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第49話 輔弼近衛は褒められない ~理を語れども伝わらず~

良いこと言ったつもりだったんですよ・・・でもガン無視されました。肩身が狭い。

礼。深く、長く。殿下の礼も、さっきより少しだけ長い。その一瞬で、言葉よりも多くのものが伝わる。剣は便利だ。余計な形容がいらない。


上段で、陛下が立たれた。空気が再び緊張する。


「アルフォード」

「はっ」

「そなたの剣、儂は嫌いではない」


(……好きってことではないのね)


殿下が歩み寄る。怒りは消え、目は明るい。王族の回復力は高い。うらやましい。


「アルフォード。護衛の剣――理解した。だが、私は剣を捨てぬ」

その言葉に、王妃様の扇がぴたりと閉じられた。陛下は指先で肘掛けを一度だけ叩くように触れ、宰相閣下は目を伏せたまま小さく息を吐く。


     ◇


「恐れながら……」

(……ここからが秤の働きだ……逃げたい)


「よい、直言を許す」

「……はい。護衛は背に高き御方々を背負っております。なれば殿下の剣は、いったい何を背負っておられますか?」


「どういう意味だ」

殿下が不思議そうに俺を見た。


「恐れながら、拙考いたしますに――殿下の背には、この国の民がございます。殿下の剣は敵を討つための剣ではなく、民を生かすための剣であらねばならぬと存じます」


「俺に逃げろと申すか」


「はい、敢えて申し上げます。敵中にあっては、逃げていただきたいと」


「ふざけるな!」


殿下は先ほどより大きな声で怒鳴った。


「敵に背を向けるは王族が恥。末代までの恥辱を残せと申すか!」


「王族は、誉れのために立たれるのではありません」

静かに、しかし確かな声で言葉を置く。


「誉れは剣の影に過ぎません。殿下が背負っておられるのは“誉れ”ではなく、“民”であり、“この国の未来”です」


「…………」


「民は、殿下の剣が抜かれたその先に、何が待つのかを見ております。剣が勝利をもたらすのか、それとも滅びを呼ぶのか。戦場に立たれること自体が、果たして民の益となるか――それを量るのが“秤”の務めです」


沈黙が場を満たす。砂を撫でる風の音すら、息を潜めていた。


     ◇


「剣を捨てろとは申しません。ただ、その剣が振るわれる場所と時を、お間違えなきように――王族の剣は、勝利のためではなく、“国を生かすため”にこそあるべきと存じます」


殿下はしばらく黙っていたが、やがて鼻を小さく鳴らして言った。


「……それが秤の裁定か」


「我が務めなれば」


「お前は気に入らん」

(……やっぱり、怒るよね)


「だが、その言葉、覚えておこう」


殿下はそう告げて背を向け、演習場を出ていった。

背中を見送る上段の空気は、先ほどまでの緊張とは異なる静けさに満ちていた。王妃様の視線はその背に何かを託すようで、宰相閣下の指はまた一度、静かに鳴った。


(……初仕事で馘首になるかもしれない)


仕合場の風が冷たかった……


お読みいただきありがとうございます。


【次話予告】

輔弼近衛とやらに任命されたアルフォードとやらの剣の腕を試そうとしたら、とんでもない奴だった。

腹立たしいのは奴の言葉に一理あること。

ならば正々堂々と勝ってやるまで。


次回の投稿は明日21時頃の予定です。


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