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26 犬モ歩ケバ
地蔵坊はビルの入り口で空殻を脱ぎ、黒霧となって外に出た。
捜索には現世の制限がかかる仮の体は邪魔であり、自由のきくこちらの方が良い。
空に上がって元の姿に戻る。
冥土はほぼ光のない土地である。
夜目はきく。
冥土の夜に比べれば、繁華街の方は明かりは随分と多いし、遠くでは行き交う人も多い。
ここらは人気が無いのでビルに向かって来る人影か、馬車を探して少しずつ見る範囲を広げていく。
そして見つけた。
かなりの距離があるのに、こちらを見上げているステッキを持った紳士がいた。
恐らくあれだ。
──そう思っている間にふっと相手の姿が消える。
(……?)
困惑している彼の前に、双頭の犬の顔が迫り、刀閃が光った。




