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悪魔と契約しちゃいました  作者: ガラクタ・エントツ
第1章 「呪われた少女」
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第2話 彼女

 彼女に初めて彼氏が出来たのは、中2の夏。夏休みの少し前だった。

 同じ小学校出身のクラスメートだった。

 でも、最初の彼氏は、付き合い始めて2週間後、交通事故で死亡してしまった。

 彼女とのデートに向かう途中の事故だったらしい。

 2年後、高校生1年生になった彼女は、他の学校の3年生と付き合い始めた。

 しかし、その彼氏は、1週間後に行方不明になった。

 以前に家出をしたことがある彼の失踪は、家出ということで、学校的にも社会的にも処理された。


 この頃から変な噂が出始めた。

 彼女の彼氏になった男は死ぬ。


 最初は、彼女の美貌と人気に嫉妬した一部の女生徒や彼女に振られた男たちの悪口だった。

 しかし、その噂は、悲しみに打ちひしがれた彼女をさらに追い詰めるのに十分なものだった。

 彼女はしばらくの間、不登校になった。

 そんな彼女を励まし、救ったのが、昔ながらの幼馴染の少年だった。

 三か月後、彼女は幼馴染の熱意に押され、晴れて恋中になった。

 しかし、その3番目の彼氏は、2週間後に飛び降り自殺した。


 これで確定的になった。

 彼女の彼氏になった男は死ぬ。


 そんな噂が経っても、彼女の美貌に憧れ、挑戦する猛者が居た。

 4番目の彼氏は、2週間後に病気になった。そして、別れると、不思議と病気は完治した。


 それ以降、多くの男たちに告白された彼女に対して、さすがに告白する男は居なくなった。

 以前は、学年の中心的人物だった彼女は、「呪われた女」「不幸を撒く女」と悪口を言われ、女生徒にも避けられ始めていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「つまり、彼女の噂が事実でないことを証明するために、実験台になれと」

 だいだいそんことじゃないかと、察しはついていた。

 自分が、水上さんのような美人と付き合えるなんて、何かとんでもない裏があるに決まっているんだから。

「そういうこと。確か、先週、オカルトネタは、ほとんどは偶然か勘違いか嘘って言ってたよな」

「確かにそうだけど・・・.」


 魔法や霊能力が起こす事件なんて存在しない。

 推理小説好きの近藤としては、不思議なこと=霊的な物という考えは受け入れられなかった。

 万が一、幽霊が居たとしても、テレビやネットで騒がれるのは、99%紛い物。

 それが、先週の近藤の主張だった。

 もしか、先週の会話は今日の伏線だったんのだろうか?

 星野にはめられたようだ。


「なんで、自分なんだ。星野の方が良いじゃないか・・・.水上さんだって、僕より星野の方が嬉しいだろ」

「・・・.」

 姫川と水上がお互いの顔を見合った。そして、申し訳なさそうに、水上が口を開いた。

「星野君は・・・駄目だよ」

「??」

「星野君は、皆の王子様だから・・・.」


 星野王子様。それが女性との間での星野守の二つ名だ。

 見た目も良く、運動もできて性格の明るい星野は、女生徒に人気があり星野王子様と言われていた。

 そして、王子様は誰のものでもない。皆のもの。だから、誰も手を出してはならない。

 これが、この学校の女子の間での不文律である。

 それにもし、星野が水上と付き合って死んでしまったり、病気になろうものなら、水上さんの命の保証はない。

 対して、近藤には、そんなリスクはまったくない。


 ちなみに、女性との間での近藤の二つ名は金魚のフン。

 星野に、いつも付いている邪魔なものと言う意味らしい。


「こんなこと頼めるのは、お前しかいないだろ。それにこういうの嫌いじゃないだろ」

 正直言って嫌いじゃない。

 推理小説好きが高じて、名探偵にあこがれていた。

 新聞を見て、推理するだけでは飽き足らず、高校生探偵と称して、高校生相手に私立探偵の真似ごともしている。星野守と姫川歩と共に、探偵同好会なるものも作った。

 もっとも、漫画や小説のように活躍できるわけがなく、依頼の内容の大半が浮気調査だったけど。


「お前、彼女ことが可哀想だとは思わないのか?」

「思う」

「なんとかしてあげたい。力になりたいと思わないのか」

「思う・・・」


 何か星野に丸めこまれている気もするが・・・。力になりたいと言うのは嘘ではない。

 彼女が「呪われた女」「不幸を撒く女」と悪口を言われているのを聞き、良い気持ちはしていなかった。機会があれば力になりたいと思っていたけど。

 しかし、簡単にOKの返事は出来なかった。


 自分が死ぬかも、と言うこと以前に、別の問題があるのだ。

「1つ問題があるんですけど。その・・・僕には、好きな人がいるんですが・・・」


 近藤が好きな少女は、クラスメートの小野寺さん。1年の時に同じクラスになって初めて会ったときに一目ぼれした少女だ。

 好きな人がいるのに、他の人と付き合うなんて浮気みたいではないだろうか。

 それに、このことが原因で、小野寺さんに嫌われたり、縁が切れるようなことはないだろうか?


「問題ないよ。今後、付き合う可能性はないわけだし」

「・・・」

 さらっと、とんでもないこと言うな姫川は。

 姫川は、小野寺さんと仲が良いので、真実味があるだけ心に刺さる。


「本当に彼女のことを好きになれって言ってるわけじゃないんだよ」と星野。

「建前上だよ。建前上。それに、嘘でも、女性と付き合えば、本命と付き合う際の練習になるだろ」


 星野が近藤の側により耳元で女性陣に聞かれないように囁き始めた。

「それにな。女性って言うのは、フリーの男よりも、他人の男を欲しがるもんなんだよ。彼女と付き合えば、小野寺さんの関心もお前に向かうこと間違いなしだ」

 そういうものなのだろうか?

 推理力には自信があるのだが、男女の機微、特に女心に疎い近藤には判らなかった。


 最終的には、近藤は、建前上、学年一の美少女の彼女と付き合うことに承諾した。

 彼女の重大な秘密を何も知らないまま。


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