彼は本当に何もしてないわ。むしろ私が勝手にしゃべったのだから」


「ふむ…あまり無理なさらないで下さいませ」


「ええ、ありがとう」


ザゴンはそう言って馬車から出て行った。表情を読み取ろうにも兜が邪魔で見えないが、主であるシャルノワには本当に心配しているようであった。


「ふぅ…ごめんなさいね。それくらい、私にとっては堪えるモノだったのよ」


「は、はぁ…」


確かにシャルノワのあの話し方や態度は相当キテいるのだろうなと想像するのは難しくなかった。今も頑張って微笑んでいるが、とても疲れたように見えた。


「で、実はこれがあなたに養子になって欲しいという事に繋がるのよ」


「…はい?」


デオルムはなぜ養子と結婚話が繋がるかが分からなかった。それなりに頭が良い人や察しが良い人は分かったであろうが、生憎デオルムはそう言った事はまだ分からないようであった。


「貴方に養子になって貰えば…私はもしかするとあのいけ好かないアイツと結婚することもなくなる可能性があるの。まぁ、いきなり出会って養子というのにも話が早すぎるだろうから、まずは私の親に会ってみて。大丈夫。変な事さえしなければ大丈夫だから。それこそいきなり目の前で裸になるとかそう言う位ね」


それは変態では…と一瞬突っ込もうとしたデオルムは口を閉ざした。


「そう、そういう感じでいいわ。それに…自然体でいたほうが後々楽よ?」


「い、いえ、貴族様にそのような事は…」


「まぁ、確かに今は養子じゃないからいいけどね…むぅ」


そういうとシャルノワは頬を膨れさせた。無意識か何かなのか、デオルムは可愛いと思った。


「あ、着いたみたいね」


「着いた…?」


その言葉になぜかデオルムは悪い予感がした。


「ええ、私の家(・・・)よ」


「…………………え?」


「だから、私の家よ」


「………」


デオルムは理解が及ばなかった。

なぜから、最初から自分は馬車にいた。そして、その馬車は動いた様子もない。なのになぜか着いたと言った。


「…まさかとは思うけど、今まで馬車が動いていなかったと思ってたの…?」


「………はい。今まで動いていないのかと思っていました…」


まさかの、である。本来馬車が動くときは必ず何かしらの動く反動がある。電車が発信するときにあるあの反動と似たような感じなのだ。それを感じなかった。


「……って、そうか。これ魔導馬車だから知らないのね」


魔導馬車?そう疑問に思ったら《神賢》が答えてくれた。


(A:魔術が多数織り込んである馬車の事です。馬車限定で言うなら、移動時の快適さ、馬の疲労速度の停滞、快適な温度など。この馬車には反動軽減、馬の疲労速度軽減、温度快適が付与されています)


デオルムはどうやら大きな気付いたら想像以上に凄い物に乗せられていたようである。それを知った彼は顔を青ざめており、今のも殺されるのでは?という感覚がやってきた。


「あ、魔導馬車は知っているみたいね…って、顔が真っ青よ!?どうしたの!?」


「い…いやぁ……アハハハハ、スゴイナァと、オモイマシテ」


「取りあえず、喋ってることが片言だから落ち着きましょう?」


「ハイ」


そう言われながらデオルムはシャルノワの言う通りに可能な限り落ち着くことに努力する。

そして暫くすると何とか落ち着くことが出来た。


「ふぅ…」


「ほ…なんとか元の調子に戻ったみたいね」


「はい。有難う御座います、シャルノワ様」


「うふふ…大丈夫よ、旦那様♡」



そしてデオルムはまた頭が真っ白になった。

1つは、その可愛い笑顔で。もう1つは「旦那様」というフレーズに、である。


(確定なのか!?俺は養子になること確定なのかあああああああ!?おいおいおい!俺はただ冒険者登録しようと街に寄っただけなのに、追い出されただけなのに!いや、そりゃこんな人を自分の…つ、妻に出来るとか嬉しいけどさぁ……けどさぁ………!)


(うふふ…分からない2つの繋がりがあったけど、何となく分かってきたわ。これは…絶対にニガセナイ。あ、でも彼は冒険者志願なのよね…どうしたことかしら…。少なくともお父様には紹介しないといけないわね。後は……)



思惑が交差し始める瞬間であった。

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