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悪魔と契約しちゃいました  作者: ガラクタ・エントツ
第1章 「呪われた少女」
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第12話 あいの世界

「水上は渡さないよ」とは、どういう意味なのだろうか。


 水上に電話をかけるが、「通信圏外か電源が切れています」とメッセージが流れるだけだ。

 水上が来なかったこと、メールが水上の携帯から来たことを考えると、水上は高井に捕まっている可能性が高い。


 女性であり、車の運転もできない高井が、日中に人を移動されるの困難だ。

 となると、どこか高井の馴染みのあるところに監禁している可能性が高い。


 でも、いったいどこへ。

 近藤は、見当もつかなかった。


 昨日の夜に会った女性、自称、魔法使いに相談することにした。

 返信のメールをすると、直ぐに会えるとのことだ。


 吉祥寺のマック○で待っていると、十分後、彼女はやって来た。

 昨日とは違って、彼女は、どこかの高校の制服を着て来た。

 だが、相変わらず大きなスポーツだけは持っていた。

「着替える時間がなくてな。それより早く説明しろ」

 近藤は、今日起きたことを説明した。


「おそらく、あいの世界に逃げたんだな」

「あいの世界」

「物質世界と精神世界の間。真実と偽りの間の世界だ」


 近藤には何を言っているか理解できなかった。

 しかし、とりあえず彼女を信じて話を進めるしかなかった。


「どうすれば、その世界に行けるんですか?」

「行くこと自体は難しくない」

 そう言うと、清水は赤いカプセル剤と青いカプセル剤を近藤に見せた。


「青いカプセル剤を飲めば、簡単にあいの世界へ行ける。問題は場所だ。高井さんのことを思い浮かべて、薬を飲めば高井さんの作った世界へ行けるのだが・・・おまえ、高井さんのこと良く知ってるか」

「正直良く知りません」

「じゃあ、高井まどかさんの家に行きましょう。彼女の部屋を見れば、少しは彼女のことが良く判るから」

「それより先に・・・」

「なんだ」

「名前、教えてもらえませんか?」

 

 自称、棘の魔女さんは、しぶしぶ名前を教えてくれた。

 本当に本名か判らなかったが、清水葵あおいと名乗った。

 

 高井まどかの家の場所は、清水さんがネットからあっという間に探し出した。

 彼女は、ストラスという知恵と知識がある悪魔と契約していて、ネットでの驚異的な能力は、悪魔の能力で自分の能力を強化した結果だそうだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 高井まどかの家は、吉祥寺近くの武蔵○大学側の閑静な住宅街にある二階建ての一軒家で、淡いベージュ色を基調にした南欧風の可愛らしい小奇麗な家だった。

 母親の趣味だろうか。庭は良く手入れされていて、玄関には色あざやな可愛らしい花の鉢植えが数多く飾られていた。


 着いて早々に、清水は玄関のブザーを押した。

 返事がない。どうやら、留守のようだ。


 魔法使いの清水は、門を開けて、勝手に家の敷地の中に入って行く。


「良いんですか」

「良いわけないだろ。不法侵入だ」

「鍵はどうするですか」

「開ければ良いだろ」

 そう言うと、清水はポケットから怪しい道具を取り出し、鍵穴に差し込んだ。


 5秒程度の時間で、扉は開いてしまい、清水は、どうどうと家の中に入って行った。


 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 高井まどかの部屋は、ごく普通の女子高生の部屋だった。

 部屋は、ほどほどに散らかっており、床や枕元には、ファッション誌や漫画や小説が積まれていた。


 本棚には、ファッション誌や漫画や小説以外にも、悪魔や魔術、天使に関する書籍が何冊かあった。


 引き出しの中には、何冊ものプリクラ手帳が合った。

 写真を見ると、半分近くが水上とのものだ。

 彼女の水上との関係、執着というべきだろうか、それが良く判る。


「日記とかはつけてないようだな」

「ブログじゃ駄目なんですか?」

「そんなことはない。ブログを見れば、その人の行動や趣味、人柄、人間関係はある程度判るからな。だが、ブログには家庭内の問題とか、その人の心の闇や本当に隠したいことは乗せないだろ。普通」

「心の闇が大切なんですか」

「重要だな。よりその人のことが判るだろ。そして、もっとも隠したい自分の本音といったところだ。お前だって、自分の持っている心の闇を他人に知られたくないだろ」

「確かに、そうですが」

 

 彼女の心の闇。

 それは、おそらく水上が関連したものだろう。


「アイドルや好きな男の子に関するものが一切ないですね。婦女子でも、それなりにいろいろあるものですが」

 高井の部屋には異性に関するものが一つもなかった。

「婦女子のことは良く判らんが。確かに、この年の女の子にしては珍しいくらい、何もないな。まぁ、私も人のことは言えないがな」


 同性愛者。レズビアン。

 それが彼女にとって一番隠したいこと、心の闇なのだろうか?

 そもそも、彼女が同性愛者という明確な証拠はない。

 彼女は、「そうかも」と言っただけだ。

 なにかが違うような気がする。


 机の上あった写真は、ふたつ。

 中学校の頃に取ったと思わる家族の写真と水上と二人で撮った写真。

 顔の幼さと、背景の緑の青さから考えると両方とも2年生の春くらいだろうか。


 なぜ、両方とも2年生の春なのだろうか?

 高井と水上の関係であれば、高校生になってからも何枚でも二人で撮った写真はあるだろうに。

 それに、なぜ、家族写真もこの時代ののものなのだろうか。

 彼女にとっては、この時代こそが一番の時代ということだろうか。

 それとも、この時代以降、写真を撮れない理由でもあるのだろうか。


 水上に最初に彼氏が出来て死んだのが、中二の夏。

 高井にとってもそれより前の時間が、一番幸せな時代ということなのだろうか。


 高井と水上の関係、そこに全ての答えるがあるような気がした。

「もちろん、できるよ。水上から教えてもらったから。この弁当だって、自分で作ったんだ」

 近藤には、ふとあることが思い立った。


 急いで、玄関に行き、靴箱の女性物の靴を調べ始めた。


 後から清水が付いて来た。

「どうしたんだ」

「母親の靴がおかしい。ある靴は使われていない物ばかりだ。清水さん。高井の家族について調べてくれませんか」



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