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第12話 カエル 先生に叱られる。

3月の舞踏会には、マリーの婚約者もやって来るらしい。

「髪が真っ赤だから、すぐわかるわよ」


…なるほど。それで、マリーのドレスは真っ赤なわけなんですね?


当日、私とイレーネはマリーの侍女さんに着付けをお願いした。お化粧と、髪も。

「まあ。可愛らしいデザインのドレスですわね?せっかく首元と鎖骨がきれいなので、髪は上げましょうか?」

侍女さんが手慣れた様子で、私を変身させてくれる。

「ドレスがかわいい分、ほんの少し、大人っぽい化粧にしましょうか?ギャップに殿方が参るようにね?」


…もう、ドキドキです。先生でも参りますかね?もうちびっ子扱いしないでしょうかね?

アンは、大人になったね!とびっくりする先生を想像してほくそ笑む。


仕上げに先生に頂いたペリドットのついたチョーカーを付ける。

「はい。いかがでしょう?」


ゆっくりと目を開くと…鏡に映ったのは、アップにした髪に緑の花飾りを散らした、見慣れない顔の私。長いまつげに切れ長風にメイクされた目。唇はつやつやの淡いピンクがかえって大人っぽい。

「まあ…ありがとうございます」

侍女さんに何度も何度もお礼をした。


肩が寒いといけないから…と自分に言い訳して一応持ってきた、レースの大判のショールを持って、スキップしながらお隣の部屋で着付けをしているイレーネのところに様子を見に行く。

「イレーネ?お支度出来た?」

アンがそっと覗くと…黒の大人っぽいあのドレスを着たイレーネが…泣いていた。


泣く?イレーヌが…?


あの、ほとんど感情を出さなかったイレーネが、化粧台に向かったまま泣き崩れていた。イレーネの着付けを頼まれた侍女さんがおろおろしている。

「な…どうしたの?イレーネ?」

「あ…」

そう言って私を見て、ぽろぽろと大きな涙をこぼしている。

あわてて駆け寄ってイレーネの手を取る。

「どうしたの?」

「…私の婚約者が…来ているの」

イレーネの父親が勝手に婚約を破棄したって言う、その人?

「ディーデリヒ様が、父と話をつけてくださって…婚約破棄は無くなったらしいの。」


…ディーデリヒ様…ブリアの偉い人ね?確か、現王の弟さん?


「んまあ!じゃあ…良かったじゃないの!イレーネ!」

「でも、こんなドレスじゃレオンと踊れないわ」


レオンさん、とおっしゃるのね?イレーネが髪まで切るほど好きだった人。


…確かブリアでは結婚する人にしか脚や足首は見せちゃいけないという謎ルールがあると聞いたことがあります。どうせフールに知り合いなどいないからいいか、と開放的なドレスを作った…んですね?やけっぱちでしたね。確かにイレーネのドレスは、スリットが入って…足首どころか脚も見えます。うーん…。


「あら。大丈夫そうよ?私がなんとかできそうだわ!」



*****


控室まで迎えに来てくれたイレーネの婚約者のレオンさんは、こげ茶の短い髪にこげ茶色の上着だった。アンはレースのハンカチを持っていたので、レオンさんのチーフ代わりにハンカチをポケットに差し込む。うむ。これでお揃いっぽい一体感が出た。


ほぼ二年ぶりにあった二人は、まあ、なんというか…お似合いだった。


あの後、イレーネのスカートを侍女さんとたくし上げて、アンの持ってきた大判のレースのショールを、スリットのところが二重になるように腰に巻き付けてピンで留めた。

くるぶしが隠れるように長さも調整した。そっとスカートを降ろすと、そういう切り替えデザインのドレスに見えた。スリット部分と裾に見える上品なレース。うちのレースはいい仕事をするなあ…と、アンは大満足だった。


先生に会ったら、うちのレースの話をしなくちゃね。

王室御用達のお店で、ベル国のレースは最上品!って褒められたのよ!それから…


イレーネとレオンさんがどなたかと廊下で立ち止まって挨拶している。

深々とお辞儀をしながらお礼を言っているのを見ると、よほど高位の方なんだろうか?

その方が真っすぐこちらに向かって歩いてくるので、アンは廊下の端によって、お辞儀をしてやり過ごそうとして…


「…アン?」


その方に名前を呼ばれた。

え?先生だったのね。嬉しくて、顔をあげて微笑んだ。


「な…どうしたの?その肩?露出しすぎじゃないの?」


先生はご自分が着ていた黒に綺麗なブルーの刺繍の入った上着をさっと脱いで、私の肩にかけた。口調が…怒っている。


「僕は、アンがフールで最先端のファッションの勉強ができると思っていたけど、そんな男の目を引くような無防備な恰好をするようになるとは思いませんでした。化粧も濃いし。こんな格好をするなんて…僕は…レイモンに申し訳がありません」


そう言いながら、先生は私にかけた上着ごと肩を抱いて、控室に入る。


「……」

「そんな風に…自分を安売りしてはいけませんよ?」

「……」


…そうなんだ…。先生に綺麗になった私を見せたかったんだけど…。やっぱり似合わなかったんだな。かわいいと思ったのにな。

レースの自慢もしたかったのに。


「アン?聞いていますか?」

「……」

「アン?」









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