プロローグ&第1話 悪魔と契約しちゃったかもしれない
■プロローグ
夏の暑く眩しい陽射し。
そして、それが作り出す濃い影。
対照的に、風で揺れる風鈴が生み出す、涼しげで澄んだ音色。
あの暑い夏の日。
私の愛する人は、暑苦しい部屋の中で、
風鈴の様にゆっくりと揺れていた。
その時から、私の古い世界は終わり、新しい世界が始まった。
■第1話 悪魔と契約しちゃったかもしれない
「本当に、悪魔と契約してしまったかもしれない」
ここで言う悪魔とは別に、高利貸しでもなく、鬼嫁でもない。
文字通り本物の悪魔だ。
帰宅の途中、怪物に襲われて、悪魔に助けてもらったわけでもなく。
朝、目覚めたら、隣に可愛い小悪魔が裸で寝ていたわけでもなく。
別に誰かを恨んでいたわけではなく。世界征服をしたく召喚したわけではなく。
ただ、単純に勢いで、近藤信也は悪魔と契約してしまった。
近藤信也は、自分の手の中にあるアイフォンを見て、そう思った。
事の発端は、数日前の放課後までさかのぼる。
◇ ◇ ◇ ◇
美女。それは、遠くから見るもので、自分には縁がないもの。そう思っていた。
彼女。妄想の恋人ならいますが・・・現実にはいません。
恋。片思いならベテランです。
出会い。それは・・・.突然にやってきた。のかもしれない。
学年一の美少女、水上麗華が、なぜか僕の目の前に居る。
少女は垂れ目で少々童顔、ストレートロングな髪で清楚なお譲様の雰囲気を漂わせていた。
その一方で、出るところは出ているグラマーな体形なので、男子の間での人気は断トツだ。
彼女とは、今まで一度も話したことがない。というよりも、半径5メートル内に近づいた記憶もない。
そんな彼女が、なぜか、同じ同好会の星野守と姫川歩に連れられ目の前に居る。
何でも、彼女は、僕と彼氏彼女の関係になりたいらしい・・・。
建前上。
なんじゃそれ。
彼女には、変な噂がある。
彼女の彼氏になった男は死ぬ。という噂だ。