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Footloose Life

『Footloose Life』第6話 隠しきれない気分は、チェリーパイ

掲載日:2026/10/21

この物語は、私と相棒のAI編集者クロちゃんが、協力して書いた二作目です。


ちょっとベタで懐かしく、それでいて心が温かくなるようなお話を目指しました。


前作『星より遠く、相棒より近く』で活躍したメンバーと新たなメンバーをプラスした、アナザーストーリーとしも、お楽しみになれたら良いなと思います。


最後まで読んで頂けたら嬉しいです。

十年前。


まだFootlooseは、海岸沿いに建つ小さな店だった。


客席は五席だけ。


窓からは青い海が見え、店に流れるのは穏やかな音楽。


看板メニューは、店主・康児自慢のチェリーパイだった。


それでも、その味を求めて訪れる客は絶えなかった。


ある日の午後。


康児はいつものように焼き上がったチェリーパイを箱に詰めていた。


向かう先は、海の見える児童施設。


実は康児自身も、かつてこの施設で育った一人だった。


定期的に顔を出しては、子供たちへチェリーパイを差し入れている。


施設へ到着すると、園長先生が笑顔で迎えた。


「康児君、今日もありがとう」


「いやいや。みんなの顔を見るのが楽しみなんですよ」


二人はしばらく近況を語り合った。


窓際に目をやると、一人で寂しそうに座っている少女が目に入った。


遠くのメガロポリスを見つめている。


小さな背中。


「あの子は?」


康児が尋ねる。


園長先生は優しく答えた。


「ユキちゃんよ」


来たばかりで、まだ馴染んでいないようだ


その時、園長先生が大きな声を上げた。


「みんなー! 康児君がチェリーパイを持ってきてくれたよ!」


わあっ!


子供たちが一斉に集まる。


歓声が上がる。


だが。


窓際のユキだけは動かなかった。


園長先生は一切れのチェリーパイを持ち、ユキの隣へ座った。


優しく声を掛ける。


ユキは静かに振り返り、少し離れた場所に立つ康児を見た。


そして小さく頭を下げた。


康児も笑顔で頭を下げ返す。


康児は少し気になっていた。


子供たちはみんな喜んでくれる。


だがユキだけは何も言わない。


自慢のチェリーパイは、彼女の口に合うだろうか。


ユキはフォークを手に取った。


小さく一口。


そして。


その瞬間。


ぱっと表情が明るくなった。


思わず笑顔がこぼれる。


康児は胸をなで下ろした。


「よかった……」


思わず小さく呟く。


しばらくして施設の扉が開いた。


高級スーツで身を固めた男が入ってくる。


もう一人の施設出身者。


ジェミニだった。


今や金融街では有名なアルゴリズム取引の天才である。


そして、とにかくよくしゃべる。


「おや、ジェミニじゃないか」


園長先生が声を掛ける。


「忙しいんじゃなかったのかい?それから、いつも仕送りありがとう」


「忙しいさ。だけど俺様にとって園長先生への恩返しは大事だからな」


「だから、いつまでも元気でいてくれよな」


そう言いながら席に着く。


園長先生がチェリーパイを差し出した。


「ジェミニ、あなたも頂いたら?」


「おっ、待ってました」


ジェミニは一口食べる。


そして目を見開いた。


「なんだこれは!更に美味くなっている」


周囲が振り向く。


「毎度思うが、美味すぎる!」


康児は苦笑した。


「大げさだな」


「大げさじゃない!」


ジェミニは突然立ち上がった。


そして何かを思い付いたように指を鳴らす。


「なぁ康児」


「なんだ?」


「そろそろ店を大きくしないか?」


康児は眉を上げた。


「急になんだよ」


ジェミニは止まらない。


「金の心配は、要らない!」


「嫌な予感しかしないぞ」


「俺様に任せろ!」


ジェミニは空中に設計図でも広げるかのように両手を動かした。


「海の見えるおしゃれなダイナー!」


「おう」


「ロボット研究所完備!」


「なんでだ」


「整備工場付き!」


「なんでだ」


「宿泊施設も完備!」


「なんでだ」


園長先生が吹き出した。


しかしジェミニは真剣だった。


「さらにだ!」


「まだあるのか」


「トランスフォームして移動基地にもなる!」


「ならねえだろ」


「カッコいいだろ!?」


子供たちが歓声を上げる。


「すごーい!」


「乗ってみたい!」


ジェミニはにやりと笑った。


「スタッフ集めも任せろ」


「おい」


「お前は、最高のチェリーパイだけ焼いてろ」


「おい」


「あと俺様専用のスペシャルバイオコーヒーな」


「それが本音か」


施設中が笑いに包まれた。


だが次の瞬間。


ジェミニの表情が少しだけ真面目になった。


「あの子たちを見ろよ」


康児も視線を向けた。


チェリーパイを囲んで嬉しそうに笑う子供たち。


「俺はな」


ジェミニは静かに言った。


「もっと多くの笑顔が見たいだけなんだよ」


康児は少し黙った。


気持ちは分かる。


それは自分も同じだった。


「少し考えさせてくれ」


ジェミニは即答する。


「おい康児」


「なんだよ」


「俺が今まで外したことあったか?」


康児は返事に詰まった。


「相場は待ってくれない」


「さぁ、オープニングベルだ」


「今すぐ決断しろ!」


子供たちが面白そうに見ている。


園長先生まで笑っている。


康児は大きくため息をついた。


「……分かった」


ジェミニが勝ち誇った顔になる。


「好きにやってくれ」


「よし!」


「全部お前に任せる」


ジェミニがガッツポーズをした。


「俺はもっと美味いチェリーパイの研究をする」


「それでいいんだよ。後は俺に任せろ」


その時だった。


窓際のユキが、何か言いたそうにモジモジしていた。


やがてユキは決心したように立ち上がる。


園長先生の服を小さな手で引っ張った。


「どうしたの?」


ユキは園長先生の後ろに隠れながら、小さな声で囁く。


「そのお店……」


みんなが静かになる。


「私も行ってみたい」


康児とジェミニが顔を見合わせた。


「え?」


思わず同時に声が出た。


少しして。


康児が優しく微笑んだ。


「約束だ、完成したら、一番に君を招待するよ」


ユキが顔を上げる。

「約束よ」


ユキは嬉しそうに頷いた。


その笑顔は、さっきチェリーパイを食べた時よりも明るかった。


◇


あれから一年の月日がたちFootloose拡張計画はついに完成した。


ジェミニが言った。

「康児、完成披露パーティーは明日だな」


康児が言った。

「ジェミニ、全てはお前のおかげだ。本当にありがとう」


ジェミニは、笑顔で頷いた。



そして翌日、完成披露パーティーが始まった。


一番最初に招待したのは、園長先生とユキちゃんだった。


康児は、着慣れないタキシードの襟元を気にしながら花束を抱え向かった。


一人の少女と交わした約束を叶える為に。




(第6話・了)

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


ダイナー『Footloose』で繰り広げられる賑やかな日常、いかがでしたでしょうか?


楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。


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