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第1話 井の中の蛙。

「見たか?あの小国の王女、ぷっ、まるでカエルだったな?」

「ああ…ベル国の王女のことですね?丸々して可愛らしい娘ではありましたね。」


アンジェリーヌは大国ブリア国の第3王子のお誕生会に父と共に招待されていた。大国ブリア国とこれもやはり相当な大国であるフール国に挟まれるようにして存在する小国、ベル国の王女。

お誕生会の集まった人の多さに疲れて侍女と中庭で一呼吸ついていたところだった。

自国から馬車で1週間もかけてやってきたブリアの王都もその王城もきらびやかで、小さなアンジェリーヌは見上げっぱなしで首が疲れたのもある。


カエル?

丸々?


可愛らしい、とはいつも言われていたが…。


しかも、この国の第3王子の瞳の色に合わせて侍女たちが綺麗な緑色の地にレースのフリフリのついたドレスとリボンを用意してくれていた。それを今日着てきた。なんならおそろいのレース付きのロンググローブも緑色だ。


…まあ、確かに全身緑色ね?

アンは思わずロンググローブをはめた自分の手を広げて見てしまった。


「着飾ってきたんだろうけど、滑稽だな。くくっ。」

「あの国には、今、どんな形のドレスが流行しているかなんて情報が入ってこないのではないでしょうかね?すごいフリルでしたね。」


木陰のベンチで休んでいるときに、その向こうから聞こえる声に耳を澄ませてしまった。どちらかというと…侍女と息をひそめて聞いていると言った方がいいか。

侍女がそっと私の手を握ってくれる。

確かに他のご令嬢方は割とシンプルな、それでいてウエストがこれでもかっ、というほど細いドレスを皆着ていらした。9歳ぐらいから15歳ぐらいまでかしら?まだみんな子供なのに…大変だな…アンジェリーヌはそう思った。が…。


…なるほど。あれがブリアの今の流行のスタイルなわけね。


「まさに、井の中の蛙、だな?」


「…ふふふっ。せっかく遠くからいらしたのに、失礼ですよ、クリストフ殿下。今回は国の内外からたくさんの令嬢が集まりましたからねえ。殿下は選びたい放題ですね?どなたか気に入った令嬢はいらっしゃいましたか?」

「そうだなあ…」



茂みに隠れて、話しながら立ち去っていく二人の後姿を覗き見る。

おあつらえ向きに、アンジェリーヌはほぼ保護色。

ほんの少し前に長い順番待ちをして短いご挨拶を交わした、ブリア国第3王子クリストフ殿下。ブリア王国を象徴する煌めく銀髪に、エメラルドのような輝く瞳。

「わざわざ遠いところをありがとう」

そう言って笑った。

本当に美しい人だわぁ…と、見惚れてしまった。その人が、側近と会場に戻っていくところだった。


…私…国元ではみんなが可愛い可愛いと言ってくれるので、可愛いのかと思っていたわ…。もちろん、他のお嬢さん方が細くて綺麗なことも知ってはいるけれど、

「ほんの少し、ふっくらしているぐらいが年相応で可愛らしいんですよ?」

…って…みんな言うから…。


「ねえ…ドミニク?私って…太ったカエルみたい?」


並んで茂みに身を隠した侍女にそっと聞いてみる。

「ん、まあ!とんでもございませんわ!アンジェリーヌ様は世界一可愛らしいです!今日お集まりのお嬢さま方は瘦せすぎなんです!!!」


あ…これは親バカみたいなものね?


アンジェリーヌは12歳にして、世の中を垣間見た気がした。









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