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悪魔と契約しちゃいました  作者: ガラクタ・エントツ
第3章 多摩の魔犬
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プロローグ & 1話 魔犬

■プロローグ & 1話 魔犬

■プロローグ

 

 探偵同好会で、探偵の真似事をしていた近藤信也が関わることになった「呪われた少女」の事件。

 当初の予想と異なり、本物の悪魔が関係する事件で、普通の人間である近藤が解決できるわけもなく、自称、魔法使いで悪魔契約者である清水さんの力を借りて、事件を解決した。

 しかし、その結果、清水さんに大きな借りを作ってしまった。

 清水さんは、とんでもない高利貸しで、近藤はたびたび、利子を払うために、無償で駆り出されていた。


 そして、今も、駆り出された事件が解決して、マックで一休みしているところだった。


 そこで、 近藤信也は、事件が解決し時間があるので、清水と会った当初から思っていた疑問を思い切って聞いてみることにした。


 はじめて近藤が清水と会ったとき、清水は「やっぱり縁があるみたいだな」と奇妙なことを言ってた。

 以前、どこかで清水と会ったことがあるのだろうか。

 日頃細かいことは気にしない近藤だが、ずっと気になっていたのだ。


「以前、清水さんにどこかで会ったことがあると思うんですけど。思い出せないんです。清水さんは僕に見覚えありませんか」

「あるぞ」

「やっぱり。じゃあ、何で教えてくれないんですか」

「深い意味はない。単に面倒だからだ」

「めんどくさがらないで教えてくださいよ」

「こんなことになるんだったら、記憶消さなければ良かったな」

「えっ、記憶消したんですか」

「あの時は、こんな関係になるなんて思わなかったからな。初めて君に会う1週間くらい前の話だ」


■第1話 魔犬

 夜中だというのに、突然、奇怪な鐘の音が鳴り響いた。

 まるで、それを合図にしたかのように、そいつは突然俺の前に現れると、俺のことを追いかけてきやがった。


 心臓が耳元にあるかのように自分の鼓動が大きく聞こえる。

 だが、聞こえるのは、それだけではない。

 背後から聞こえてくる自分を追いかけてくる巨大な足音。

 そして、時より聞こえる深くて重い唸り声。


 俺は、月明かりの下、誰も居ない小金井公園を全力疾走しながら、怠惰な生活を後悔した。

 息は切れ、足は思い通りに動かない。

 もう、そろそろ限界だ。


 後ろを振り向くと、暗闇の中で光る奴の姿が目に入った。


 全身を青白い炎で包まれ、背中から翼を生やした巨大な魔犬。

 大きさは、軽自動車ぐらいあるだろう。

 そんな化け物が、直ぐ後ろまで、俺を追いかけてきている。


 こいつが、近頃、街で噂になっている人を襲う魔犬であることは、間違いない。

 俺が知っている限り、被害者は2人。

 死人こそ出ていないが、全員、重症で病院送りだ。


 俺は必至に逃げた。

 だが、もう、足が重く動かない。

 意識がもうろうとし始め、ついに、ふらついて転んでしまった。


 起き上がって、早く逃げなきゃ、殺されてしまう。

 そう強く思うが、足に力は入らず、体はいうことをきいてくれない。


 俺は腰が抜け、這って逃げるのが精いっぱいだった。


 魔犬は、まるで、そんな俺の恐怖を楽しむかのように、ゆっくりと迫ってきた。


 体中が恐怖に支配されているのが分かる。

 怖い、こっちに来るな。

 死にたくない、気持ち悪い。怖い。


 巨大な魔犬は、もう目の前に来てしまった。


「助けてくれ」

 俺は、辛うじて出た震える声で懇願した。


 魔犬は大きく口を開けると、俺の頭にかぶりつき、そのまま食いちぎった。


       ◇       ◇       ◇


 魔犬は、男の頭を一飲みすると、続いて、腹を割き、まだ温かい内臓を食べ始めた。


 突然、身を翻す魔犬。

 ほぼ同時に聞こえる闇を切り裂く巨大な銃声。


 魔犬は後ろ脚から血を流しながらも、銃声のした方向を見る。


 その視線の先は、400メートルほど離れたマンションの屋上。

 そこには、屋上に伏せながら巨大な対物ライフルを構える黒服に身を包んだポニーテイルの女性がいた。


 女は、魔犬を狙い、次々と伏せ撃ちする。それに対して、魔犬は巧みに飛び跳ね、銃弾を避ける。

 銃弾を撃ち尽くし、舌打ちをする女。

 魔犬は翼を広げ、夜の大空に羽ばたくと、翼を広げ、翼から無数の炎の羽根を、女のいるマンションの屋上に向かって放った。

 瞬く間に、炎の羽根は屋根に当たると飛び散り、一瞬してマンションの屋上は劫火に包まれた。

 その光景を見て、魔犬は、そのまま何処へと姿を消した。


       ◇       ◇       ◇


 私の住んでいる街は、池袋や新宿に快速で20分ほどの東京郊外の街。

 特に名産もなく、正直言って特徴はない俗に言うベッドタウン。


 23区に比べれば、緑や畑の多い田舎だけど、私はそこが気に入っている。

 都心には遊びや買い物で良く行くけど、どうしても疲れてしまう。所詮田舎者ということだ。

 もちろん、田舎といっても、埼玉の新座ほど田舎ではない。

 吉祥寺にだって自転車で、20分で行けるし(全速力でだけど)、近頃、渋谷にも直通で行けて、結構便利だと思っている。

 あくまでも東京の郊外なのだ。ここ重要。


 この街に住んで10年。私の人生が、15年だから、ほとんどこの街に住んでいる。

 近所のおばあちゃんに比べると、まだまだ、だけど、街のことは、それなりに詳しいつもりだ。


 そんな私が言うのも、変だけど、このところ街がおかしい。


 別に大きな事件や事故が多発しているわけではない。

 私は霊感が強いわけでもないから、幽霊もUFOも見たことないけど、何かおかしいと感じている。


 人を襲う魔犬の噂は、最たるものだけど、小さい異変があちこちで起きている。


 まず、家出する子が増えている。遊んでいる子ならまだしも、家出なんてしそうもない子の家出が増えているのだ。

 警察や先生、大人たちは、普通の子の家出なんて珍しくないという。

 だけど、私から見れば、彼らは個人や子供を良く見ていないのだ。

 だから、普通という言葉で一括りにして判断する。


 あと、妙に突然、別れる人たちが多い。

 確かに、4月に出会い、数週間後に別れるのは珍しくないんだけど、別れる気配が一切ないラブラブだった恋人たちが、数時間後、突然別れるんだから、不思議としか言いようがない。


 もっとも、私にとって現在、一番気になるのは、幼馴染(男)の恋の行方。

 何でも入学式で一目ぼれしたらしく、現在、片思い歴1年。


 恋に疎いあいつが、右往左往している姿は、正直、見てられない。

 彼は、見た目も悪くないし、優しいんだけど、子供の頃から男として『カッコよさ』『頼もしさ』が、まったく感じられない典型的な、草食系。

 お友達としては良いだけど、彼氏としては頼りなし、物足りない。

 その辺が、母性をくすぐるというマニアもいるんだけど、所詮少数派だ。


 一方、あいつの好きな人は、カワイイ私から見ても、カワイイ素敵な同級生。

 正直、高嶺の花だ。

 玉砕間違いなし。


 そんな、あいつがついに告白を決心した。

 正確には、ラブレターを書いただけで、一週間止まっているけど。

 その辺が、あいつらしいと言えば、らしいんだけど。

 余計なお世話かもしれないけど、何らかの後押しが必要なのではないだろうか。

 そうしないと、このままでは、報われない片思いで3年間過ごしかねないのだから。



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