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好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。  作者: 東野あさひ


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28/41

第28話 #二人きりの図書室

 放課後のチャイムが鳴り終わって、教室が一気に静かになる。

 校庭から聞こえる部活の声と、夕陽のオレンジ。

 あの騒がしい“デート誤解”から一日。

 俺はまだ、昨日のことをうまく処理できていなかった。


 楽しかった、けど――

 SNSのタイムラインに「#真嶋×ひより尊い」って並ぶたび、

 心臓がちょっとだけ変な動きをする。


「蒼汰くん、図書室に行きませんか?」

 帰り支度をしていた俺のところへ、ひよりが顔を出した。

「本?」

「はい。

 “誤解の構造”のレポート課題、先生から出てますよね?」

「あぁ、あれ。悠真が“夏休み明けにやる”って言ってたやつか」

「私は、今のうちに終わらせたいです」

「……真面目だな」

「誤解を研究するなら、沈黙よりも静かな場所がいいと思いました」

「つまり図書室か」

「はい。沈黙の続編です」


 沈黙の続編――

 その言葉に、何か心臓がまた忙しくなる。


 図書室は、想像以上に静かだった。

 机の並び、埃をかぶった辞典、外の風の音。

 他の生徒はほとんどいない。


「席、ここにしましょうか」

「うん」

 並んで座ると、ひよりが鞄からメモ帳を取り出した。

 細かい文字でびっしり、“誤解の事例集”。


「……研究ノート?」

「はい。

 “誤解”が生まれる瞬間を観察して書き留めてます」

「どこの民俗学者だよ」

「好きなんです、こういうの」

「いや、嫌いじゃないけど……ちょっと怖い」


 ひよりがふっと笑う。

 図書室の空気が、それだけで柔らかくなる。


「ねえ、蒼汰くん」

「ん」

「“沈黙”と“静けさ”って、同じようで違うと思いませんか?」

「違う?」

「沈黙は、言いたいけど言えない時間。

 静けさは、言わなくてもいい時間。

 どっちも好きですけど、今は静けさの方が心地いいです」


 俺は、その言葉に少しだけ息を呑んだ。

 静けさの中で、彼女の声だけがすごく鮮明に聞こえる。


「……俺も、その静けさ、悪くないと思う」

「嬉しいです」


 ページをめくる音。

 風で揺れるカーテンの影。

 時間がゆっくり溶けていく。


 気づけば、夕陽が本棚の影を長く伸ばしていた。

「……もう、閉館時間ですね」

 ひよりが立ち上がって窓の外を見た。

「ねえ、蒼汰くん」

「うん」

「“誤解の研究”って、どこまで進めたら完成なんでしょうか」

「さあな。多分、一生モンだろ」

「じゃあ……一緒に続けましょうか」

「研究?」

「はい。これからも」

「……断る理由がねぇな」


 ひよりが笑って、

 静かな図書室のドアが、カタンと閉まる音がした。


 夜。

 StarChatを開くと、新しいタグが上がっていた。


───────────────────────

StarChat #二人きりの図書室

【校内ウォッチ】

「真嶋&ひより、沈黙の続編撮れました」

コメント:

・「#また静かな誤解」

・「#研究という名の恋」

───────────────────────


「……なぁ、監視社会かよ」

「静かなのに、騒がしいですね」ひよりが笑う。

「ま、いいか。もう誤解にも愛着わいてきたし」

「それはきっと、恋の副作用です」

「じゃあ、治らなくていいな」


 そんな会話をした夜のことを、

 きっと俺はずっと忘れないと思う。

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