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悪魔と契約しちゃいました  作者: ガラクタ・エントツ
第1章 「呪われた少女」
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第6話 脅迫

「土曜日にデート? 」

 星野が驚嘆の声をあげた。

「なんだその急展開は。昼休みもそうだけど、いつからそんな関係になったんだ。お前の方から積極的に誘ったのか」


 場所は体育館の壇上の幕の裏。

 演劇部部員である星野の部活の休憩時間を利用して、現状報告することにした。


「そんな訳ないだろ。今日の昼休みも、彼女の方から誘ったんだ。なんでも彼女ではとことんやるタイプらしい。」

「ずいぶん楽しんでいるのね。こっちは心配で夜も眠れないのに・・・・・・」と姫川。

「冗談だろ」

「当然、嘘に決まっているでしょ」

「まぁ、楽しむのは良いけど。あんまり浮かれるなよ。今、学校でお前の生死を賭けた賭けが流行っているんだから」


 自分の命が賭けの対象か。

 正直、気分が良い物でもないし、賭け自身法律違反だが・・・ここでそれを言って怒るのは野暮だろう。

 

「比率は?」

「2対5かな」

「どっちが5なんだよ」

「お前が死ぬ方だ」

「みんな酷いな」とは言ったものの過去3人は漏れなく死んでいるわけで・・・みんなが死ぬ方に賭けたくなる気持ちも判らなくもない。

「そうか。結構健闘していると思うぞ。1対10でもおかしくないくらいだからな」

「だったら、生きる方に1万円賭けておいて。生きる励みになるから」

「じゃあ、俺は・・・お前が死ぬ方に1万円な」

「じゃあ、私は5千円」

「何だよ。それ」

「お前が死んだとき、悲しみが癒えるだろ」

「・・・・・・」

「冗談だよ。俺は、お前が生きる方に1万円賭けているんだから頑張ってくれよ」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 現在の時間は夕方の6時31分。1分遅刻だ。

 一緒に下校するため、6時30分と待ち合わせしていたのに遅れてしまった。

 水上さんが校門のところで僕を待っているが、ロビーからも見える。

 その姿が妙に愛らしい。


 偽りの恋人同士のはずだったのに。

 登校と下校の時だけの付き合いのはずだったのに。

 土曜日、デートですか・・・

 何と言うか、どんどん展開がエスカレーションしている。

 ひょっとしたら、水上さんとあんなことやこんなことをする関係にまで発展するかも。


 そんなことを妄想しながら、僕は下駄箱を開けた。


 隙間から入れたのだろうか。

 中には、一枚の手紙が入っていた。

 まさか、ラブレターか。

 まさかのモテキ到来か。


 手紙には、宛名も差出人の名前も書いていない。

 急いで手紙を開けると1枚の紙が入っていて、その紙には2行の短いが判り易いメッセージが書いてあった。


「水上麗華と直ぐに別れろ。

 さもなくば死ぬことになるぞ」

 

 さっきまで浮かれていた自分がバカみたいだ。

 

 でも、この手紙でいくつかのことがハッキリした。

 悪霊が手紙を出すはずがないので、彼女は人間に恨まれている。

 しかも、直ぐに手紙が来たことから、たぶん、この学校の人間にだ。


 過去にも、彼女の彼氏たちは、このような手紙をもらっていたのだろうか?

 彼女に聞く必要がある。

 でも、今日の下校時は止めて明日にしよう。

 せめて、今日くらいは、楽しく終わりたいから。


 それにしても、がぜん面白くなってきた。呪いなら専門外だけど、人間ならば自分の領分だ。そう探偵が扱う事件なのだ。

 近藤は自分が高揚し、熱くなっているのを感じだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 下校途中、昼休みに打ち解けたせいか、昨日と打って変わって、いろいろと話すことが出来た。


「近藤君は、どんな音楽とか好きなんですか」

「音楽。特にこだわりないな」

「でも、通学の時、いつも音楽聞いていますよね」

 近藤は通学の途中は、いつも音楽を聞いていた。しかし、彼女と一緒に居る時は、音楽は聞いていない。なぜ、そんなことを知っているのだろうか、近藤は不思議に思った。

 近藤の表示を見て、察したのか、言葉を付け足した。

「私、付き合い始める前から、近藤君のこと観察してたんですよ。近藤君は私のことはまったく気に留めてなかったですけど」

「いや、それは・・・」

「そうですよね。朝礼の時とは、先生の話なんか聞かないで、前に居る小野寺さんのことばかり見てましたから」

「いや、それは・・・」

「まぁ、許してあげましょう。話を戻しますけど、通学の時はいつもどんな音楽を聞いているんですか」

「僕が聞いているのは、ラジオだから、特定の音楽を聞いているわけじゃないだ」

「ラジオですか」

「そう。FENのやつ」

「FENって、英語のラジオ局ですよね。聞いているのは洋楽なんですか」

「結果的には、そうだね」

「意外です。私は、てっきりアニソンを聞いていると思っていたんですけど」

 どうやら、彼女の中での近藤のイメージは完全にオタクやマニアということらしい。

「私、80年代の洋楽とか、好きなんですけど。近藤君は、その時代の聞いたことありますか」

「あるよ。マイケルジャクソンとかマドンナの全盛時代でしょ。僕は70年代のカーペンターズとかの方が好みだけど」


 こんなくだらないことを話ながら歩いていると、昨日は、長く感じられた時間も、なんだかあっという間に過ぎて、駅に着いた。


「じゃあ、また明日」と自転車に跨る近藤。

「近藤君」

 水上が呼び止めた。 

「何?」

「頭にゴミ付いているよ」

 水上は、自分の側頭部を指さす。

「そう?」

 近藤は頭を払った。


「取れた?」

「取れてないよ。しょうがないな。こっち向いて。取ってあげるから」

 近藤は水上に言われるがまま、何も考えず、水上の方を向いた。


 その瞬間、水上は、近藤の首に手を回すと、近藤にキスをした。


 とっさのことに、呆然とする近藤。

 そして、我に帰ると、徐々に近藤の顔は赤くなっていった。


「男の方が、顔赤くして、どうするのよ。じゃあ、明日ね。バイバイ」

 水上はそう言うと駅の階段を軽やかに駆け上がって行った。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 近藤はベットの中で、水上さんとのキスを思い出していた。

 近藤は自分の唇に触れながら、彼女の唇の甘い感触を思い出した。


 デートの話といい、今回のキスといい、彼女は予想以上に積極的だった。

 単純に近藤をからかっているのだろうか。

 それとも、もしかしたら、もしかしたら、本気なのだろうか?


 本気だとしたら、自分は、小野寺さんと水上さん、どちらを選ぶべきなのだろうか?


 近藤は、枕を抱きながら、そんなことを考えていた。

 そして、いつの間にか寝てしまい、気が付いたら朝になっていた。


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