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第15話 カエル リベンジに出かける。

「アン…ブリアの舞踏会にお前も本当に行くのかい?今回は第三王子のお誕生会と兼ねて春の舞踏会ってことは…ここらでようやく婿入り先を決めるようだけど。」

「はい。お父様。そのために、何年も努力して来たんですもの!」


そう言ってにっこり笑う。

アンは父の執務室に呼ばれて、父あてに来たブリア国の舞踏会の招待状を見せてもらっていた。


「…別に、この国はどうしてもブリアと強力な関係が欲しいわけじゃないぞ?お前の婿は…お前が選んでいいんだからな?」

「うふふっ。お父様、ありがとうございます。そうさせていただきます。二言はございませんね?」

「ん?ああ。ドレスはどうするんだ?」

「ええ。フールで作ったドレスに、今、手を入れて直してもらっています。ブリアでは淑女は足首が見えてはいけないらしいですから。」



*****


「アンジェリーヌ様?ブリアの舞踏会に行くのに…また緑色のドレスでよろしいのですか?」


ドミニクが仕上がってきた若草色のドレスを見て、心配そうな顔をする。

「ええ。この色は、私の一番好きな色なのよ。うふふっ。」

「まあ!ドレスは好きな殿方の瞳の色、と言いますものね!」


フールで作ったドレスのスカートの脇にスリットを入れて、そのスリットからこれでもかというほどレースがのぞいている。裾からも、ちょうど足を隠すようにレースがあしらわれている。イレーヌのドレスをイメージして作りなおした。全体的におとなしすぎるので、スカートの裾にアザレアの刺繍を入れてもらった。

胸元のレースは外して、肩にかかるようにレースで作り直した。ハイウエストだったデザインはそのまま生かした。

ブリアではウエストは細ければ細い方がいいらしいが…私の国は違うから。


「さあ、ドミニク、行くわよ。リベンジよ!」

「はい!アンジェリーヌ様!」


*****


父と母が踊っている間、アンは会場を眺めていた。


先生に今回のブリアの舞踏会に参加すると手紙を出しておいたのだが、返事が来なかった。

毎日玄関をうろうろしていた私に父が、

「手紙の返事って、ディーかい?奴は今、忙しいんだろう。当日、会場にはいると思うよ」

と、事も無げに言っていたから、さっきからきょろきょろとあたりを見ていた。先生は背が高いし、綺麗な茶色の髪も長いし、目立つと思うんだけど…。


私は今日はフールで着たあのドレスに手を入れて、肩も出ていないし、メイクも抑えめだ。髪もいつものゆるい三つ編みにして、緑色の髪飾りが散らしてある。もちろん、ペリドット付きのチョーカーはつけてきた。


一曲終わって、きゃあきゃあと騒いでいる集団が見える。

何の騒ぎかと思って目をやると、こっちを見ている青年と目が合った…気がしたが、アンはそれどころじゃなかった。会場にいる茶色の髪の人は思ったより多い。



「アンジェリーヌ王女殿下?」


声を掛けられて振り返ると、イレーネと婚約者殿だった。

イレーネは髪を後ろにまとめて、大きな花飾りをつけている。この髪型だと確かに、肩先までしか髪がないとは思えない。それに…これでもかというほど細いウエストのドレスを着ていた。まあ、さすがブリアの貴族だ。

イレーネが深々とお辞儀をした。

「イレーネ!元気そうね」

にこにこ笑っているイレーネ。本当のイレーネはこんなに表情豊かだったのねぇ。


「ディーデリヒ様とはお会いになった?まさか、アンの家庭教師が殿下だったとはねぇ…髪色が違うから気が付かなかったわ。国外に出る時は髪色を変えていらっしゃるのね?」

「ん?」

「以前、スペーナ国の王太子の家庭教師もされていたんですってね」


…ディーデリヒ様、とは…ディー先生のことってことかしら?

髪色?って先生は…茶色だけど?

アンはイレーネの話がよく呑み込めずに困惑する。


「ほら、国王陛下の隣にいらっしゃる、ディーデリヒ王弟殿下…」

広げた扇越しにイレーネが教えてくれる。

「え?ええ?」

「あの方はどなたとも踊られないので有名なのよ。独身だしね。」

イレーネの視線の先にいたのは…国王陛下と並んでにこやかに挨拶を受けていらっしゃる…先生???でもでも、あの方は銀髪だわよ?似てるけど、凄く似てるけど…。


イレーネと二人で話をしているところに、ざわめきが近づいてきた。


「ベル国、アンジェリーヌ王女殿下?僕と一曲お願いできますか?」


銀髪をかきあげながらにっこり笑ってそう言ってきたのは…今日の主役のクリストフ殿下だった。

返事もしていないのに、手を差し出してくる。当然…イレーネたちは頭を下げたままだ。もう少し話が聞きたかった。


まあ…断りませんけどね。ご会談中失礼、ぐらいのことを言っても良かろう、そう思いながら、アンジェリーヌはレースのロンググローブをした手を、クリストフ殿下の差し出した手にそっと乗せて、にっこりと笑った。






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