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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

といき

作者: ななせ

田中拓哉。あだ名はTT。

ありふれた名前のしがない高校2年生。

それがどうだ。

今では珍獣扱いされている。


-といき-


たぶん目をつぶっていたのはほんの一瞬だったと思う。

学校帰り、道を歩いていたら突然強い風が吹いて、思わず目をつぶった。人間の本能だ。それはどうしようもない。

するとどうでしょう。次に目を開いたら何故かアルプスの少女でもいそうな風景があたりに広がっていたのだ。

夢か、夢なのか?俺は白昼夢でも見ているのか?と自分で自分が信用出来なくなっていたところにエプロンドレスの金髪碧眼のお姉さんが現れた。これ幸いと話しかけようとしたら大きな声で意味不明なことを叫ばれた。文字にすると「はにょさどてめるんやぃー!!!!!」って感じだ。………文字にしたところでさっぱりわからない。

お姉さんの叫び声を聞いて続々と出てくる人、ひと、ヒト。

どこから湧くんだってレベルで老若男女たくさんの人が何故か包丁、鍬、はたきなどを手に持って現れる。

……どう考えても友好的な感じではない。


「や、あ、あの、俺、怪しいものではないので………」


思わずしどろもどろになりながらも弁明するがもちろん通じず、ジリジリと白塗りのこれまたハイジに出てきそうな家の壁へと追いやられる。

みんな口々に何かを言っているけど何を言っているかわからない。あ、斜め右のおじさんの包丁めっちゃよく切れそう。なんて現実逃避をしていたらリーダーらしきイケメンに壁ドンされた。包丁を持った手で。………ごめんなさい。調子に乗りました。


「はにょはらせはなん!?」


イケメンはすごい剣幕で何か言うけど何を言っているのかわからない。

英語万年赤点のオレに日本語以外の言語がわかるわけがなかった。


「あの、オレ、日本人。あやしくない。はうばうちゅー?」


わかり易いようにゆっくり英語も交え答えてみるが、先方さんはご立腹だ。………だめだ。通じている気がしない。

その時、人垣をかき分けてこれまた赤髪のイケメンが出てきた。


「おマえ、ナンだ……?」


日本語覚えたての外国人みたいな話し方だけど聞きなれた言語が出てきてオレは思わず涙した。


「に、日本語ー!!!!日本語わかるのか!!!助かる!オレ怪しくないってこいつらに行ってくれよ!!気づいたらここにいただけなんだよー!!」

「ユッくリ、話す願ウ。古語ハ、キきトリ、難しい」


古語……?こご????

良くわからないけどゆっくり、伝えて欲しいことを話してみる。


「オレ、お前らの、仲間。怖くない」

「仲間、チガウ。お前、ドコ、から来た?」


え、どこ?どこって………


「日本だけど……」

「に、ホン………?」


赤髪のイケメンが首をかしげる。


「え、日本知らないの……?日本、ジャパーン!!」

「じゃぱ……?」


日本語が(たどたどしいとは言え)話せるくせに、本当に日本を知らなそうなその様子に、なんだか嫌な予感がした。こんな展開、見たことある!物語の中で!!!

壁ドンイケメンを振り払い、赤髪イケメンの元に行き、オレは有名なあのセリフを叫んだ。


「ここは誰!?わたしはどこ!!?」


赤髪イケメンがこいつはなにを言っているんだという表情をしたあとにやっぱりどこかおかしな日本語で返してきた。


「コこは、ユスマリノス。親愛なル、ユーリノス神の国」


ユスマリノス、ユーリノス……

世界にはオレの知らない国はたくさんあると思うけど、そんな国知らない。

それに実は見えないふりをしていたけれど、オレの周りには有名な海賊映画の妖精のような未確認飛行物体がなにやらわきゃわきゃいいながらとんでいるし、赤髪イケメンの頭にもイケメンの頭にも金髪碧眼お姉さんの頭にも、もっというとオレを囲むすべての人の頭にはもれなく犬の耳のようなモノがついている。下半身に目をやると尻尾のようなものも見えなくもない気がする。


「え、あ……まって……」


頭が理解することを放棄し、膝が力をなくし、その場にへにょへにょと力なく崩れ落ちる。

途端に囲まれ、なにやら頭上でいろいろ言われているけれど、何もわからないし、わかりたくもない。

ただひとつだけわかることがある。


田中拓哉。あだ名はTT。

ありふれた名前のしがない高校2年生。

よくわからないけれど……

とりあえず、異世界に来たようです。

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