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悪魔と契約しちゃいました  作者: ガラクタ・エントツ
第1章 「呪われた少女」
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【閑話休題】死の鐘 その1

「ねぇねぇ、小野寺。『死の鐘』って噂、知ってる?」


 昼休みの教室で、演劇部の久保恵は、ショートヘアの可愛い友人、小野寺瞳に話しかけた。


「知らない。知りたくもない」と小野寺は目を閉じ、耳をふさぐ。


 小野寺は、都市伝説とか怪談話とか、怖い話が苦手だった。

 特に、演劇部に所属している久保の話は、話し方が上手いせいか、なぜか異常に怖い。


 しかし、小野寺が怖い話が苦手なことを知っていて、話しかける久保だ。

 こんなことで、話が止まるわけがない。


 久保から見ると、ここまで反応が良いと話がいがある。

 小野寺は、弓道をやっている時は凛々しいのに、こういうところで、子供っぽい仕草をする。

 このギャップが、久保にはたまらない。

 正直、癖になる。


 ネットで仕入れた都市伝説を教室で、皆に(特に小野寺に)話すことが、近頃の久保の趣味になっていた。

 一方、小野寺では小野寺で、怖い怖いと言う割にはしっかりと聞いていた。

 結局、好きなのだ。


 怪談話など怖い話を苦手な人には、2種類のタイプが居る。

 怖い怖いと言って、結局、聞くタイプと聞かないタイプ。

 小野寺は、当然前者だ。

 そして、こういう人材は、場を盛り上げるために欠かせない存在でもある。


 周囲の友人も、久保の話はもちろん小野寺のリアクションを楽しんでいる節がある。

 抗議すると、「甘やかすだけが友情じゃないのよ」とのことらしい。何とも厳しい友情だ。



「これは、友達の友達に、実際に起きた話なんだけど...自分にしか聞こえない鐘の音が聞こえたら、もうすぐ死んじゃうんだって...」


 久保は、静かにゆっくりと、まるで見て来たように都市伝説を語り始めた。


 ある日、突然、少女だけに聞こえ始めた教会の鐘の音。


 友人や両親に話しても信じてもらえない。

 病院に行っても、特に異常はないと言う。


 ちょうど、その頃から、夜な夜な変な夢を見るようになった。

 内容は、目覚めると全て忘れてしまい。恐ろしい夢としか思い出せない。

 そして、目が覚めると体のどこかに、痣や傷が出来ていて、それらは日に日に酷くなって行った。


 少女は両親に心配をかけないように、傷を隠したけど。

 結局、ちょっとしたことから両親にバレて、少女は精神科へ連れて行かれることとなった。

 医師は、夢の内容を知ることにより、少女の心がより判ると考え、少女に催眠術をかけ、夢の内容を語らせた。


 少女の夢の内容は、鐘の音を聞こえた後、生きたまま死者の世界に連れて行かれて、怪物に襲われるという荒唐無稽なものだった。

 少女の傷や痣は、怪物に襲われ出来たものだと言う。


 結局、少女は精神病院に入れられることとなった。

 病院に入っても、彼女は悪夢を見続けた。

 病院は悪夢を見ないようにと、強い薬を飲ませて、夢を見ないようにしたわ。

 それ以降、彼女は悪夢を見なくなった。

 でも、一週間後、少女は病院の庭で死んでいるのが発見されたの。


 不思議なことに、庭にある防犯カメラも壊れてしまって、映像は残っていなかったわ。


 でも、彼女は死ぬ間際に友人に携帯電話をかけていたの。

 友人が聞いた彼女の最後の言葉は。


「次はお前だ...」

 背後に居た同じ演劇部の星野が、わざと、声を低くして、小野寺の耳元で囁く。

 下を向き、何も言わない小野寺。


「どう。面白かった。」と尋ねる久保。

「面白いわけないでしょ。怖かったよ。それに星野君もひどいよ。久保と組んで、私を虐めるんだから」

「ごめんごめん。つい、小野寺さんのリアクションが楽しくて」

 そんな怖い話ではなかったのだが、最後の演出が利いたのが、小野寺の目には薄らと涙が浮かんでいた。


「ねぇ......どうしたら、避けられるの」

 小野寺が、小声で質問する。


 たいてい、こういう都市伝説には回避方法があるものだ。

 口裂け女ならポマード。ドラキュラなら十字架に、ニンニクだ。


「魔法を使うのよ。ポケットの中にタロットカードがあって、カードに封印されている『悪魔の名前』を叫ぶと、魔法が使えるようになるんだって。それで怪物を倒すの」

「なんか、急にゲームみたい」


 小野寺は、急に怖くなくなった。


「でも、噂なんてそんなものでしょ。途中から、とんでもない回避法が追加されるのは。でも、話には続きがあるんだ」


 小野寺が聞き耳を立てている。

 久保は、それを見て、わざと小野寺を焦らす。


「......生き残っても、結局、最後はカードの悪魔に殺されちゃうんだって」


 小野寺の眼には、また薄らと涙が浮かんだ。

「ところで、星野。近藤は起こさなくて良いの?」と久保。

 星野の座席の後ろでは、近藤が昼食も食べずに寝ていた。


「もしかしたら、死の鐘を聞いて、悪夢を見ているのかもしれないよ」と久保。

「そんな訳ないじゃない。信也君、幸せそうにノートの上にヨダレ流しながら寝ているんだから」

「確かにそうだな。こんなゆるんだ顔している寝ている奴が悪夢を見ているわけないよな。それにしても、いつもは昼飯だけには起きるんだけど、今日は酷いな。起こしてやるか」

「星野君。優しいのね。ほっとけば、良いのに」と小野寺。

「そうもいかないよ。起きる近藤。朝だぞ」

 起きない。

 星野が耳を引っ張ると、近藤は目を覚ました。


「おはよう。星野」

「おはようじゃないだろ。もう昼休み終わっちゃうぞ。早く弁当食べろよ」

 近藤は眠気眼とで周囲を見渡した。

「学校か。ところで今日は、何曜日なんだ」

「月曜日だよ」

「判った。ありがとう」

 そう言うと、近藤はまた眠りだし、結局、放課後まで寝ていた。


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