<シンケンの使い手>:神賢
ヴァルシア。
この世界での能力者の持つ能力の総称で、それはひとによりけり千差万別であった。
が、共通するのはどのような人物であろうと、持てる能力は一つに限るのである。
そしてそれぞれの能力は、時が満ちればおのずと分かるのである。
その時は、死に際間近もあれば、生まれてすぐというのもあり得た。
そしてそれはいわば、それぞれが持つ<固有能力>である。
とある森の中。
ここにまた、新たな能力を発現させた者が現れた。
「っ……これが俺の……」
銀…というよりは白銀の髪と黄金の瞳を持つ青年が、その力を自覚した。
自覚した時に頭痛がしたが、能力が目覚めたことと比べたら些細な事だった。
各々が持ちうる能力は数多ある。それぞれが千差万別と言われており同じような、能力があっても完全に同じな能力は存在しないのだ。
「なんだこれ……?<シンケンの使い手>…?」
青年が得た能力はどの能力とも違った。単純な能力を増す<筋力強化>や<身体能力強化>といったのは平凡なのでよく耳にしていた。しかし青年が得た能力は聞いた事も無い名称だった。
「取りあえず、これどうやって使うんだ?」
少年にとっては素朴な疑問だった。が、それが全ての解へと導いた。
―――神賢、発動。
―――能力:<シンケンの使い手>の使用方法。
―――使用方法を掲示します。
「っ!?うおっ!?なんだ!?い、いきなり頭に………え?これ、俺の能力の使い方…?」
青年にとってこのような出来事は初めて出会った。
脳内にまるで使用方法が出されており、そしてそれぞれが固有能力級の力が、自身の能力に宿っていることを否応でも悟ってしまった。
「……ちょっと待ってくれ……。12も俺の能力にあるのかよ……おかしいだろ…」
それもそのはずである。
本来、能力というのはそれぞれが1つの力を持つもので、複数は存在しない。例えば、土魔法という能力があるのに火魔法を使わなければマグマなどは土魔法で再現出来ない。そのような感覚である。
だが、彼の能力には合計12もの能力が詰まっていた。これは彼の知る限り有り得ない事であった。加えて彼は平民である。特に学がなく、彼自身も畑仕事か傭兵になるという手段しか残されていなかった……はずだった。
そして彼は早速自身の持つ、先ほど出てきた《神賢》を調べてみた。
「嘘だろ……」
調べた結果、その一言が出た。いや、出るしかなかったと言わざるを得ない。なぜなら…
―――《神賢》
―――別名:知らぬ理無し
―――この能力を持つ者に全知を授ける。これはこの世の理に限らず、場合によっては未来の知恵すら知ることが出来る。
全知全能。
そこまでは行かないが、少なくともその「全知」の部分を司る力だからである。