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好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。  作者: 東野あさひ


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20/41

第20話 #恋のはじまり方

 月曜の放課後。

 教室の窓から射す夕陽が、机の端を黄金色に染めていた。

 廊下のざわめきが遠くで途切れ、

 ふとした静けさの中に、心臓の音だけがやけに響く。


 あの日――つまり“恋がバレた日”から、三日。

 俺とひよりの距離は、妙に近くて、妙に遠い。

 話すときは普通だし、周りの誤解ももうネタ化してる。

 けど、目が合うと、どうしても胸が騒ぐ。


 「誤解のくせに、やけに本物っぽいんだよな……」


「蒼汰くん、これ見てください」

 ひよりがスケッチブックを差し出す。

 開いたページには、屋上の二人――俺とひより。

 風の中で名前を呼び合っている構図。


「……また描いたのか」

「はい。

 “誤解のはじまり方”の次は、“恋のはじまり方”を描こうと思って」

「タイトルつけてんのか」

「ええ。作品として、です」

「……なるほど、芸術家は照れを昇華できていいな」

「照れ、してるんですね?」

「ちげぇよ」

「今の、“ちげぇよ”が照れ隠しのテンプレです」

「解説すんな!」


 笑いながら、ひよりの目が一瞬だけ柔らかくなった。


 放課後、校舎裏。

 空が茜から群青に変わるころ、

 俺はスマホを開いてStarChatを立ち上げた。


 投稿画面を開く。

 指が震える。

 “誤解”を生んできたこのアプリで、

 初めて“自分の意思で”投稿する。


【真嶋蒼汰@2-B】

「誤解でもいい。

本当は、ずっと君が気になってた。」


 ――送信。


 画面が光り、数秒後には通知が鳴り止まなかった。


───────────────────────

StarChat #恋のはじまり方

【校内ウォッチ】

「真嶋、ついに本音投稿!?」

コメント:

・「#誤解でもいいって最強」

・「#好きが確定した瞬間」

───────────────────────


「……バズったな」

 呟いた瞬間、背後から声がした。

「見てました」

「うわっ、七瀬!?」

「“誤解でもいい”って、優しい言葉ですね」

「お前、どこから聞いてた」

「“送信”の音からです」

「リアルタイムかよ」


 ひよりが、ふっと笑った。

「でも、嬉しかったです」

「え?」

「“誤解でもいい”って言ってもらえたの、私にとって“本当”でしたから」


 その言葉に、息が止まった。

 ――ひよりが、少しだけ泣きそうに笑ってた。


 夜。

 StarChatの通知がまた光る。

 トレンド1位は、やっぱりあのタグだった。


───────────────────────

StarChat #恋のはじまり方

【桜井先生@担任】

「恋は、誤解の延長線上にある“理解”である。

 理解する努力をやめたとき、それはただの噂になる。」

コメント:

・「#先生、恋愛哲学家」

・「#理解されたい恋」

───────────────────────


 画面を閉じながら、俺は思う。

 “誤解”が、ようやく“始まり”に変わった気がした。

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