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悪魔と契約しちゃいました  作者: ガラクタ・エントツ
第2章 「恋のまじない」
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第5話 ピエロの世界

 扉を通ると、そこは色とりどりの光に包まれた夜の遊園地だった。

 夜の遊園地は幻想的で、夜の闇の中を背景にして、観覧車やメリーゴーランドが煌びやかに輝いていた。


 中に入ると、遊園地では、数多くの恋人たちが居て、楽しそうに遊んでいた。


「この人たちは何なんでしょうか?」

「たぶん、あなたと同じように、『恋ののろい』をした人たちでしょうね」

 清水さんは、どこから手に入れたのか、遊園地になぜかある棒状の定番のお菓子チュロスを食べながら答えた。

「あなたたちも、どこかに居るかもしれないわね。あなたも、食べる?」と三本のチュロスを近藤に差し出した。

「シナモンとメイプルとハニーレモンよ」

「では、遠慮なく」と近藤はメイプル味を頂いた。 


「てっきり、牢獄に閉じ込められているかと思ったのですが、違うんですね」

 近藤は楽しそうな恋人たちを見て、そう思った。

「一見そう見えるけど、遊園地自体が巨大な牢獄なのよ。決して出れないし、そもそも出ようとする意思すら持てない。最強の牢獄よ」


「ところで、肝心のピエロはどこに居るんですか?」

「そりゃ、やっぱり、ピエロが居るところと言えば、サーカス小屋じゃないかな」

 

     ◇     ◇     ◇     ◇


 遊園地には、巨大なサーカスのテントがあった。

 中に入ると、動物の曲芸が行われていた。


「ピエロはいませんね。舞台裏でしょうか?」

「そんな焦らなくても、大丈夫よ。ピエロは曲芸と曲芸の間の登場するんだから。しばらくは、ポップコーンでもサーカスを見ていましょう」とキャラメル味のポップコーンが入った特大の紙のカップを、近藤に差し出した。

 ライオンによる火の輪くぐりや、クマによる縄跳びやバイク乗りなどの芸が披露された。


 そして、動物たちによる曲芸が終わると、太っちょのサーカス団団長と大玉を両手で転がしながらピエロが出てきた。


「レディース・アーンド・ジェントルマン」と太っちょのサーカス団団長による定番の口上が行われた。

「今日、来られたお客様は大変運がよろしいですん。なんと、本日は、スペシャルゲストがいらしており」

 ドラムロールが鳴り始め、スポットライトが目まぐるしく動く。

 そして、ドラムロールが鳴り終わるとともに、スポットライトが一点を照らし、スペシャルゲストを暗闇の観客席の中から照らし出した。

 そのスペシャルゲストとは、近藤と清水だ。


「どうぞ、前にいらしてください」と団長は、近藤たちに舞台に上がるように促す。


 それに応じて、嬉々として舞台に上がろうとする清水。清水の後を追いかける近藤。


「これは、また、お美しいお嬢様と・・・・・・その下僕ですね」

 会場に笑いが広がった。


「大変不釣り合いですが。おふたりは、つき合って、どのくらいなんですか」

「そうですね。知りあって、まだ二週間くらいです」

「どのような機会で、お知り合いになられたんですか」

「共通の趣味ですわ」

「共通の趣味ですか。どのようなご趣味ですか。」

「それは・・・悪魔刈りですわ」

 そう言うと、清水は胸元から、銃を抜き出し、ピエロの心臓を撃ちぬいた。

 ピエロは、オーバーに手足を広げ後ろ向きに倒れこんだ。

 続いて、逃げる団長を背後から撃った。


 目の前の惨劇に、悲鳴を上げ、出口へと逃げまどう観衆。

 なんというか、完全に近藤たちの方が悪役じゃないだろうか。


「酷いじゃないですか。いきなり撃つなんて」

 ピエロは、手を使わず、物理法則を無視した形で起きあがった。

「それでは曲芸を一つ」

 何を思ったのが、大玉に乗り、ジャグリングを始めた。


「近藤。私は契約者を探す。お前はピエロを引きつけて、時間を稼いでくれ」

「えっ」

 近藤が了承をする前に、清水は既に楽屋裏へ向かっていた。


 観客席に居た観客は既に逃げ終わり、観客席には誰も居なくなっていた。

「もうお帰りですか。悲しいな」

 ピエロは、大げさに両手を広げながら溜息ためいきまじりに言った。


「近頃のお客様は・・・目が肥えておられて、この程度のことは喜んでくれませんね。では、これはいかがでしょうか」

 ピエロが、近藤の方にジャグリングの玉を投げつけると、空中で爆発し、あたりに煙が立ち込める。


 煙の中からの攻撃を警戒する近藤。

 だが、攻撃の気配はない。

「逃げる気なのか」

「まさか。観客から逃げるピエロがどこに居ますか」

 上の方から、声がする。

 声がした方向見ると、大玉と共に空中ブランコの足場のところにピエロが居た。

 その脇には、白と赤の軽業師のコスチュームを着た小野寺さんが居る。

 目は虚ろで、何か操られているような感じだった。


 小野寺さんが、近藤に語りかける。

「なぜ、あなたは戦うんだですか」

 姿や声こそは、小野寺さんのものだが、話している内容は別人のものだった。

 それは、まるで腹話術のようだった。


「外で幸せな恋人たちを見ただろ。君の幸せでだけではない。彼の幸せを壊す権利が、君にあるのか。全てを忘れ、君が受けれれば、彼女も、みんな幸せのまま、生きていけるですよ」

「彼女の幸せ?」

「そう。彼女の幸せのため。君の彼女への愛は偽りなのか?」

「違うそんなことはない」

「その通りだ。一生大切にする。その気持ちに偽りはない。だから、私を呼べたのだ」

「彼女の気持ちは関係ないのか」

「彼女を一番幸せにできるのは、君だ。彼女もそれに気がついていなかっただけだ。私は、彼女のために、彼女に気がつく機会を与えているにすぎない。そのチャンスすら、君は自分の正義のために奪うのか?」

「・・・・・」

「なぜ、彼女が君のことを好きになったのか判るか。君の心が彼女の心に届いたからだ。魔法はただの手助けにすぎないんですよ」


 小野寺さん、いや、契約者の甘言に、惑わされそうな近藤がいた。

 近藤は戦う意志を明らかにし、強く持つために、悪魔を召喚した。


「マルコシアス!」

 近藤は、悪魔の名前を叫び、召喚させる。

 近藤の背後に、人型の異形が現われた。

 マルコシアスは両手に、前回手に入れた剣をそのまま持っていた。


「これは、これは、見事な曲芸ですね。でも私も負けてはいられません」

 そう言うと、ピエロは大玉を落とした。


     ◇     ◇     ◇     ◇

 

 清水は、テントから出ると、遊園地の中心部へと向かった。

 遊園地のほぼ中心に行くと、木の枝を使い地面に魔法陣を書いた。

 そして、その魔法陣に入ると、膝まづき、右手を地面に置く。

 

 背後で爆音がし、見るとサーカスのテントから火の手と煙が上がっていた。


「時間はあまりなそうだな。探査範囲は、テントを中心して、半径三百メートル。人数は千人ぐらいか」


 清水の右腕からから地中へと茨の蔓の伸びて行くと、魔法陣は赤い光を放ち輝き始めた。


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