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9 狂イ藤ヨリ見ル都



都の狂い藤の蔓はあらゆる隅々までひそやかに絡み付いて入り込んでいる。


そして様々なヒトやモノを揺籠して、眺めて愛でている。いつか時の嵐に耐えられずに飛び散って消えてしまうまで。



通りでは人々が行き交っている。

人ではないものも混じりこんでいる。

気づかない人間が大半で、気づいているものは騒がない。


都の外側からではなく、門からやって来た少女がいる。

時折くしゃみをしながら、カラスもどきと話をしている。

姿はカラスだが、都で生まれ育ったものではなく、こちらも門の向こうからやって来たものだ。

本物のカラスたちは、監視するように様子を見ているが手は出さない。


降り始めた雨に赤い傘をさして、寺に(もう)でる女がいる。

何か気になるのか、しきりに手を腹に添える。

帯の具合か、痛みでもあるのか。

賽銭(さいせん)を滑り込ませると、手を合わせて長くそこに佇んでいる。


境内にいた小坊主が彼女に目を止め、おののいて慌てて柱の陰に這い込む。


藤よりも赤い花が目立つ都の一角では、いつもは色とりどりの女達が屋内に見えているが今日は雨戸が閉まっていつもより地味である。

男が閉まった扉の前で地団駄を踏んでいる。

扉の貼り紙には「出張仕事のため留守」と書いてあるようだ。


少しずつ酷くなっていく雨に人々は家路を急ぐが、色硝子の()め込まれた香ばしい匂いのする店に傘を下ろして吸い込まれていく者もいる。




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