第3話 カエルの先生。
小さくて、ころっとした娘。愛想は良さそうだ。
ディーデリヒがレイモンの娘を見た第一印象は、そんな感じだった。
レイモンによく似た金髪に、淡いブルーの瞳。年相応にふっくらしている。これから背が伸びたら、美人さんになるかも、だ。レイモンの妻もほっそりとした美人だから。
「初めまして。ディー先生。アンジェリーヌと申します」
そう言って、淑女の礼をした。一通りの教育は受けているようだな。
「初めまして、アンジェリーヌ王女殿下。これからしばらくの間、貴女の教師を務めるディーです。よろしくお願いいたします」
ディーはにっこり笑って挨拶を返す。
***
「ブリア国のクリストフ殿下の誕生祝にアンを連れて行ったんだがな…」
食後にレイモンに酒を呼ばれて、グラスを交わしている。
王城はブリアのそれの、十分の一ほどの大きさだが、国土は二十分の一ぐらい。下手をしたら公爵領ぐらいしかないことを考えると、まあまあの大きさか。こじんまりしているが、歴史を感じる、何百年も大事に手入れされてきた感じが好きだ。
学生時代レイモンに誘われて、夏休みに一度遊びに来たことがある。
「まあまあ、レイモンのお友達?」
「レイモン様のご学友?」
そう言って、家族はもちろん使用人まで大歓迎してくれた覚えがある。城下をぶらぶらすれば、レイモンに声をかける庶民からも歓迎を受けた。そう言う地域がらなんだろうな、と思った覚えがある。
「どうも、井の中の蛙、と言われたらしくてな」
そう言って、レイモンが笑っている。
…井の中の、ねえ…。
「娘が…いままではみんな褒めてくれたから、褒めてくれない厳しい教師が欲しいと言い出してな…お前のことを思いだしたわけさ。」
「……」
まあ、褒めて伸びる子もいるにはいるけど…比較する者がいない環境だと、自分が一番なのじゃないかと勘違いしやすくはなるなあ…。ブリアのクリストフは15歳。アンとは3つ違いか。ちょうどいいと言えばちょうどいいか。
「うん。それで?ビシバシ、厳しく教えればいいのか?」
「そうだな。お前ほど大海を教えるのに適した者もいないだろう。よろしく頼むよ。ゆくゆくは国外の学校に出すことも考えている。」
「うふふっ。すっかり、父親の顔、だなあ、レイモン?」
「そう言うお前は?ディー?まだ身も固めずに…あちこちの未亡人と遊び暮らしているのか?」
「まあね」
「家庭や子供も、いいぞ?」
「はいはい。どうも、そんな生活は向いていないみたいなんだよね。」
「…相変わらずだなあ」
そう言って笑いながら、レイモンと何度目かの乾杯をする。




