第6話 カエルは先生とお祭りに行く。
アンはベル国の民族衣装を身に着けている。
白いブラウスに、刺しゅう入りの襟付きベストのようなものを羽織り、ストライプの織のスカートにエプロン。
適度に運動もして身長も伸びて、もう緑色のドレスを着たとしても、誰もカエルのようだとは言わないだろう。実際、可愛らしい。
幼げの残る丸っこい顔に、クリっとした瞳。三つ編みの金髪にレース飾りをつけている。
「中々素敵なレースだね?」
「そうでしょう?先生。うちの国には上手なレース職人が沢山いるのよ。刺繍も見て!」
そう言ってくるりと一回りした。
ベストの両側と同じ花の刺繡が、背中にも縫い込まれている。
「アザレアなのよ。素敵でしょう?これは私のおばあさまが着ていらした物よ」
「へえ」
「あ…お下がりなんて、田舎者っぽいかしら?でも、この刺繡とレースは私の国の自慢なのよ?」
そう言って嬉しそうに笑った。
アンに手を取られて、あちこちのカーニバルや祭りにも出かけてきた。
夏には南部の森にハイキングにも行った。冬には北部にスキーに出かけ、王都のクリスマスマーケットにも行った。東部の羊毛産業も見てきた。王都のあるところを中心に水路や運河があって、移動には馬車と船を併用する。
どこに出かけても、アンは楽しそうだ。
僕に各地の産業や、お祭りや、美味しいお菓子なんかを楽しそうに説明してくれる。出かけた先では、やれムール貝が美味いだの、ここのチョコレートが美味いだのと、いろいろとご馳走になった。もちろん、アンが僕以上に食べていたけど。
今日もカーニバルのパレードを見た後、出店の沢山出ている広場に繰り出した。
「アンジェリーヌ様、痩せたんじゃないのか?」
「ちゃんと食べているのか?」
と、以前よりすらっとしたアンジェリーヌに、祭りの出店から食べ物がたくさん届いた。見ているだけで微笑ましい。差し入れの多さに胸焼けしそうな勢いだ。
「違うのよ、背が伸びたのよ!心配してくれてありがとう!」
「アンは…この国が好きなんだね?」
そう言うと…どうしたことか、差し入れられた串焼きを食べていたアンは、キョトンとした顔をした。
「まあ、先生!だって自分の国ですもの!好きに決まっていますわ!」
「はははっ。そうか」
「…まあ…大きな国の方から見たら、井戸みたいに小さな世界ですけどね?」
そう言ってから…何か思い出したのか不貞腐れて、串を咥えたまま空を眺めた。つられて見上げると、青く澄んで、気持ちのいい空だ。
「じゃあそろそろ、アンも外の世界を見にいくか?」
びっくり眼のアンが僕を見る。
果物のたくさん載ったワッフルを食べようと大きな口を開けたところだった。
「僕はこの後、フール国に行くから、アンもフール国の貴族用の学院に入ればいいと思ってね。手続きはレイモンに頼んでおいた。そこにも僕らの同級生が学院長でいてね。ふふっ。」
「まあ。」
「いいかい?学院は勉強するところだけど、人脈も作れるところなんだよ?いろいろな人が集まっているから、まあ、たまには変なのもいるけどね。」
「…まあ…」
アンの口元に着いたチョコレートクリームを指で拭って…なめてみたら結構甘い。
僕も早々に結婚とかして子供がいたら、このぐらいに育っているわけか…。そんなことを考えてしまった。
どんどん可愛くなっていくから…レイモンも心配するわけだよな。




